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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第二章 仲間編

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049 狼が来たぞ! 狼が来たぞ! サタンが攻めて来たぞ!

 アベル村長の手製の見すぼらしい塚に付いていた入り口に入ると、中は二畳ぐらいの大きさの部屋となっていた。


 アベル村長は、床下に魔法陣をささっと書くと何か早口で唱えた。魔法が起動したのか床下の石畳が消えて階段に変わった。


「この中じゃ。少々長い階段になっておる。ここは狭いので、そもそもここにはヌーブは入れんじゃろ」


 猫魔獣ミケも身体が大き過ぎて入れない。

「仕方がないにゃ」

 ミケは塚の前で寝転がって待つ事になった。ヌーブや村人達も同じように塚の前で待つことになった。ルルだけがついて入る。


 塚に入って行くルルを見ながらヌーブは悔しそうだ。


 アベル村長は、皆をいざなって階段を降りた。直ぐに『光沢フルライト』の魔法をかけて階段は普通の明るさになった。


 階段は村長が言っていたようにかなりの長さがあるようだ。


 村長は階段の折り返しの所で何度も休んだ。

「この階段はかなりの長さがあるので、ゆっくり進まないとひざをやられるぞ」


「村長。あんたも闘気バトルオーラによる肉体強化は使えるんだろう。構わずどんどん降りて貰ってもいいぞ」

 翔が言った。

「もし、このまま真っ直ぐ降りるだけなら、『次元転移』魔法で飛んでもいい」


「『次元転移』? それはどのような魔法か分からんが、しかし、サタンを刺激したくないのだ。あまり魔力を解放せんで欲しい」


「そういう事か」

 翔は納得して頷く。

「しかしそれでは帰りが大変そうだな」


「帰りはさすがに無理じゃ。諦めてスパッと『転移』する事にしておる。ここにはそんな事情もあってあまり入らん事にしておる」

 アベル村長が説明した。


「ところで村長。サタンはあんたが眠らせたらいいんじゃないのか?」

 改めて翔が尋ねた。


「一つはワシの寿命がいつ尽きるか分からん。そうなれば誰かがここ作業を行う必要がある。だから代々の守り手(ガーディアン)にこの作業を伝授しておる。もう一つにはララに早く一人前になってもらいたいからじゃ。今回の危機がララを目覚めさせるキッカケになればと思っている」


「村長。どうしてあの子にそんなに肩入れするの?」

 聞いたのはルルだ。村長と腕を組み村長を助けながら歩いている。


「フォフォフォ。ワシはお前達全員に肩入れしとるぞ。爺さんとはそんなもんじゃ。ルルには希望通り魔界の悪魔騎士に嫁入りできれば良いのにのう。そうなって元気な赤ん坊が生まれたと便りを貰えればワシは最高に幸せじゃろうな。フォフォフォ」

 アベル村長は目を細めてルルの顔を見ながら言った。

「ルルは現実をしっかり見つめる賢い娘じゃ。ワシはお前を誇りに思うとる。そして、あの子ララは気立ての優しい娘じゃ。村で守り手(ガーディアン)となって大成して欲しいもんじゃ」

 アベル村長はそう呟くように言った。


 ルルはアベル村長の言葉を黙って聞いていた。




 それからかなりの時間、階段を降りて行った。高層ビルの階段をずっと降りたらこんな感じだろうと翔は思った。


「ここじゃ」

 本当にもうこれ以上は階段を降りたく無いと思い始めた時、やっとアベル村長がそう言うと、確かに階下へ繋がる階段が終わり前に暗い横穴が繋がっていた。


「暗いが少し我慢してくれ」

 村長はそう断ってその横穴に入って行った。


 横穴はそれほど進まなくとも広い空間に出た。その空間には、階段にかけられていた『光沢フルライト』の魔法による明かりが漏れだしておりそれだけしか光源が無いため中は真っ暗だ。


「そのまま動かずに待っていてくれ」

 村長はそう言うと一人で暗闇の中に入って行く。


 暫くして村長が消えた闇の先でカチカチと音がした。その音は火打ち石を打つ音のようであった。カチカチという音と共に火花が走る。直ぐにボッと大きな火がともり闇を払った。村長が松明たいまつに火をつけたのだ。村長は松明たいまつを持って皆のところに歩いてきた。


「どうじゃ」

 村長はそう言いながら松明たいまつを掲げてみせた。


 そこで初めて彼らのいる空間がどうなっているか皆にも分かった。


 彼らの前には巨大な魔族の顔があった。見るからに魔族と分かる巨大な角が渦巻いている。肌は黒く鱗がテカテカと光っている。見えるのは顔だけだなのに見上げる巨大さだ。大きな石油やガスの貯蔵タクンを思わせる大きさだった。


