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欠陥だらけの天才魔術師(副題:天災魔術師になった天才魔術師はスローライフを生きて行けるか?)  作者: Seisei
第二章 仲間編

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036 歌姫の歌って怖くねぇ?

「爺。早く来い」

 爽やかに白い歯を見せて青年は笑いながら言った。


 青年は一言で言えば美丈夫びじょうぶと言う言葉が似合う好青年だ。精悍な雰囲気を体全体に醸し出しており、とても人目を惹く雰囲気を持っている。


 一方、爺と呼ばれた男は実際に年寄りというのではなく若いのだがどこか老成した雰囲気がある。青白い顔を頭からすっぽりと被ったフードで隠し、どちらかと言うとインドアタイプの男だ。


「脳筋の体力を押し付けないで欲しいね」

 ゼェゼェー荒い息をさせながらフードの男が言った。

「俺がお前のような脳筋になっても良いと言うのであれば幾らでも体力を鍛えよう」


 その言葉を聞いて、前を歩いていた美丈夫がピタリと止まった。

「ナシオ。お前も少しは鍛えろ。お前が病弱と言うだけで喜ぶ奴がいるんだぞ」


「むりむり。そんな事に時間を費やすぐらいなら真理の深淵を探求する方がどれだけ有意義か。脳筋組の理屈を俺に押し付けないでくれ」

 ナシオと呼ばれた男が息を切らせながらぼやいた。

「それより。ミカ。あれを見てみろ」


 ナシオが示した方には、大地に巨大な縦穴が大きな丸い口を開いていた。その縦穴はあまりにも大きいので対岸が霞んで見え、底に至っては暗くなって何も見えないほど深い。


 その大きな穴の直径は数キロ。深さは数十キロあると言われている。魔界まで繋がっているので、この穴に落ちれば労せずして魔界に直行できる。ナシオが指さしたのは彼等からみると少し下に見えるほどの高度だった。大口を開けた縦穴の出口付近に空飛ぶお城が飛んでいる。


 その空飛ぶお城の規模は巨大で空飛ぶ戦艦みたいに見える。その大きさは翔がゴブリン討伐のために作った要塞城よりもさらに大きい。その浮かぶお城を取り巻くように無数の飛竜ワイバーンが飛び交っている。飛竜ワイバーンからは炎のブレスが吐き出されたり、飛竜ワイバーンの背中に乗っている人間から魔法の攻撃が放たれたりしているのが遠目から見える。


美髯王びぜんおうも大変だな。しかし魔界の奴らも懲りずに良く攻めてくる」

 ミカと呼ばれた青年が城の周りを飛ぶ飛竜ワイバーンの様子を見ながら感心したように言った。


「他人事のように。お前の部下もあの中にいるんだぞ」

 ナシオが相手ミカの不真面目な物言いに対して非難を込めて言った。


「大丈夫だ。多分、復活の魔法がかかっているからな」

 ミカがあっけらかんと答えた。

「空中城の将軍旗はグラシアボラス悪魔総裁の将軍旗のようだな。また大物を寄越したもんだ」


「アガリアン神聖国で発生したという蝕が不発に終わったとの知らせが入り、休戦協定が解除されたからな。魔界の民心も外征寄りに傾くのだろうよ。奴らはどこかの戦争屋と同じで戦うのが生き甲斐みたいな鬼畜共だからな」

 ナシオは暗にミカと同じ戦争好きだと揶揄やゆしているのだ。


 面の皮の厚いミカはナシオの揶揄やゆなど意にも介していない。

「そういえばアガリアン神聖国から蝕についてその後の情報はどうだったんだ?」

 ミカは構わずに強引に話題を変える。


「あれは不発だったそうだ。ランクSの“剛腕”と“火神マルスの杖”に半神英雄エインヘリャルのコスナー・レストン様をリーダーとして討伐に向かわせるとの情報だったが、その前に修行中の無名の冒険者が退治したとか仲間にしたとか女神の使者から知らせが有ったらしい」

