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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第二章 仲間編

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047 どうか我々を助けてくだされ


 ヌーブは開いた口が塞がらなかった。

(この連中は本当に何者なんだろう)

 魔界(ヘル・ヘルム)では変身する奴など掃いて捨てるほどいる。


 日頃は人の姿で生活し子供まで成しているが実際は魔族だったなんて事は良くある話だ。


 しかし、人がドラゴンに化けたり逆だったりなんて事はあり得ない。なぜならドラゴンのエネルギー量を人に入れる事が出来ないのは見ていて明らかだ。


「フォフォフォ。あの子は古代竜エイシェントドラゴンだったのかい?」

 村長が笑いながら言った。


「ほう。村長さんは古代竜エイシェントドラゴンを知ってんのか?」

 翔が尋ねる。


「昔は夢燦河むさんがでは幾らでもいたな。オリュンポス神と竜族が共闘してアース神とヴァン神連合軍の間で戦争してきたが。確かオリュンポス神にも裏切られて竜族は炎の土地(ヨートゥン・ヘルム)に幽閉されたと聞くがな」

 村長は神話時代の重大な実話をさりげなく暴露した。


《翔様。この村長の吹き出し情報を良くご覧ください》

 アリスから珍しく昔風のコンタクトが入って来て翔を驚かせた。


(ああ。分かった)

 爺さんに興味の無かった翔は改めて村長の情報を確認した。


『アベル・カバーロード。年齢一万八千二百七十六歳(・・・・・・・・・・)。レベル330。転生勇者(・・・・)


(おお。凄い年寄り。それにまた転生者。転生者インフレかよ)


《翔様のお言葉は意味が分かりませんが。この方は不死者なのでは無いでしょうか。私などには無い知識をお持ちかも知れません》


(この村は何か変だな)





「おお。翔殿。今回はありがとうございます」

 村長が礼を言った。


 巨大魔物のやっつけた後、村長の屋敷で酒盛り中だ。


「あんた。俺達の次元転移の座標に手を加えただろう」

 翔が鋭い視線をアベル村長に向けながら聞いた。


 村長は少し驚いたような顔をして翔を見る。

「なぜそのように?」


「ああ? 爺さん。そもそも、メロごとき初心者の使う次元転移でこんなピンポイントな場所には転移出来んよ」

 翔が指摘した。

「こいつのいい加減な座標指定につけこんで転移座標に介入したろう」


「ホォホォホォ。なかなか鋭いのう」

 村長は頭をいた。


 翔の問いかけにメロやアメリアなども怪訝な顔だ。


「まぁ。皆さん。落ち着いて聞いてくだされ。ちゃんと説明しますから」

 村長は居住まいを正して話し始めた。

「ワシは中途半端じゃが、予知能力があるのですじゃ」


「おお。そうなんだ」

 メロが素直に驚いている。

「村長。超人」


 メロ達も村長の異常な年齢に気づいたのだろう。


「つまり、芋虫いもむしの出現を予知していたという事か?」

 翔が尋ねた。


「いいや。あれはオマケだ。ワシは、魔王が再来すると予知したのじゃ」

 村長が答えた。


「魔王なら、ここにいます」

 あおい芹那せりなが手を挙げて答えた。


「ほぉ。確かにの。それにも驚いておる。ワシの予知能力は先ほども申した通り中途半端なもんじゃ」

 村長が言った。

「あなた達をここに呼んだのは、この村の戦力になってくれると予知したからじゃ。この村はそもそもが魔王を封印した村でな」


「魔王を封印? それは爺さんの転生勇者という職業と関係があるのか?」

 翔が尋ねた。


「少し長い話になるが良いか?」

 村長が聞いた。


「爺さん。悪いが手短にしてくれ。あんたの話は長そうだ」

 翔が嫌そうに念押しをした。


「ホォホォホォ。分かっとるよ。人の人生なんぞつまらんからな」

 村長はそう言ってから話し始めた。

「それは、今から数えられんほど昔の事だ。ワシはもともと別の世界で貴族の三男坊だった。信じ難いじゃろうがなかなか名家の貴族だったのじゃ」



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 アベルが転生したのは、地表のユーリ王国の魔牛オーブルが多数生息していた平原だった。お決まりだがレベルは1だった。


