有機☆化合物!〜エステルの加水分解編〜
酢酸グループ社長令嬢酢酸メチルは親戚のニトログリセリン(ダイナマイト)をみれば分かるように少し怒りんぼだ。
「まったく私をこんなところに呼び出したのは誰かしらっ」
そして今酢酸メチルは誰かに呼び出されて学校の屋上に来ている。
と言うのも、酢酸メチルが帰ろうとして下駄箱を開けると、
『屋上に来て欲しい』
と一言書かれた手紙があったのだ。
そのため、やむを得ず迎えの車を待たせ、屋上に来ていた。
しばらくして、
ギギーという錆び付いた金属のこすれあう音。
屋上の扉が開いた音だ。
どうやら相手が来たらしい。
酢酸メチルは怒りのあまり、キッと入り口を睨み付けていたのだが、
「……あら……水さんではないですか」
想定外の人物に驚いたような顔を見せた。
そう、無口で大人しい水がいたのだった。
水は財閥「水」のこれもやはり会長令嬢である。
「どうなさりました、水さん」
二人は幼い頃から数多くのパーティーで面識がある。
「…………」
しかし、水のこの性格のため話す事はまずなかった。
「……喋らなくてはわかりませんわ」
酢酸メチルは水を急かす。
すると、突然水が酢酸メチルの腕を引き寄せた。
「なな、何するのですかっ!!」
「…………いい匂い」
水は酢酸メチルの匂いを幸福そうに嗅ぐ。
そう、酢酸メチルには芳香性があるのだ。
「や、やめっ」
予想以上に強い力。
普段は勝ち気な酢酸メチルではあるが、予想外の出来事に体が固まっていた。
「……んふ……可愛い……」
妖艶で、淫靡な微笑みだった。
水は酢酸メチルの耳を甘く噛む。
「……あ…ん……やめ……」
そして、水は空いた手で酢酸メチルの体をまさぐり始める。
水の透き通った細い指が体のラインをなぞるように上下する。
「あ……はぅ……ん……」
今まで体感したことのない、官能的な指使いに酢酸メチルは自然と声を漏らした。
水は酢酸メチルの体をぐっと引き寄せ、自分の唇で酢酸メチルのそれを塞ぐ。
「……んっ……んんっ……」
二人の間で熱い吐息が交わされる。
「……ん………ん……」
控えめに水が声を出す。
初めは抵抗していた酢酸メチルだが次第に、
「ん……ちゅく……ん……」
大人しくなり、積極的に求めるようになっていた。
やはり本能には勝てないのだった。
水は動かしていた手をいったん止め、
今度は服の中へと手を忍ばせる。
それに反応し酢酸メチルは
「ひゃうっ」
と声を漏らす。突然の事に驚いたらしい。
水はゆっくりと下着の中に手を滑らせる。
酢酸メチルの肩がピクンと跳ねた。
水は円を描くようにやさしく、じっくりと尻をなで回した。
だんだんと酢酸メチルの声が切なくなってゆく。
「あ、ぁん………ん……」
求めるように腰を動かしていた。
そして
――――水は指先に湿った感覚を覚えた。
そう、酢酸メチルの秘境からメタノールが滴っているのだった。
「う……でちゃ、う……メタノール出ちゃうぅ………」
加速度的に酢酸の下着が濡れていく。
「いやらしいよぉ……いやらしいの……いっぱい…出てるのぉ……」
既に二人の体は半分以上が溶け合っていた。それに伴ってメタノールと酢酸がじわじわと溢れる。
そして遂に水は酢酸メチルに溶け込み、やがて、二人は重なって一つの酢酸となった。
屋上にはメタノールで湿った地面と、酢酸がぽつんと残った。
〈エステルの加水分解編〉 終わり