 ナシオが説明した。


「無名の冒険者とは?」


「それが女神は秘密と申されたそうだ」


「神々の秘蔵っ子か?」


「トライアルは女神ブルュンヒルデ様の入れ込まれていた例の一番最初のレベルアップ・トライアル・ルートらしい。しかし遂にその冒険者達はルートをマスターしたらしいぞ。何でも半神デミゴッドや妖精の至高者オプティマスなどが混じっている特殊なパーティーらしいがな」

 ナシオは情報通だ。

「ブルュンヒルデ様もルート攻略を人間に任せていておいては達成できないと諦められたのかもしれん」


「冒険者の全ての修行コースの設定はほとんどがブルュンヒルデ様の設計が基本だそうだ。最初の失敗をあげつらうもんじゃ無いぞ。しかし、冒険者ギルドも疲弊しているな。蝕の討伐に半神英雄エインヘリャルの応援を要請したり、ギルドからはSランクパーティー二つだけとはどういう了見だ。挙句の果てに女神様の秘蔵っ子達に魔人を狩らせるとは呆れたもんだ」

 ミカが避難した。


「確かにそうだ。そもそも今回の蝕は不発で欠陥幼生だったと最初から分かっていたらしい。それにギルドが送った二つのSランクパーティーも唯のSではなかったようだ。“火神マルスの杖”と“剛腕”はその後のゴブリン軍討伐で功績を上げて昇進している。“火神マルスの杖”はゴブリン軍討伐で引責辞任した“大鷲グレートイーグル”に変わってトリプルSランクパーティーとして理事に参加した。“剛腕”は詳細は不明だがダブルSランクとなったらしい」

 ナシオが説明した。


「ギルドの隠し玉ってわけか。どこも秘蔵っ子がいて羨ましいな」

 ミカが本気で羨ましそうに眉をしかめて言った。


「本当だな。しかし我々にも歌姫がいるじゃ無いか。彼女の予知が実現しないように頑張るしかあるまい」

 ナシオも顔色は優れない。


「しかしあの予知が本当だとしたら大変な事になるぞ」

 ミカが天を仰いで深刻な口調で言った。


「どんな災いが降りかかるのか」

 ナシオもさらに不安な面持ちで顔を暗くする。


「神々が守ってくださる。そう信じるしかない。この世界は神族、魔族、巨人族などの強い種族が治める世界さ。我々人間がどれほど鍛えても所詮たかがしれている」

 ミカが両手を上に上げて万歳の格好をした。


「お前ほど強くて良く言うよ」

 ナシオが肩をすくめた。

「俺はそうは思いたくないな。現に人が半身英雄エインヘリャルに昇神しているじゃ無いか。俺は神々と我々は同じ種族だと確信している」


「そんな事を大声で言っていると神々の不興を買って、ある日魔界に落とされているかもしれんぞ。どちらにせよ事実として人族は弱い。俺であっても、爵位持ちの魔界貴族には到底及ばない。幾ら鍛えても限界がある」

 ミカはいっそサバサバした口調で言った。


「そうだな。ミカや俺はすでに強くなり過ぎた。八年前のプザス悪魔公爵による大侵攻はたまたま魔王達の目を盗んで攻めてきた単独行動。あれは何か目的があってやって来たんだと俺は思っている。魔王達や魔界の爵位貴族の中には堕天使もいれば、蝕で生まれた魔族もいる。最高位の天使である熾天使セラフィムから堕天使となったルシファー様が魔界の最大戦力の一人なんだからな。魔界は複雑だ。彼等が一団となってミッドガルドに攻めてくると言うのは幻想だ。彼等にしてみると神々と事を構えてまで獲得するほどミッドガルドは魅力的じゃないと言うさ。有り得ない事で悩むな」

 ナシオがミカをなだめるように言った。


 二人はまた急いで縦穴に向かって歩き始めた。



 ここ、ウプサラ王国は美髯王びぜんおうと呼ばれているユグリンド王朝ハラルドル王が治める王国だ。メラーレン盆地にはウプサラ王国の首都、バルサーンがある。古くからバルサーンは魔界との交易で栄えた都市だった。ユグリンド王朝の祖先は魔界との交易で富を得た豪商だったと言われている。


