040 ブォーン!!! 終末だよ!!!
【悪魔軍を退治した翔達のレベル】
○翔
レベル330
職業 大魔術師、創造師、槍術師、『幻妙流』相伝者、調合師、半神英雄
○メロ
レベル302
職業 神使、大魔術師、魔女、杖術師、半神英雄
○アメリア
レベル293
職業 至高者、魔術師、聖騎士、大妖精使、半神英雄
○イリス
レベル288
職業 魔王女、魔物使、魔術師、魔騎士、半神英雄
○レイラ
レベル301
職業 戦半女神、魔術師、大魔導士、神聖魔法師、半神英雄
○アリス
レベル320
職業 魔法情報師、弓師、調合師、魔術師、半神英雄
○セーラ
レベル282
職業 竜王女、竜騎士、魔術師、召喚師、半神英雄
☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆
皆、半神英雄を得た。恩恵はそれだけではなかった、翔は魔術師が大魔術師になった。同じくメロも大魔術師となる。イリスは魔王女という新たな位を得た。レイラは、戦乙女だったのが戦半女神となった。アメリアは大妖精使いとなり、セーラは、竜王女となった。アリスも魔術師を得た。
最近の急激なレベル上昇で、皆の本来の様々の特性が開花し始めたのだ。
「アリス。今後は皆の職業や称号は皆以外に隠してくれ、特に女神には彼女達から授かった職業以外は伏せてくれよ」
翔がアリスに言った。
「女神様にもですか?」
アリスが不思議そうに聞いた。
「アースガルズの神々全てが信じられるか? どの世界にも意見の違う者は出てくる。オリュンポスの神々や竜王リュガナシー・イリの様になりたいか?」
翔は皆の顔を見ながら尋ねた。
「しかも最近の女神の人使いが激しいのが気に入らん」
レイラは顔を俯いて聞いている。
「承知しました。私は翔様の指図に従います。皆さんそれで宜しいですか?」
アリスが尋ねた。
「翔さん。女神様とは敵対しないですわね」
レイラが真剣な面持ちで尋ねた。
「俺から積極的に敵対するような理由は無いな。どちらかと言えば、味方だと思っているが。しかしレリエルの事もある。天界が全て正義だなんて子供じゃあるまいし、お前も考えちゃいないだろう。俺の基本姿勢はエンジョイだ。陰謀も復讐もバカバカしい。お前達がどうしても復讐したいと言うならお前達の気の済むようには助けてやるが俺が積極的に誰かと競争したり敵対したりそんな面倒な事をするわけが無い。しかし敵は潰す。勝てなければ全力で逃げる。それだけだ。現在は全力で逃げる力を手に入れようとコソコソ隠れているって感じだ。気に入らんのなら……」
レイラはそこまでしか言わせなかった。
「すみません。翔さんを疑うような事を言って。私は翔さんを利用してレベル上げをしているだけ。何の恩返しもしていません」
レイラが申し訳無さそうに俯く。
「お前は、そうやってお姫様みたく可愛いだけで十分に俺をエンジョイさせてくれている。心配するな。絶対お前を大女神にしてやる」
翔は明るく宣言した。
今や翔の大口は誰も冗談とは思わなくなっていた。レイラは顔を少し上気させて涙目だ。
翔はヨシヨシとばかりにレイラの肩を撫で撫でした。
「お前のその癖さえなければお前もいい男なんだがな」
アメリアが笑い飛ばす。
バキーン!