 転生の時に創造主エロヒムと名乗る老人から『チート能力』と『使命』を授けられた。


 『チート能力』は①不老②鑑定③剣技倍加の三つの能力だった。『使命』は魔王サタンを倒す事だった。


 しかし、魔王サタンはこの世界では最強のレベル700。暗黒魔法の神級メイガスで彼には勝てる見込みは全く無かった。


 アベルはレベル上げに邁進した。鑑定の能力は、自分の進むべき道を鑑定する事ができ困った時に助けとなった(この鑑定の能力が村長の言う中途半端な予知能力の事らしい)。


 転生してからひたすらレベル上げに専念して、ある日ついに魔王サタンを超えるレベルまでになった(村長は、ここでかなり話を省略した)。


「おい。あんたそうするとレベル700超えしてたの?」

 翔が驚きの声を上げた。


「ああ。最高潮の時はそれぐらいあったかのぉ」

 村長が何事もないかのように言った。


 しかし、魔王サタンを倒すには魔王の不死性を取り除く必要があった。


「いろいろ研究したが、どうする事もできず、年月だけが過ぎた。しかし発想の転換をする事にしたんじゃよ。魔王サタンが不死なら殺さずに封印すれば良いのだと」


 結果として、魔界の一番最果てのマムの村で魔王を封印する事にした。魔王の手下とはそれから何千年もの長きにわたり戦い続けたと言う。


 現在、サタンの末裔の悪魔貴族としてマムの村の辺境を支配しているのは、サタンの手下だった悪魔達の末裔なのだと言う。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「それで?」

 翔が尋ねた。


「これで終わりじゃ」

 村長は手を広げて話は終わったと示した。


「だから、俺達をここに呼び寄せた理由はまだ説明してない。魔王復活とか言ってたじゃないか。サタンが復活するのか?」


「そうだったの。フォフォフォ」

 村長が声を上げて笑った。

「少々歳だから忘れっぽくなっての」


「はいはい。歳なのは認めよう」

 翔はそこは認めてやる。


「魔王サタンを封印したのはちょうど一万年前じゃ。サタンは万年カズラという眠り草で眠らせたからの。そろそろ、目覚めるはずじゃ」

 村長が言った。


「まてまて。魔王の目覚めは、予知能力も鑑定能力も関係ないじゃんか。サタンはもう直ぐ復活するだろう」


「そうなるの。サタンの末裔達もこの機を伺っておるじゃろう。ワシらの力もひどく落ちておるから、奴らの攻撃も持ち堪えられんじょろう。そこでワシの完全鑑定能力が今するべき事はあんた達をここに転移させる事という鑑定がでたわけじゃ」


「おいおい。ちょっと待て。するとあんたは、無理やりここに俺達を連れて来た上に金までせしめたって事か?」


「そうなるかの。フォフォフォ」


「ちなみに、何気にあんた、サタンのレベルは700とか暗黒魔法の神級メイガスとかとんでもない能力を言ってたよな。そんな奴にどうやって勝てと言うんだ。幾ら何でも俺達は瞬殺されちまうぞ」

 翔が突っ込みを入れた。


「大丈夫じゃ。サタンはもう一度、万年カズラで眠らせればよいだけじゃ。しかし、サタンの末裔共もサタン奪還のために戦線を強化してくるじゃろう。あんた達は、サタンの末裔を担当して欲しいのじゃ」


「しかし、サタンは誰が眠らせんだよ」

 翔が尋ねた。


「それは『守り手(ガーディアン)』がやる事に決まっておる」


「ヌーブ?」

 翔が眉を顰めてヌーブの様子を見ながら尋ねた。


「そこでじゃ。あんた達にはサタンの末裔達が攻めてくるまでヌーブの訓練もお願いしたいのじゃ」


「はあ? なんて図々しい爺さんだ」

 翔は呆れてため息がでた。


 その時、驚いた事に酒盛りに来ていた村人達が全員、翔達の前に土下座した。


「翔様。皆さん。どうか我々を助けてください」


 土下座しているものの中にはルルやヌーブも混じっている。皆グルだったと言う事らしい。しかし翔は助けてほしいと言われる事に弱かった。


「翔様。鑑定の能力は確かなものの様ですね」

 アリスが淡々と転生英雄の特殊能力を評していた。



047 了

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