やって来た非日常という名前のファンタジー
皆さんは異世界召還と言うものをご存じだろうか。そう、ある日突然異世界によばれて魔王を倒してとか言われるアレのことだ。まぁ、終わったら帰れたり、もう帰れないと言われたり、チートがあったり、チートなしのど根性ものだったり、陰謀に巻き込まれて復讐を決意するピカレスク系だったり、はたまたラブコメだったりとバリエーションは数多くある。が、それはこの際置いておく。遠目で見て大笑いする分には私も好きなこのジャンルではあるものの今は某主人公たちに深く同情を禁じ得ない。
つまり…
「勇者の皆さま方。どうかこの国をいや世界をお助け下さい。」
学校の帰り道に友達がラブコメを繰り広げていていつものことながらリア充爆発しろっ!と思いながら帰っている途中でいきなり目の前が真っ白になり、気づいたら石造りの見慣れない部屋のなかでいかにもお姫様と言った様子の少女に足下は黒歴史を思い起こさせる魔方陣のようななにかがあり、ようこそお越しくださいましたとか言われて勝手にありがちな事情を説明され、うるうるしながら私たちで役にたてるならとかほざくバカップルを尻目に私は深く深くため息をはきかけて堪えた。あれだ、多分このトラブルメーカーの上に主人公体質のこのカップルに私は恐らくは巻き込まれたに違いあるまい。全く、どうしたらよいのかなどキングオブ凡人には皆目見当もつきそうにない。誰か、頭のいい人たちよ助けてくれと叫びたい、わりとマジで。何だか頭わいてる感じで取り敢えず話が終わって客室に案内されて、友達の女の子が私ちょっと彼氏に会ってくるー。とかで部屋からいなくなって私はやっと床にorzの姿勢で崩れ落ちた。
私の頭のなかでなにかがピキッと音をたてて一緒に崩れ落ちたのは多分気のせいではないはずだ。何故ゆえに私も一緒に来たのだろう、あのバカップルだけで勇者様やってれば物語的には素晴らしいと思う。そして私のことを巻き込まずに頑張ってくれたまえ。なに若さは力さ、君たちならばどんな試練も乗り越えて伝説になれるはず。君たちなら泥々の陰謀劇やらなんやらも主人公補正で丸っとハッピーエンドだよ、間違いない日野 瑠美と厚木 亮という人間たちはそう言う人種なのだ。でも、私はちがうそんな人間たちとは程遠く地べた這いずり回って平凡に生きてる奴なのだ。こんな非日常の代名詞に巻き込まれてみろ恐らく命が危ない。今、私とあいつらの身には一体なにが起こっていて、これからなにが降りかかってきて、そもそもこんなことが現実に起こりうるのか、私はちっとも理解出来ていない。
起きている事態を理解したくない私は現実逃避をした。すなわち、「寝るか、ちょうどよさそうな布団あるし。」そう、客室のキングサイズのベットにダイブしたのだ。少し固く感じるが心地よい暖かさのなかで微睡みに身をゆだねながら私はそのまま意識を失った。何が有ろうとどうにもなるまい、知ったことかと投げやりなことを思いながら…。
そんなことで始まりました。よろしくお願いします。