メロの電撃が翔を襲う。神々すら凌駕する大魔術師である翔ですらメロの電撃からは逃れられず悲鳴をあげるのだった。
☆
【ユーリ・ウプサラ連合軍】
英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリは、その光景を一生忘れられないだろうと思った。眩しい爆発の光、体の底から響く爆発の衝撃、天地がひっくり返る様な鳴動、そして全てが終わった後の静けさとは真逆の変わり果てた大地の有様が英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリの全てを圧倒した。
「あの少女。魔人でしたね」
ポツリとイグナシオ・サイダーンが呟いた。
「あれは魔人そのものだった。あの狂気の戦いぶりを見たであろう」
美髯王ハラルドル・ユグリンドが答えた。
「陛下。馬車がやって来ます。いかがいたしましょうか」
近衛兵が彼等の所にやって来て叫んだ。
「あんな奴らを誰が止められるって言うんだ。丁重にご案内しろ。粗相が有ってはならんぞ」
英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリが答えた。
しずしずと馬車(牛車?)がユーリ・ウプサラ連合軍の前に進んで来た。馬車を引く先頭の魔牛が恐ろしい赤い目で皆を舐め回すように睨みつけたため、その恐ろしい迫力に恐怖で体を震わせる兵士も少なく無かった。
英雄王、美髯王、天才軍師達は皆、口をあんぐりと開けてその豪華すぎる馬車に見とれた。
馬車には不思議な魔法が様々には掛かっていることは一目で分かる。その魔法の一つだろう。ステップが自動的にせり出した。手すりまで一緒にせり出す。こんな魔法は見たこともない。
「おい。俺もあんな馬車が欲しいぞ」
英雄王が天才軍師に呟いた。
「あれを真似た馬車が今後出回る事でしょうね」
イグナシオ・サイダーンが答える。
コトリ。扉が開く。
両王を始め皆がどんな怪物が現れるのかと固唾を飲んで見守った。
しかし、出てきたのは山高帽を被った、想像とは全く違う質素な感じの魔術師の小さな女の子だった。山高帽で顔は見えない。女の子はステップの途中で止まり、山高帽を少し上げて固唾を飲んで見守る皆を見回した。
その美しい女神のような端正で繊細な少女の顔を見て皆が無言のため息を付いた。無言であっても皆の驚きはザワザワとした雑音となって広がる。女の子は先ず、英雄王と美髯王の豪華な服装に目をやり、周りの近衛兵達の綺麗な鎧兜や綺麗な刺繍のされたマントに目をやった。彼らは国王直下の正騎士達だ。決められた騎士の鎧兜とマントを着て見た目も美しい。
少女はそれから自分のローブを見て、慌てて、馬車の中に入って扉を閉めてしまった。
しかし少女はほとんど一瞬と言ってもいいほど直ぐに出てきた。どんな方法で着替えたのだろうか、見違える豪華な衣装に変わっていた。しかも彼女のローブは明らかに強い魔法が掛かっているのが分かる。単に豪華な素材で作られた物と魔法が掛かっている物とでは値打ち全く違う。
アダマンタイトやミスリルなどの貴重金属で作られた剣はその重さと同じ以上の金貨を積まねば買えない。ところがその物に魔法がエンチャントされているとそれだけで価値は倍になる。増してやその魔法が一般の人が見ても魔法がエンチャントされている事が分かるほど強い魔法がエンチャントされていたら価値は何倍にもなる。
その少女の着用している衣装は全てに見た事も無いほどに魔法がエンチャントされているようだった。
しかもローブやマントや魔術師用の軽装の胸当てなどの全ては息をのむほど美しい。一目でその芸術性の高さに見るものを虜にする芸術の魔術が掛かっているようだ。
しかし、ユーリ・ウプサラ連合軍の将兵は、まだ驚くのは本当に早かったのだとつくづく思い知らされる事になる。
☆
一通りの挨拶が済むと、ミカル・シュティクロート・ユーリはその面々をもう一度穴の開くほど眺めて行った。
「皆さんが、女神ブリュンヒルデ様が仰られた半神英雄様なのですね。女神様の投映像がいきなり現れた時は肝が潰れました」
英雄王がため息を付きながら言った。
「女神様が教会以外に投影を映されてる事は滅多にない事。ましてやこんな戦場に神々の投映像が映されるとは余程の急用だと思いました。すると女神様から悪魔軍はこれから牛に引かせた馬車に乗っている半神英雄が討伐してくれるので手出しをするなといきなりの話でした。それだけでも驚きなのに、たった七人で十万もの悪魔軍師を退治されるとは驚きました」
