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008ー1 最弱のモンスターゴブリンを狩れ 1

2019年9月6日、第八話を三話に分割しました。

また、主人公等の思考の表し方を以下のように変更しました(三つに分けた第八話全て同じです)

以下のように変更しました。

(主人公等の思考)

から

────主人公等の思考


に、変更しました。


【例】


(おや? 何をしてるんだ?)


────おや? 何をしているだ?

 その晩、翔は、女性のアメリアも加わったので、ようやくメロから解放され、のんびり一人部屋でユグドラシルの魔法の勉強ができると思っていた。


 翔は、宿屋に着くと当然のように自分の一人部屋と、メロ達に二人部屋を取ろうとした。


 しかし、メロは猛反対し始めた。


 何故メロが猛反対したかと言うと、メロは翔から常に魔法を学びたいと思っていたからだ。


 メロからすると、翔は、何気ないところで常にメロの魔法の発想を変革してくれるのだ。恐ろしく横柄で口が汚いのに、不思議なほど教え方がうまい。


 メロにとって、翔は生きる伝説の魔術師なのだ。学べる事は無限にありそうだ。


 翔は、どうするか迷った。


 メロは、しきりに仕草でアメリアにもメロの意見に同意しろと合図を送った。


 アメリアは、直ぐにメロの仕草の意味を理解した。アメリアにしてみると、メロの考えに了解するしかなかった。


「私も同室でいいぞ」


 アメリアは、翔にそう言った。何故男の子と同室したがっているのかメロの真意は不明だがメロは先輩なので、言う通りにしたのだ。


 翔は、仕方がないので三人同部屋で承諾するしか無かった。


 翔は、メロが能天気なので、たくさんで寝るのが好きなのだろうと勝手に解釈した。もちろん、メロは、エッチな発想など無縁だと、翔は、承知していた。


 しかしアメリアが簡単にメロに同意したのには驚いた。


 見た目は、メロよりは、ずっと大人っぼい、アメリアだが、思考はまだまだお子ちゃまなのかもしれないと翔は、トンチンカンな事を考えて自分を納得させた。



 さて、同じ部屋に落ち着くとして、これからのアメリアとの生活を考えるとアメリアには大きな問題があった。


 まず第一の問題は、アメリアにかけられた呪戒をどうするかだ。男が触れると呪いがかかると言うのはあまりに危険だ。


 もう一つの問題が、第二級の奴隷紋章をどうするかだ。美少女奴隷の主人になるのは、誰しもが持つ男の子の黒い夢かもしれない。


 しかし、翔は、女性からチヤホヤされるのが当たり前の人生を受けてきたので、そんなありがたい状況に便乗すると言う発想が無かった。


 そうなると、奴隷紋章などあっても邪魔なだけだ。奴隷紋章があるとアメリアは、一人では行動できなくなってしまうだろう。


 そんな事よりも奴隷紋章が、最も厄介な物になる場合を考えてみると、それは、アメリアが使いものにならない奴だった時だ。


 その時は、アメリアは邪魔なだけの存在となってしまうが、奴隷商のように処分する訳にもいかない。大きなお荷物になってしまう。


 たとえそうであったとしても、アメリアはとても可愛いお嬢さんで、背中の蝶々の羽がよく似合っている妖精さんだ。見ていて全然飽きない。鑑賞できるだけで存在価値は高いだろう。