 その首都バルサーンの中心には魔界までつながる巨大な縦穴がある。この縦穴は『縦穴フェラシオス』と呼ばれている。この縦穴は悪魔の侵攻拠点になるというデメリットだけでなく魔界との交易により景気が良いというメリットがあるのだ。


 高級な悪魔は飛ぶことができるが、流石に数十キロに及ぶ縦穴を飛んで上がって来る事は不可能で飛翔力の強い飛竜ワイバーンなどの魔物を使うか、魔法で浮遊させた乗り物が使われている。


 浮遊城もその一つだ。一般の庶民は乗り合いの浮遊車を使うのが普通だ。


 ナシオの目の前にその浮遊車が飛んで来るのが見えた。ナシオはその中に大勢の乗客がいるを見て違和感を持った。


 彼は自国の住民には「魔界とミッドガルドとの境界には何重もの関所があり、許可が無い者は通る事が許されない」と説明していた。


 特に魔界からミッドガルドへの通行は厳重に監視されている。(はずだ)とナシオは考えている。


「ミカ。そろそろ関所だな」

 ナシオはその違和感を振り払うようにミカに言った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【『縦穴フェラシオス』の出口付近の関所にて】


 魔界から関所を抜けミッドガルドに入ろうとする者達の行列ができている。


 浮遊車が到着し中から大勢の乗客が降りてきた。


 クルーが関所の行列の最後尾に彼等を案内した。


「ヒェ〜! こんなに長い行列ができているのか?」

 乗客の中の一人がボヤいた。

「ウプサラへの入国審査は厳しいらしいからどれほど待たないといけないんだ?」


「大丈夫。ほれ見ろ」

 そう言ったのは浮遊車の乗客を案内したクルーだ。彼は行列がスムーズに流れて行くのを手で示した。


 この行列に並んでいるのは多くは魔界の上流階級の子弟達だ。その多くの目的は単なる観光であったり、留学であったりする。


「ウプサラ王国では君らのような魔界からの一時入国は大歓迎さ。魔界に帰るときはもっとスムーズに帰れるよ」

 クルーが耳元で説明してけくれた。


 乗客はようやく納得して笑顔でクルーに挨拶して行列の後ろに付いた。その直ぐ後ろにミッドガルドに入ろうとしている男は大きな鞄を持っている。魔界側の商人と言うところだろうか。怪しいのは、その商人の後ろの二人組みだ。二人組の巨体は唯の人間でない事を露呈している。


 彼等は直ぐに関所までやって来た。


「立ち止まるな。どんどん通れ」などと関所の番人らしき者が上目線な指示を出している。


 やはり、と言うべきなのだろう。この怪しい二人組は関所で通行を止められてしまった。ところが何の関係もなさそうな彼等の前を歩く商人が関所の役人に何やら呟くと役人は平身低頭して三人を通してしまった。


「待ちな」

 声をかけたのはナシオだった。


 商人はナシオを見るなり顔色を変えた。

「お前達がどうしてこんな所に?」

商人は驚きの表情を隠せない。


 ナシオは嬉しそうに笑った。

「さて。どうしてでしょう?」


「ナシオ。殺さずに捕らえろよ」

 ミカが後ろから言った。


「役割が逆だろう」

  ナシオがぼやくように言った。

「後ろのやつらは魔人っぽいぞ」


 次の瞬間、商人の後ろにいた体格の良い二人組が突然ナシオに斬りつけてきた。その斬撃の鋭さは常軌を逸していた。


 ナシオは、腰に挿していた小ぶりの杖を取り出すと、二人組の恐ろしい斬撃を器用に受け流した。


 二人組は更に追撃しようとナシオに詰め寄った。しかし商人風の男が鋭く命じた。

「違う。後ろの男が本命だ」


 その言葉で二人組は、慌てて目標を変えた。


「ミカが本命らしいぞ」

 ナシオが笑いながら言った。


「俺よりもナシオの方が戦略的に重要だろうに」

 ミカはそうボヤきながら、サラリと腰の剣を抜いた。


 怪しい二人組は驚くべき身体能力を示した。一人は助走もつけず数メートルを飛んでミカに斬りつけた。もう一人は飛び込んだ男と同じ速さで地面を走った。どちらも常軌を逸した身体能力だ、


