表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第二章 仲間編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

103/412

039 予言の成就

 ウコバクは自軍から逃げるように飛び去って行く飛竜を見ながら首をひねった。

「怖じ気付いたのか?」


 ノスフェラトーは山羊やぎの瞳のような不思議な虹彩こうさいをきらめかせて飛竜を見つめた。

「逃げているようでは無いな。何か有ったのだろう」


「我が君。ウコバク閣下。『探索サーチ』魔法により魔牛オーブル約三十二頭が近づいて来ます。あちらの方向です」

 ウコバクの使い魔リリムが報告した。


 リリムの指差す方向をノスフェラトーが見つめた。『遠視スコープ』の魔法を使っているのだろう。


「う。何だあの豪華な馬車は。うむ? あれは牛魔オーブルの様だな。先頭の牛魔オーブルが何やら呟いておる」

 ノスフェラトーが目を凝らして見る。

「何々。……何で俺達は、一族を皆殺しにしたこいつらを引いて歩かねばならん……何で俺達一族は滅びねばならん……何でこんな事になったのだ。そう言っておる。こやつの独り言からすると、あの豪華な馬車に乗っている者達が牛魔オーブルを虐殺した者達であろうな」


 見る見る牛車は悪魔軍に近づいて来る。


 馬車はノスフェラトーが言っていた様に見た事も聞いた事も無いほどに豪華だった。純白のボディーはピアノの鏡面仕様の様に艶やかで光沢がある。あらゆる場所には金箔が貼られていて美しく輝いている。そのあまりにも豪華な仕様にノスフェラトーとウコバクを始め悪魔達は口を大きく開けて驚いた。それほどその馬車は豪華で大きかった。


 あまりにも大きな為、馬車を引く牛魔オーブルは全部で三十二頭もいる。しかも、馬車を引いている牛魔オーブルは唯の牛魔オーブルでは無いようだ。普通の牛魔オーブルの何倍もあるような巨大な牛魔オーブルでレベルも80ほどもある。特に先頭の牛魔オーブルはその中でも一回り大きく牛魔オーブルの王なのであろう。先ほどからずっとブツブツと愚痴っている。


 馬車は悪魔軍から何百メートルまで近づいた所で停止した。ウコバクやノスフェラトーが見ていると中から人が出て来るのが見えた。


 最初に出てきたのは意外にも小さな少女だった。悪魔の軍団を前にして神々が乗るような不思議な馬車から出てきたのが小さな少女とはあまりにも不釣り合いだ。


 少女はつば広の山高帽子に不思議な色彩のローブを着ている。杖が大きくて格好から魔術師だと分かる。


 彼女が出て来ると魔牛オーブルが騒ぎ出し、彼女が近づいて行くと魔牛オーブル達は今にも死にそうな悲鳴を上げて地面にうずくまってしまう。


 少女は先頭の一番ブツブツ文句を言っていた魔牛オーブルの王の前に立つと、杖で軽く小突いた。魔牛オーブルの王は大きな悲鳴を上げて小さくなる。


 その様子を見ているだけで魔牛オーブルの王がどれほど恐れているかが伺える。


 次に馬車から出てきたのはさらに小さな女の子だった。黒髪に黒い瞳。見るからに魔人だ。


「あれは魔人では?」

 ウコバクがノスフェラトーに聞いた。


「そのようですな。私と同じとは思えぬひ弱な身体。あれは出来損ないですな」

 ノスフェラトーが何気なく呟いた。


 ノスフェラトーの『出来損ない』という言葉は本当に囁くように小さな言葉だったが、イリスには十分に聞き取る事が出来る音声であった。


 次の瞬間。悪魔ウコバクは生まれて初めて真の恐怖を味わう事になった。


 ウコバクも『遠視スコープ』の魔法を使ってイリスを見ていたのだが、彼女の姿は一瞬ブレて視界がボヤけた。『遠視スコープ』魔法が自動的に補正をかけた時には、イリスの真っ赤に染まった両眼が大きく映し出されていた。