「これは、サタンの顔だ。もちろんサタンの身体は我々の足元の地下に繋がっている」

 村長が説明した。


「おお。大きい」

 メロが口を大きく開いて見上げている。


「さすがに原初げんしょ魔王まおうだな。想像を絶する迫力だ」

 珍しくアメリアも緊張した面持ちになっている。その証に彼女の背中の羽が薄く光り始めた。魔王の存在感に身体が無意識に反応しているようであった。


 その時、レイラがサタンの方に走り出し皆が注目してレイラを見た。レイラは皆から少し離れた位置でクルリと振り向いた。


「サタンは創造神『エロヒム』が創造した悪魔です。神々よりも後に創られたと言われています」

 レイラはそう言うと急に魔法を解除して本来の彼女の大きさに巨人化した。

「皆さん。巨人化したこの私を見てください。私達、天上界(アース・ガルズ)の住民の標準サイズはこの大きさです。ところがどうでしょうサタンは私や神々よりも遥かに大きい。これはどう言う事なのでしょうか」


「わお。レイラ。羽が生えてるよ」

 メロが指摘した。


 レイラはメロの指摘にハッと我に帰って背中を見る。

「ああ。これは神々の翼(ゴッデス・シオス)


「レイラさん。凄いですね。その姿は神格化のきざしですよ」

 アリスが説明した。


「彼女はアース神との半神デミゴッドなんですな。曙神あけぼののかみデルングの子。高い神格を受け継いでいるようだ」

 アベル村長が鑑定能力を使ったのだろう。レイラを見てそう評した。


 背の翼を見て一番驚いているのはレイラ自身だった。彼女の翼はアメリアの羽とは違う。アメリアは薄い半透明の絹のような羽だが、レイラの翼は天使の羽の大きい版で白鳥の翼のような真っ白な翼だった。


「サタンの強い魔力の瘴気しょうきに対抗するために無意識に神格化を高めたのでしょう」

 アリスが補足説明をした。


「レイラ。神格が高まって落ち着かないのか?」

 翔が尋ねた。


「翔さん。すみません。仰る通り落ち着かなくて」

 レイラはそう言い訳しながらすまなそうに魔法を発動して元に小さくなった。


「おいおい。お前達まで何だ?」

 翔は、右手に掴まるイリスとその右側に立つ芹那せりなに向かって言った。声がうんざりしたような雰囲気である。


 イリスの両目が赤く光っている。さらに芹那せりなの両目は青く光っている。


 翔は左手に掴まっているアリスを優しく引き離すと、まずイリスの両肩を持って激しく揺さぶる。

「しっかりしろ。イリス!」


 イリスがはっと我に帰って翔を見た。

「すみません。サタンの威圧感があまりにも凄くって。この魔王は、芹那せりなや私などとは比べ物にならない本物の魔王ですわ」

 気の強い魔人イリスもサタンの威圧感に畏怖して声が震えている。


 翔は頷きながらイリスの頭をグリグリと撫でてやる。


 直ぐにクラスメートあおい芹那せりなの前に行きイリスと同じようにして正気に戻す。


「橘君。エロヒムはあんな事言ってたけど、私はこんな化け物になるとこだったのね」

 芹那せりなが恐ろしそうに言った。


「ああ。しかし、俺達といたらいずれこいつと同じぐらいの化け物になるかもしれんがな」

 翔が驚かす。


「やめてよ。私はこんな化け物になんてなりません」

 芹那せりなが頰を膨らませて首を左右に思いきり振った。


「しかし、お前。背中から魔族特有の蝙蝠(コウモリ)のような羽が生えてるぞ」

 翔が指摘した。


「ぎゃあ!」

 芹那せりなが驚いて叫び声を上げながら背を見る。


「あなた達は妖精、女神、狂戦士の魔人、魔族、古代竜ととんでもない人達ばかりだ。因みにメロさんは、大魔女と大賢者の娘さんだし、それに……」


 アベル村長がそこまで言った時、慌てて翔はアベルの言葉を遮る。

「まてまてまて、メロは大魔女と大賢者の娘なのか。大魔女はカロンで大賢者はゾングアルスか?」


「何だ、知らなかったのか?」

 アベル村長が尋ねた。


「ほえ〜」

 メロが気の抜けたような声を上げる。


 今度は、翔はメロの方に行き肩を組んで顔を覗き込んだ。

「大丈夫か?」


「お父さんとお母さんが分かったよ翔」

 メロが驚きのあまり口をポカンと開ける。


「村長。そんな驚きの話はこんなところで暴露するじゃねぇ」

 翔がアベル村長を睨みつけた。



「メロ。どうしたにゃ」

 猫魔獣ミケが転移してきたメロに話しかけた。さすがに獣は勘が鋭い。


「ああ。放っておいてやれ。出生の秘密を知って呆けているだけだ」

 翔が説明した。


「何だか嫌な予感しかしないな。サタンって眠っててこんなに皆に影響与えるとか反則だな」

 翔がため息混じりに言った。


 その時、村のはずれから誰かが叫びながら村に走ってくるのに皆が気付いた。その者の叫び声は村の一大事を知らせていた。


「サタン悪魔子爵デーモンビスカウントが攻めてきたぞ!」


049 了

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