 そう思った途端に、それ以外の事はどうでもいいような気分になるから不思議だった。



 部屋が取れて直ぐに、翔はメロの指示で、女の子達が着替えるのに背を向けさせられ、見ないようにしなければならなかった。


 メロは、目隠しの壁を魔法で作っているので見えないのだが、翔が不思議な能力で壁を透かして見るかも知れないと疑っているのだ。


 女の子達が話しながら背後で着替えていると言うのはそれなりにスリリングな感覚だ。耳がダンボの耳になってしまいそうだ。


 翔も女の子達に背を向けたままパジャマに着替えた。彼は見られても恥ずかしいなどと考えもしない。


「俺は、アメリアの呪戒の事とかいろいろ調べ物がしたいのでお前達は好きにしていろ」


 翔はそう言うと世界樹ネットのアリスと頭の中で話し始めた。



 メロ達は、着替えが済んだので、魔法の壁を消去した。せっかく同室になったのに翔と隔絶していては、意味が無い。


 見ると翔は瞑想中だ。


 翔は、何故か、普段でもそんな風に、瞑想タイムに入る事が多い。メロからすると、それが謎だった。


 翔は、こんな感じの瞑想状態になるとしばらく帰ってこない事があった。


 ましてや今日は、宣言してから瞑想状態に成ったので、長いに違い無い。メロは、そう考えて、翔を放って置いてアメリアとの関係構築に乗り出す。


「アメリア。お風呂行こう」


 アメリアは久しぶりにお風呂に入ることができると思い嬉しそうに頷いた。


 翔は、二人がお風呂に行って静かになったので、やれやれだ、とばかりにアリスを通して、呪術と奴隷問題がについて勉強を始めた。世界樹ネットの情報は本当に役に立つ。


 間も無く、翔は呪術が近代魔法の陰陽道に似ていることが分かった。翔は、様々な術式を展開してみてユグドラシルの呪術についての基本を理解しようと悪戦苦闘した。


 何しろ今の彼は、魔術師としての能力が下の下なのだ。初めて見る魔法の原理を理解するのは、進んだ魔術理論を知っている彼にしても、なかなか骨が折れる事なのだ。


 ちなみに奴隷紋章については簡単に理解できた。全ては近代魔法の魔法陣の知識のおかげだ。



 お風呂では、アメリアは皆の注目だった。


 彼女はメロ以外の者にはエルフに見えているのだがそれでも十分に美しい。奴隷紋章は見えないように隠した。


 メロはどこまでも桁外れの天然ぶりでアメリアの身体をあちこち、触っては、大きなため息を吐いていた。


「アメリア。綺麗だし、細いし、出るとこ出てる。羨ましい」


 メロにはアメリアは至高者オプティマスの桁違いの美しさで見えている。


 何度もため息をついては羨ましがっていた。


 アメリアの方は、メロや他の女性客達の姿を物珍しそうに見ていた。


 種を超えて同性としての敵愾心だとか、羨みなどの視線が感じられた。


 他の女性客達に取っては、メロも十分に嫉妬の対象なのだ。


 アメリアが見るところ、メロはまだ成長しきれていないが十分に綺麗で可愛らしい。


「メロは、子供みたいに可愛いな」


 メロはアメリアの一言に、しょんぼりとなって自分の胸や身体を見る。


「アメリアが羨ましい。翔はエッチだから、アメリアの胸ばかり見ている」


「人族の雄もそうなのか。こんな物の何が良いのか分からんな。邪魔なだけだが」


 アメリアが自分の胸を持ってプルンと持ち上げた。


 メロも。


 ────本当にそうだ。


 と思うが口に出しては言わない。今まで会った男の子は、他の女の子の胸ばかり見ているように感じた。自分の胸は、見ても興味なさそうにしているのが悔しかった。


至高者オプエィマスの男の子もそうなの?」


 メロが両手で可愛い胸を隠すように押さえた。


 アメリアには、そんなメロの仕草が可愛いかった。


「翔は、私の胸になど興味はなさそうだがな。可愛いメロの振る舞いに夢中に見えるぞ」


 アメリアは、翔とメロの仲良しなのが少し羨ましいのだ。


────同じ人間族だから仲が良いのだろうか。


 などと考えていた。



 翔は、部屋でアリスから呪術や奴隷紋章の事を学んでいたが、ガヤガヤとうるさい声と共に、ドアがノックもされずに開かれた。


 女性陣の帰還だ。騒がしい事だ。


 ノックを要求するのも面倒だから無視する。


「アメリア。翔は、絶対にエッチなことはしない。安心して良いよ」


 メロはアメリアに安心してもらいたいからそう説明した。一応、翔に聞こえる様に言っておく。念のためだ。


────何を根拠にそんな事を言う。


 翔は、呆れ返った。


「翔は、朴念仁。そして勘違い男。自分をイケメンと思っている」


 メロは、翔の弱点をさらけ出して、まさかメロが翔のことを好いているなんて勘違いしない様にさらに念を押しておこうとしているのだ。


「翔は、理想が高すぎ。絶対に嫁のなり手がない。仕方がないから私がなるしかないと覚悟している。でも。その前に私は、復讐がある。失敗したら、あなたがお嫁さんにならないとダメ」


 メロの提案だ。翔のような変人には絶対にお嫁さんになってくれるような女の子なんているはずがないと確信しているだ。


 翔の良さは一緒に住んでみないと分からない。


 一方、翔は何を言い出すのだと呆れて聞き耳を立た。メロの話はメチャメチャで脈絡なんて全然ない。


「でも、アメリアの敵は私の敵。必ず一緒にやっつける」


 メロが宣言するように言った。アメリアはメロに美しい笑顔を見せた。


 翔は二人がとても仲良くなっているので満足だが、メロの話は無茶苦茶すぎるので無視した。アメリアが強く否定するのは火を見るよりも明らかだ。


「分かった」


 翔の予想に反して、アメリアは、躊躇すること無く、相槌を打った。


 アメリアにとって、翔は、自分を助けてくれた恩人だ。結婚して恩を返すことに何の不満もない。


────おい。その「分かった」は何を分かったんだ?