 ところが、ミカは少しも慌てず、二人の攻撃を一振りの斬撃で受け止めて見せた。剣と剣が激突するギシっという重い音がした。


 ミカの斬撃はあまりにも鋭いため、男二人の剣を受け止めているのに激突の音は一回だけに聞こえた。ミカの斬撃は鋭いだけではなく威力も凄い。二人組の男達はミカの一振りの斬撃で吹き飛ばされてナシオや商人を越えて関所の手前の地面に激しく激突して意識を失ったようだ。関所の役人達は急展開に口を大きく開いて眺めるだけだ。


 その時、商人の姿が消えた。彼等の様子を見ていた周りの者達にはそう見えた。しかし、商人は遠巻きの人ですら目で追えないほどあまりにも速く動いたので消えて見えたのだ。


 その商人は、次の瞬間ミカの遥か向こうに剣を構えて立っていた。魔法の転移の様に見える程に素早い攻撃だった。商人は剣を抜いて残心の構えをしている。すれ違いざまにミカに斬撃を叩き込んだのだ。


「中途半端な奴だ」

 ミカがボヤく。


 その言葉が終わると同時に商人はゆっくりと前に傾いて行きそのまま地面にうつ伏せに倒れた。


「あーあ。っちまったか」

 関所の側で気を失っている二人組を両手で引きずってやって来たナシオが呆れて言った。

るなってお前が言ったよな」


「すまん。ちょいと手加減するには強すぎた」

 ミカが謝った。


「ミカが手加減できなきほど強いのか。そりゃ、そいつもこの二人と同じで人間じゃ無いな。こいつらが歌姫の予言の奴らか?」

 ナシオが首を捻りながら呟いた。


「おい。お前達。関所でこの騒ぎはどういう事だ?」

 関所の役人達がこの時になってゾロゾロと出てきた。


「お前達。無礼をするんじゃねぇぞ。このお方は、ユーリ王国の親王ミカル・シュティクロート・ユーリ陛下であらせられるぞ。守備隊の責任者を呼べ」

 ナシオこと、ユーリ王国宰相イグナシオ・サイダーンが叱責した。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【ユーリ王国とウプサラ王国の境界のとある村にて】


 メロは全方位に最高位グレイド魔法『無限凍土インフレクイドテラム』魔法を発動した。第十グレイド魔法はメロの他は翔しか使えない。本来魔法の得意なはずの妖精のアメリアや魔人イリス、半神のレイラ、竜王の末裔セーラの四人の誰でもなく唯の人間のメロがレベルを無視した高位の魔術を使えるのは不思議だ。


 一瞬で見渡す限りの平原が白く輝き始めた。『無限凍土インフレクイドテラム』によって遥かな彼方に逃げるように行軍していたゴブリン軍が凍って行く。


 しかしメロは攻撃の手を緩めない。

「我の名はメロ・アルファード。いにしえの火の精霊よ、風の精霊よ、水の精霊よ、土の精霊よ。我が名により命ずる。あらゆる事物の理を破棄し全てを無に帰する気高き清浄なる力をもって顕現せよ『超大爆発スペリオルエクスプロージョン』!」