「あっ」と驚く暇もなく、ウコバクの右に立っていた上級悪魔グレーターデーモンのノスフェラトーがスイカの割れた様な音を立てて消失した。


 ウコバクが慌ててノスフェラトーの立っていた所を見たがそこにはノスフェラトーの残骸が地面にばら撒かれているだけだった。


 次の瞬間、彼の耳に入ってきた阿鼻叫喚の轟音に視線を向けたウコバクはあまりにも酷い自軍の状態に思考がストップしてしまった。


 蓋が開いたミキサーにトマトを放り込んだらどんな事になるか想像できるだろうか。ミキサーの狂気ように回る刃に恐怖を感じない者はいない。イリスはまさにミキサーの刃のように目にも止まらない速さで悪魔の軍団を微塵に切り刻んでいた。ミキサーの刃と違うのは彼女の剣が漆黒である事と、彼女の身長の何倍もある巨大な剣である事だ。あとは目にも止まらない凶器となって全ての固形物ミンチに変えて行く所は同じだった。


 あまりにも破壊力のある斬撃の為、魔物達の残骸が竜巻に吹き飛ばされたかのように舞い上がり遠くまでとばされた。


「リリム。撤退だ」

 ウコバクはあまりにも恐ろしい惨劇に逆に目をそらす事ができないようだ。ウコバクはあの狂気の殺人マシーンが自分の方にやって来ないかそれだけを考えて、必死で見つめながら戦線を外れるように逃走しはじめた。リリムがウコバクの後を必死で付いてくる音が聞こえたが目はイリスから離せなかった。




 翔が馬車から出ると、見渡す限り魔物の残骸の山となっていた。遥か彼方でイリスが魔物を狩っているのが見えた。


「ちっ」

 翔が舌打ちをした。


(イリス。狂戦士バーサクを解け!)

 翔が強い闘気バトルオーラの一撃をイリスにぶつけつつ思念を飛ばす。


 遥かな彼方でイリスが我に返り、キョロキョロしている。

(お前。こんな大軍を相手に効率の悪い戦い方をするな)

 翔が思念で叱り飛ばした。


 イリスは我に返り『転移テレポート』で翔の横に転移した。


「うへ! イリス。汚いぞ。魔物の残骸で汚れてるぞ」

 そう言いながら翔は繊細な魔法を発動する。イリスにまとわりつく魔物達の汚物だけを取り除き消し去る魔法だ。


 一瞬でイリスの全身からあらゆる汚れが消し去られる。匂いすら残らない。新品のイリスがそこに立っていた。


 翔が大きくため息をついた。それほど繊細で難しい魔法なのだ。


 翔はイリスの頭をゴシゴシ撫でて笑いかける。

「汚い獣の汚れと一緒に狂戦士バーサクも一緒に洗い流してやったぞ」


 イリスは半泣きになって翔の胸に飛び付いた。翔はイリスを抱きとめると赤ん坊を抱っこするように片手で彼女を抱き止めたままメロの方を見る。


「メロ。よく見ておけよ。これが『核爆発ニュークリアエクスプロージョン』だ」


 翔はそう言うと、頭の中で魔法の術式を展開した。


 翔は、最初に魔法の発動を加速させる術式を展開する。次に焦点を合わせ魔法の発動範囲を自分たちから前方に集中させる術式を展開した。

(アリス。どの方角に撃てば被害が少なくなるか教えてくれ)


(はい。翔様。もう少し左……。ストップです。やや仰角ぎょうかくに……行き過ぎです。……はい。大丈夫でしょう)


 照準はオッケーだ。次に魔力をエネルギーに変換する術式を展開して翔の持っている魔力を注ぎ込む。翔は世界樹から莫大な魔力を吸い上げてこの魔法の術式に投入して行く。恐ろしい魔力が世界樹から吸い上げられ投入された。


 その魔力の量にメロが目を丸くして見ている。その端正な顔を翔が笑いかける。


 次にエネルギーを倍加する術式を展開。エネルギー保存則を無視するこの魔法が最も難しいのだ。念には念を入れて術式を練り上げる。さらに難しいのは、その術式を何重にも重ねがけする事だ。何重にも何重にも重ねがけして行く。際限無く重ねがけするとさすがの翔の周りも時間が経過したようだった。これほど重ねがけすればただの大爆発では終わらず、核の崩壊を促すような爆発が起こり始めるのだ。


 その爆発を目の当たりにした兵士達は異口同音に言うだろう。


 《ラグナロク》と


 翔の前方数十キロの大地が大きく削られた。そのあまりにも巨大な爆発により、大地が大きく鳴動した。ここに歌姫の予言が完全に成就されたのだ。


039 了

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