#16 模擬戦~トールvsクリフォード~
戦闘の始まり始まり。
「あれ?何かフラフラするのじゃ…」
ふらついているティアを支え、歩けそうにないティアをお姫様だっこした。
「多分、合成魔法の連発や『時空間魔法』の使用で予想以上に魔力を消費したんだろう。邪魔にならない所で座って休んでおきな」
そのまま模擬戦に影響のない所に運んで座らせた。
「あ、ありがとう…なのじゃ…」
なんかティアが恥ずかしがってないか?・・・ああ、お姫様だっこか!
「悪い、恥ずかしかったよな」
「い、いや嬉しかったから問題ないのじゃ!!それよりも、そろそろ模擬戦に行った方がいい」
「そう?じゃあ、行ってくるね」
・・・
「さーやるぞ!!」
クリフ殿下が突然大声を出した。
「隣で大声を出すなバカモノ!!耳が痛いわ!!」
王様がとうとうキレました。周りの皆様は溜め息ついてるな。
あれを見るに日常茶飯事なんだろうな~。
家族か…いいな…
「ハッハッハッ!すまんな、父上。それよりも、早くやろうぜ、トール!」
ハッ…そうだった。う~ん…どう戦うか決めてないんだよな~・・・
これ状況自体が突発的だから、ハイヒューマンになったことで戦いにどんな影響が出るか分かんないんだよな。あ、そうだ!
「あのー、私は魔法どこまで使っていいんですかね?」
「ふむ、近接戦を見たいから身体の強化のみ…と、言いたいところだが、トール殿の本気も見てみたいな…」
王様が悩んでいると、
「父上、父上。悩むくらいなら2回やればいいんだよ。1回目は強化のみ、2回目は何でもありってな感じで」
クリフ殿下がいいこと思い付いたと言わんばかりに、王様に提案を出してきた。
「む、そういう考えもあるか…トール殿、貴殿はそれでもよいか?」
「あー、構いませんよ」
疲れるけど・・・
「ふむ、ではそうするか。1回目はクリフォードでいいとして、2回目は…」
「おいおい、父上。2回とも俺がやるってば!!」
「しかし、お前は魔法はからきしではないか…」
「魔法が無くても武術でどうにかなる!!俺は『武人』になる男だぜ!!」
クリフ殿下は王様の不満、不安を取っ払うかのような気勢で宣言した。
真実を知ってるのは2人だけだから言えないが…それより上の人がここに居ますよ~
「ふむ、これも経験か…分かった、2試合ともお前がやれ」
「よっしゃー!!」
・・・ただの戦闘狂に見えるんだが…
「では、始めるとするか。両者とも準備をしてくれ」
・・・
「準備はよろしいですね?・・・それでは、始め!!」
騎士団長…ルシアンさんが合図を出し、1回目の模擬戦が始まった。
「よーし、いくぞ、トール!!」
宣言したと思ったら、剣と盾を装備したクリフ殿下が突進してきた。
あの『武人』発言の後、クリフ殿下のステータスを確認したんだが、すごい個性的だった。
そのステータスがこちら
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名前:クリフォード・コリント・マレノ
種族:ハーフヒューマン(ヒューマン+獣人)
年齢:15歳
職業:マレノ王国第3王子
犯罪歴:無し
レアスキル
・『心眼Lv.8』・『威圧Lv.6』
・『一撃必殺Lv.8』
スキル
・『気配察知Lv.8』・『看破Lv.9』
・『算術Lv.4』・『異常状態耐性Lv.6』
・『魔力操作Lv.5』・『舞踏Lv.5』
・『接客Lv.5』・『魔物知識Lv.3』
・『物品知識Lv.4』・『並列思考Lv.5』
・『剣術Lv.7』・『盾術Lv.7』
・『突撃Lv.7』・『威嚇Lv.6』
・『騎乗Lv.5』・『指揮Lv.6』
・『体術Lv.6』・『槍術Lv.6』
・『斧術Lv.6』・『鎌術Lv.6』
・『鞭術Lv.6』・『鎚術Lv.6』
・『弓術Lv.6』・『棒術Lv.6』
・『杖術Lv.6』・『性技Lv.4』
魔法スキル
・『無魔法Lv.8』
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スゲーよ。見事に近接戦闘振り。しかも、武術が全部一流レベル。
『心眼』や『看破』を見るに相当ヤバい死線潜り抜けてんじゃねーか?
レベルはこっち、地力は向こうが上。
ならば、『気功術』を練習しながら技術を盗ませてもらいますか。
俺はクリフ殿下が突進してくるのを見ながら、『身体強化』と『気功術』で丹田から氣を全身に流す。
余談だが、以前魔力を探しているときに丹田に感じた違和感は氣だと、『気功術』を宿で練習してて気付いた。 あの時練習してれば早めに戦闘力強化が出来たのに…悔やまれる。これ結構便利なんだよ。
俺は牽制として、両手から氣を指弾として放つ。狙いは顔だ。
『気功術』の効果は氣の物質化、肉体強化、そして氣の可視化だ。
物質化はさっき見せた指弾みたいなものだ。いろいろ応用が利く。
肉体強化は『身体強化』が任意の部位を魔力で覆い、壊れないように保護する外部的な強化に対し、内部的にそれそのものを強化している。
最後に氣の可視化だが、これは相手の動きが読めるって言ったらいいな。機先を制することが出来るというわけだ。
クリフ殿下は違和感を感じ取ったのか、盾で顔をかばい、指弾を防い…いや、ちょっと体が浮いて突進が止まった。牽制のつもりが予想以上の威力だったみたいだ。こりゃ、手加減を覚えないと人が死ぬな。
「おいおい、なんだよそれ…『心眼』に反応がなけりゃヤバかったぞ…」
おろ?クリフ殿下、ひよった?
「いやー、あれを止めるとは流石ですね。牽制はこれまでにして、そろそろ本格的に戦いますか。因みにさっきのは魔法じゃないですよ」
俺はそう言うと、小太刀を抜き、構えた。
「牽制かよ…あれが…ククク、楽しいじゃねーか、おい!!」
あ、ひよってなかった。やっぱり戦闘狂だよ、この人。
クリフ殿下はまた突進してきた。だが、さっきとは違い盾を前面に出しているから、警戒しているのだろう。
さあ、仕切り直しだ!!
次回、模擬戦の終わり