 翔の見よう見真似の超階位オーバーコート魔法を発動せる。さすがのメロも超階位オーバーコート魔法は無詠唱では放つ事はてぎない。


 ゴブリンの大軍の真ん中に火球が広がり瞬く間に視界を覆い尽くした。


「メロ。本当にお前は凄いな。こんな魔法を使えるようになるんだからな」

 爆風に第八グレイドの魔法障壁マジックバリアーを合わせて衝撃に耐えながらアメリアが感嘆の言葉を上げた。

「お前はいつの間にか翔の魔術を使えるようになっているな」


「そんな事。無い。全然ダメ」

 メロが首を左右に振った。


 もし、この言葉を目の前のゴブリン達が聞いたらたらさぞかし憤慨するだろう。


 彼らは神聖国アガリアンからここウプサラの国境まで遥々逃げてきたのだ。それは彼らの王となるゴブリンを殺した憎いが近くにいるだけでも恐ろしい人間達からの逃避行だった。獣の勘と言うのだろう。その判断は正しかった。しかし不運だったのは逃げた先に運悪くその相手と再び出会ってしまった事だ。しかも更にゴブリン達の不運だった事は翔達が前よりも遥かに強くなっていた事だった。


 翔達に最高幹部達のほとんどを殺されたゴブリン達だったが数はまだそれなりに残っていて総数は約三十万ほどもいた。アガリアン神聖国での戦いではそれほど大きな戦いにならずゴブリンは総数をあまり減らさずにここまで逃げてきたのである。


 ところがメロの放った二発の魔法で、敢え無くゴブリン軍は壊滅の危機に瀕しているのだ。


 潔癖症のメロは女の子を苗床にして子供を作ると言うゴブリンが心の底から嫌いなのだ。ゴブリンの残党を一目見た途端、メロは彼女が使える最強魔法を放ったのである。


 チーーン


 もちろん、この辺りの草原でお坊さんが鳴らすようなりんの音がするわけではない。ゴブリンの惨憺たる状態を擬音で表せばそんな音になるだろう。メロは非常に端正な顔立ちで小柄なため天使のように可愛い少女に見えるのだがメンバーの中ではなかなか強硬派で容赦がないのだ。


 ただ爆発系の大魔法『超大爆発スペリオルエクスプロージョン』(メロが勝手に名付けた)は威力は強いが大軍を完全殲滅するのには向いていない。あちこちで生き残りがいる。


 竜人セーラは、こうなると翔に習っていたため直ちに召喚魔法を発動し、竜牙兵、飛竜ワイバーン亜竜ドラクーン火竜サラマンダーなどの低レベルの竜族の大軍を召喚し生き残りのゴブリンの殲滅に掛かった。セーラが展開した術式から巨大な魔法陣が立ち上がり天空を大きく彩った。その魔法陣から数え切れないほどの竜族が召喚される様は壮観であった。そして召喚された竜族は、ゴブリンを瞬く間に殲滅したのだった。


 いきなり三十万もの魔物を退治すれば相当の経験値スコアになることは想像できるだろう。その結果としてポンと皆のレベルが上がった。


 このゴブリン討伐でメロはレベルが一挙に8も上がり217になった。現在のメンバーの皆のレベルは以下の通りだ。


 翔    227

 メロ   217

 アメリア 204

 イリス  194

 レイラ  208

 アリス  209

 セーラ  188


 最近の翔達のレベルアップはこんな感じで伸び率が大きい。倒す相手が竜王の様に強かったり、ゴブリン軍のように大勢であったりするからだ。


 レベルが上がる事による神々の恩恵は、第一にステータスが上昇することだ。翔達のようにレベルアップを極めるとステータスの上昇は頭打ちしてくると思うかもしれないが実は逆でレベルが高ければ高いほどステータスの伸び率もまた大きなものになってくるようであった。


 レベルアップの効果には同じ職業でも個人差がある。ましてや特殊な職業の彼等は様々のレベルアップの効果が現れるようであった。


 レイラは剣技を覚える事が多く、アメリアやイリスは魔法と剣技を半々に覚える。セーラは竜人特有の技能、剣技、魔法と覚える事が多様だ。アリスの覚える技は更に特殊な支援系が多い。


 現在の翔達がどれほど強いのかであるが、竜王を倒してからの彼等の強さは一言で言えば化け物級だ。現在一般に公開されている最高位のレベルは、アガリアン神聖国のギルド本部の理事長のレベル280で世界最強と言われている。