「俺達は、半神英雄の新参者。英雄王。適当に扱ってくれて構わないぞ」
翔が英雄王のあまりにも丁寧すぎる対応に辟易して言った。
「皆さんはしかし、今迄お目にかかった半神英雄とは感じが違いますね」
美髯王ハラルドル・ユグリンドが言った。
翔は黙っている。メロが豪華な服装にしろとしきりに言ったので皆、かなり豪華な身なりにしたがチンドン屋みたいになったかと少し不安だ。
「我々の格好の事なら気にせんで欲しい。俺は錬金術が得意なので全てお手製だ。もし、文化的に貴国の禁忌に触れるような物があれば直ぐに改めよう。言ってくれ」
翔がそう言ったがそれがまた波紋を呼ぶ事になった。
「なるほどそれで、先程メロ様が馬車に戻られてた一瞬で衣装が変わられたのですな。あまりの身替の早さに驚いていたのだ」
英雄王が感心して言った。
「もしかしたら、皆さんがお召しになられている服装は錬金術で直ぐに出来るのですか?」
「お安いご用だが、お望みなら陛下の衣装を錬金術で変えましょうか?」
翔のその一言はまさに爆弾だった。
「もし可能なら、お礼は出来る限りさせて頂くが。あっ。それとこの指輪は母の形見なのでそのままでお願いする」
こう言った英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリの声は震えていた。
次の瞬間、何の準備もせず、一瞬で英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリは全く別世界の神々のような豪華な姿になっていた。その余りにも美しく芸術的な衣装を前にしあらあらゆる事象の影が薄れるのではと思うほどの豪華さだった。
全ての視線が英雄王に注がれた。羨望と嫉妬の視線だ。余りにも豪華であまりにも美しいその衣装に対してだ。翔はこれでも自分達が着る衣装は少し地味にしていたのだ。王様なら遠慮はいらないとばかりに最大の衣装を錬成した。
目の前のこの美丈夫の王様ならどんなに着飾ってもピエロにはならないだろうとの考えからだ。
「英雄王。なんと素晴らしい。是非。余にも是非」
美髯王が頭を下げた。王としての尊厳も何もあったものではない。
「美髯王は、形見などの品はないのですか?」
「ああ。あらゆる全てを変えてくれ」
美髯王が興奮して言った。その言葉が終わるか終わらないかの時に美髯王は美しくも豪華な衣装に身を包まれていた。
それからが大変だった。イグナシオ・サイダーンを始め、近衛の将軍達が我も我もと翔にたかりに来ようとしたからだ。
普通なら王が止めに入るところだが、下手なタイミングで止めると止められた者に大きな恨みを買う恐れがある。両王も余りの混乱に顔をしかめていた。
その時だ、第八グレイド魔法『大爆発』が遥かな空に放たれた。恐ろしい閃光と爆発音が大空に鳴り響いた。
いきなりの大魔法で皆の注意がそちらに向いた。
「どうした。いきなり派手な爆発系の魔法とか。メロかと思えばレイラじゃないか」
翔が怪訝な顔でレイラを振り返る。
「翔さん。ユーリ国王陛下。ウプサラ国王陛下。大変なお知らせをしなければなりません」
レイラは真剣過ぎる表情で言った。
「どうしたの?」
メロは翔が出してやったペロペロキャンディーを舐めながら聞いた。緊張感の無さ半端ない。
「メロさん。驚かせてごめんなさい。本当に今回は大変そうなのです」
レイラが眉をしかめながらメロの手を取る。
「そう?」
メロはそれでもキャンディーを舐めるのを止めない。
「どうしたんだレイラ?」
翔が重ねて尋ねた。
英雄王も美髯王も不安そうだ。
「蝕が、本格的な蝕が起ころうしているそうです。運命女神が終末戦争の前兆の可能性が大きいと騒いでいるそうなのです。光の神ヘイムダルが角笛ギャラルンホルンを鳴らしユグドラシル全体にラグナロクを知らせるか考えているそうです。ガルガンチュアの巨人達が嵐海を超えてミッドガルドに侵入するか会議を始めました。アース神はヴァン神とオリュンポス神に戦いに備えるよう提言しました。戦女神ブリュンヒルデ様を筆頭とする戦女神の方々が集まられ、半神英雄に召集をかけられたそうです。私達は蝕に最も近い軍団だうです。直ちに縦穴の『奈落迷宮』に向かうようにとのブリュンヒルデ様からのご命令です」
その時、ユグドラシル世界に、終末を知らせるギャラルンホルンが高らかに鳴り響いた。
ブォブォーン
ブォブォーン
ブォブォーン
ブォブォーン
040 了