 と翔も聞きたくなった。


 翔には女達二人の会話の意味が不明だ。


「お前達。どうして俺に嫁の来てがないと決めてかかってるんだ?」


 翔が割って入る。


「決まっている」とメロ。


 黙って頷くアメリア。



「アメリア。お前の持っている厄介ごとを二つ解決するぞ」


 翔は、湯上りで妖艶さを大きく増したアメリアをゆっくり鑑賞しながら言った。


 メロがすかさず、ジト目で翔を睨みつけた。


 慌てて翔がアメリアから視線を外した。


「私の持っている厄介ごととは?」


 アメリアは怪訝そうに聞いた。


 翔が少し勿体ぶって鼻で笑う。


「呪戒と、奴隷紋章だ」


 翔がそう言って、アメリアの反応を伺う。


「解決できるのか?」


 アメリアが興奮して叫んだ。


 翔は、ふんぞり返って見せた、


「まぁ、任せておけ」



 すぐに翔は、床に大きな魔法陣を書いた。本来は絵の具に様々の魔法効果を高める薬品を混入するものだが面倒なので省略した。


 複雑な魔法陣を簡単に書く翔をメロもアメリアも感心して見ていた。


 メロは、翔のこんなところが見逃せないので、絶対に部屋を分けて寝るなんか考えられないのだ。


────翔は本当に凄い。


 メロは翔の知識の深さに、心から敬意を持っている。


 アメリアは翔の魔法の才能など信じておらず、メロの陶酔ぶりが不思議だったが、なるほどと、この時になって初めて感心した。翔が描く魔法陣は、自分たち至高者オプティマスが知る物とは随分違う複雑なものだ。何よりも翔の描く図形が恐ろしく正確な事に驚く。


 みるみるうちに魔法陣が完成し、部屋中が魔法陣だらけになる。魔法の発動後に消すのが大変そうだ。


「アメリア。魔法円の中の三角形テトラマトンに入ってくれ。メロは、アメリアが三角形テトラマトンに入ったら、そこの手形の図のところに、両手を当てて全力でMPを注ぎ込め。MPは、全部を注ぎ込むなよ。お前のMPなら三分の一程度でいいぞ」


 メロとアメリアは、翔の言われた通りにした。メロが魔法陣の手形に手を当てて、魔法陣に魔力を注ぎ込むとアメリアが白く輝き出した。


 エルフの外見が見る見る変化して至高者オプエィマスに変化していった。


 美しい羽がキラキラしている。奴隷紋章も美しい胸から消えて行った。


「アメリア! 治ったみたい」


 メロが嬉しそうに叫んだ。


 アメリアが不思議そうに自分の姿を見る。


「確かに、私に戻った様だな」


 翔は、アメリアの側に寄ると、アメリアの肩に手を置いて、呪戒の効果を試してみた。


 何も起こらない。


「成功の様だな」


 あまりにも呆気なくアメリアの抱えていた大問題が一挙に解決されて、アメリアは呆然としていた。


「アメリア。明日は冒険者ギルドに行く。お前をパーティー登録するぞ」


 ハッと、アメリアが翔の方を見た。


「奴隷のパーティー登録しない冒険者も多いと聞くぞ。お前達は本当にそれで良いのか?」


「俺の事は、メロと一緒で翔と呼べ。俺はお前にレベル上げを手伝ってやると約束した。戦い方も教えられる事は教えてやるぞ。それにお前は、もう奴隷紋章も無い自由の身だ」


 翔が言った。


「しかし、お前……いや。翔は、私に何を教えてくれると言うのだ?」


 アメリアが不思議な物を見るような視線を翔に向ける。


「お前には、信じられんだろうが、俺が修得していた近代魔法はこの世界ではとても優れた魔法だ。それを教えてやる。きっと役に立つだろう」


 アメリアは、もはや翔の言葉を疑ってはいなかった。


────もしかしたらこの邂逅かいこうは、自分にとって大きな転機になるかも知れない。


 とアメリアは思った。


「まぁ、明日になれば分かることだ」


 翔はそう言って話を打ち切った。

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