 翔達はレベルの高さで言えば冒険者ギルド理事長のオロフ・フルブランソンには劣るが実際の実力とレベルが完全に一致するわけではない、


 理事長オロフ・フルブランソンがどのような実力であるかをタイプが一番近いレイラを対象に比較してみる。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【レイラと理事長の実力の比較】


      レイラ  理事長

レベル   208  280

HP    880  480

MP    945  313



(主要パラメータの比較)

力     530  440

素早さ   650  490

防御力   605  480

動体視力  790  445

反応速度  616  448

器用さ   596  494

魔力火   780  441

魔力水   781  444

魔力地   772  448

魔力風   788  432

魔法防御力 868  440

魔法素早さ 834  448

魔法器用さ 882  432


(剣技)

ランク    達人  熟練者

第一グレイド 全部   全部

第二グレイド 全部   全部

第三グレイド 全部   全部

第四グレイド 全部   全部

第五グレイド 全部   全部

第六グレイド 全部   18

第七グレイド 全部    9

第八グレイド 全部    3

第九グレイド 19    無

第十グレイド  6    無


(魔法)

ランク    熟練者マギアダプタス 理論マギセオリカス

第一グレイド 全部   全部

第二グレイド 全部   全部

第三グレイド 全部   全部

第四グレイド 全部   18

第五グレイド 全部    9

第六グレイド 全部    2

第七グレイド 13    無

第八グレイド  5    無

第九グレイド  1    無

第十グレイド  無    無


(このほかオロフ・フルブランソンには全く無いがレイラが保有している能力を列挙)


○神々と同じで巨大化できる

○第九グレイド神聖魔法が使える

○第八グレイド召喚魔法が使える

○第七グレイド精霊魔法が使える

○第六グレイド妖精魔法が使える

○第五グレイド暗黒魔法が使える

○第二グレイド創造魔法が使える


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


 世界最強のオロフ・フルブランソンと比較してもレイラの各ステータスや剣術、魔術の実力はこれほど高いのだ。それこそチートと言っても過言ではない。


 もちろんレイラは半神デミゴッドである事に加え職業がトリプルの上、超上級職に就いている。これらの職業固有の上がり幅が高いのだから世界最強とはいえ普通の人間であるオロフ・フルブランソンと比べて差が出て当たり前なのだが、それだけではこれほどの差にはならない。そんな基礎的な数値上の差を超えて翔達と一緒にいると修行の質が考えられないほどに濃いことが最大の原因でこれほどの実力差となって現れているいるのだ。


 さらに翔達はそれぞれ特有の技能を持っていてそれをお互いに教え合える。特に教える事の上手な翔に魔法の手ほどきを受けて様々の魔法の訓練を受けている事がレイラの強さの源泉になっていた。


 今回、ゴブリンを見て翔が何の反応も示さなかったのは、彼が出るまでの必要性を感じなかったからだ。たとえ200を超えるレベルであったとしてもたった一人で三十万ものゴブリンを駆逐するなど誰が想像したであろうか。


 彼等はそれほど強くなっていたのだ。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



 ハラルドル美髯王は、もちろん頬髯ほおひげを生やしている。美髯とはひげを褒めているのでは無く彼自身が見栄えの良い髯男なのだと言いたいのだ。もちろん本人がつけたあだ名では無く彼を慕った女性方がつけたあだ名だ。


 しかし、ユーリ王国の英雄王と並べて見ると果たしてどちらが好みなのかと考え込んでしまいそうになる女性も多いだろう。それほど二人は傑出した見栄えの良い男達だった。


 ハラルドルはユーリの英雄王と比べふた回り程も大きな体格に豪傑らしい快活な性格で、ユーリ英雄王とは無二の親友でもある。


「魔人なのか」

 ハラルドルは考え込むように言った。

「三人の体格は大分違うな」


 英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリは頭をかきかき。

「すまん。雑魚の魔人しか捕らえられなかった。こいつは少々強すぎた」


「魔人の雑魚などいないだろう。さすがに人類最強の王様だ」

 ハラルドル・ユグリンド美髯王が笑いながら答えた。


「持ち上げるな。俺より強いのは幾らでもいる」

 英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリそう言って首を左右に振った。彼はそう言いながら頭の中に名前を思い浮かべていたが、正にその中の一人が彼等の部屋に入ってきた。


 大賢者と呼ばれる男、ゾーングアルス・リルドベリだった。彼のトレードマークとも言えるツバ広の山高帽子を目深に被り灰色のローブとマントを着用している。


 慌てて英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリは立ち上がって聖人に対する拝礼をする。

「これは大賢者様。遥々極西の悪魔臭いところまでおいで頂き」


「英雄王様。ご丁寧な挨拶痛み入ります。英雄王の御活躍の報に接し参りました。魔人を取り押さえられたとか」


「申し訳ありません。リーダー格の魔人は強すぎて切り捨てるしか無く捕らえるには至りませんでした」


「英雄王の身に何かある方が大変ですからな」

 ゾーングアルスが笑ながら言った。

「しかし、英雄王はどうして魔人の存在を?」


「我が家には、占い娘がおりまして」


「噂の歌姫ですな」

 ゾーングアルスが言い当てる。


「さすがに大賢者様。お耳が早い」


「彼女の占いはどのように?」

 大賢者は興味深そうに聞いた。


「はい。大騒動が起こる事を予言いたしました。歌姫によると強き者達がウプサラに入り大きな戦を起こすとの予言でした。歌姫の予言でハッキリしているのは魔人が存在するという事でそれ以外はあまり意味が分かりませんでした」

 英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリが歌姫の予言を詳しく大賢者ゾーングアルス・リドベルリに語った。


「ふーむ。お主の言うその大いなる賢者とはワシの事とは思えんがな。誇張が過ぎるのではないか」

 ゾーングアルスが首を捻った。

「それでは、超魔術師メイガスのようだ」


「しかし、大賢者様は、白魔法、黒魔法の二つの魔法を全てマスターされた賢者の中でも特別の賢者様。予言と全く同じではありませんか」

 英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリが怪訝な顔をして言った。


「イグナシオ・サイダーン殿。お主のご主人に魔導師の技を教えて差し上げてくれ」

 ゾーングアルス大賢者が彼と同じ魔導師のユーリ王国宰相であるナシオに命じた。


「はい。大賢者様。ミカ。そもそも大抵の者は簡単な黒魔法の攻撃系魔法を先に覚える者が多い。火・水・土・風の四つの属性の攻撃魔法だ。大抵の人間はこの四つの属性のうち一つか二つを操るのがせいぜいだ。しかし少数だが白魔法系の治療魔法を覚える者も存在する。更にほんの少数だが神聖魔法や妖精魔法による治療系魔法を覚える者や召喚魔法を覚える者もいる」


「それぐらいは俺でも分かっているぞ」

 ミカがナシオの話に割って入る。


「いやいや。そもそもそれらの魔法は皆一つだと言ったら理解できるか?」

 ナシオが謎かけの様に聞いた。


「良く分からんな」

 ミカが正直に答えた。


「四大精霊魔法と言うのを聞いた事があるか?」


「火・水・土・風の精霊から魔力を得て行う魔法だな。確か古代の神々や原初巨人が使っていたとか」


「ほう。英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリは博識だの」

 ゾーングアルス大賢者が褒めた。


「その四大精霊魔は魔法の本質とされるたった一つの魔法だと言うのが大賢者様の提唱された理論だ」

 ナシオが説明する。

「つまりだ。魔法をいろいろな種類に分けるのは本来は間違いで魔法を混乱させている原因にもなる。中でも黒魔法と白魔法は近い系統の魔法なのに二つ分けてているのは無駄が多いと考えられたのだ。この事を大賢者様は提唱され現在では白魔法と黒魔法は統一されて一つの魔法として修行されるようになった。そのおかげで現在では随分治療系の魔法を使える魔導師が増えた。ゾーングアルス様が大賢者様と言われるのは魔法を統一された事に由来する。ところが予言の大いなる賢者は、『百の魔法の真理を知る大いなる賢者』と表現されている。その表現には違和感がある」


「しかし歌姫がお前の様に魔術に詳しいわけではないのだからそんな細かい事が分かるわけが無いだろう」

 ミカが取り合わずに言った。


「それもそうだな。天才軍師のイグナシオ・サイダーン殿が予測されたところにちょうど予言の魔人がいたのだから。考え過ぎかもしれん。そこで生き残った魔人から何か情報は得られたのか?」

 ゾーングアルス大賢者が聞いた。


「そう言えば大賢者様は昔、大魔女と呼ばれる女性とパーティーを組まれていた事があるのですか?」

 イグナシオが尋ねた。


「何故それを?」

 ゾーングアルスが驚いて聞いた。


「奴らは『大魔女様を裏切らせ仲間にした憎むべき賢者』と言う冠名かんむりなを付けて大賢者様の事を呼んでおりました。大魔女は、彼等悪魔崇拝者のシンボル的な存在だった様ですな」

 ナシオが魔人達から得た情報を説明した。


「その事は内緒にしておる。その大魔女は火属性の天才児だった。まだほんの若い時に一時的にパーティーを組んで、魔王パバゾを倒した時に大いに助けとなった。《音無》共から逃れる為に隠棲しておったが老いたのだろう。暗殺されたと聞いている。確か最後の手紙には養女を養っておると書いていたが、さてどうしたか」

 ゾーングアルス大賢者は昔を懐かしむように宙に視線を巡らせて説明した。


「しかし、歌姫の予言が事前に回避されて良かった。奴らをむざむざウプサラに入れていたら重大な騒動が持ち上がるところだった」

 ユーリ王国の天才宰相は、大きなため息をついた。


「災いの王が立ち上がりメラーレンを焼き尽くす。縦穴フェラシオスは大きく裂け放たれる。全ての悪魔は騒ぎ解き放たれる……など本当に起きていたらどれほどの被害になるか想像もつかん」

 英雄王ミカル・シュティクロート・ユーリ王も顔をしかめて言った。



☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


【ちょうどその時。ユーリ王国の王都バルラタイドの王城のとある部屋】


 美しい少女が笑いながら美しい少女には大勢の侍女達が少女の世話をしている。


「歌姫様。大丈夫ですか?」

 侍女の一人が叫んだ。


 しかし歌姫と呼ばれたその美しい少女は次第に白目になり金縛りに会ったように身体を震わせ始めた。


 歌姫はしばらく苦しみののたうち回ったが、急に今迄苦しんでいたのが嘘のようにスックと立ち上がり天に両手を差し上げるような格好をしてから叫ぶように予言を始めた。

「魔人が暴れ貴人を害する時、大いなる魔女が復活する。それは大戦争の予兆である。少しでも知恵あるものは大いなる魔女の叫びを聞いたなら直ちに地平の果てまでも逃げ去るがよい」

 悲痛な叫び声のように少女は金切声で詠唱を淀みなく続けた。

「去らぬ者共よ。そなたは全てを見るであろう。大いなる悪魔のその禍々しい翼と鱗に覆われた巨大な姿を。我らの大いなる賢者は自ら戦おうとしないだろう。哀れみの戦女神が現れて己が弟子を遣わして大いなる賢者を説得するだろう。大いなる賢者が戦う時、大地は鳴動し魔界とミッドガルドは等しくなる、大いなる災いを呼び寄せて天はその時が来たと知らせる。ああ。ラグナロクの時だと知らせる」

 歌姫が歌うように予言を言った。


 いつも世話をしている侍女達ですら見た事がないような激しい歌姫予言だった。


 侍女達はあまりにも恐ろしい予言の内容にしばし我を忘れて歌姫が倒れるに任せた。



036 了

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