#14 王家の人々
つまらない原因と自己紹介回
「あれは4の月の終わり頃だった。王族と貴族による予算会議を行っていたのだ。
内容は省くが軍備の話をしている時、そこで1人の貴族…ソザートン伯爵がこう言った。
「クリフォード殿下を次の王に」とな。そこで少数ではあるが、貴族内にも賛同する者がいた。
その者等は他国や魔の森への領土拡大を狙っており、私やアルフォンス、ブラッドフォードみたいに頭が良い現状保守派は邪魔だったのだろう。武術バカで最も扱いやすいクリフォードを後継ぎとして推し、軍備に力をいれたかったのだろうな」
あー、やっぱりあるんだね、後継ぎ争い。
「父上…それは言い過ぎじゃね!?」
「何を言うか。そもそもこの騒動の原因はお前の発言が発端だろうが…でだ、このバカがソザートン伯爵にこう言い返した。「お前らはアホか」と…」
「は?」
俺は一瞬呆けてしまった。
「そのあとこうも言った。「次の王はアル兄以外いねーよ。俺らは土台なんだ、支えるのが役目。それを壊そうとするならテメーらぶっ殺すぞ」とな」
てか、王子の真似上手いな王様…さすが親子。
「言ってる内容は素晴らしいのだが…如何せん口が悪い。そのあとも「テメーらが言ってる事は一種の不敬罪だよな。なら、罰として魔の森の遠征に連れてっても問題ないな。喜べ、お前らの犠牲でお前らが望んだ領土拡大が出来るぞ」と余計な一言を言った」
ん?余計な?と言うことは…
「その一言で貴族は黙ったのだが、後日ソザートン伯爵と一部の貴族は多数の犯罪者と共に逃げ出した」
「え?クリフ殿下の一言でですか?冗談だったんじゃ…」
「うむ、他の者が言っていたならそうとらえたのだろうが…クリフォードは良くも悪くも有言実行。本当に魔の森への遠征を計画しておったのだよ」
「ハハハ…それは・・・」
駄目だろう…だって魔の森ってランクC以上の力がいるよ!貴族なんて蹂躙されちゃうよ!!
「うむ、私も聞いたときに頭を抱えたものだよ…もちろん、遠征計画は白紙にした。そして、逃げ出したソザートン伯爵たちだが、その者等は犯罪者の命を使い、多数のアンデットを生み出して自分を追いやったクリフォードを殺そうと狙い始めた。その中で、街道の一件が起こり、結果的にお主らに助けられたと言う訳だ。今回の件でクリフォードは若干自業自得なので、討伐軍を率いて解決するように先日王命を出した。それに、お主らが参加することになったという流れだな」
「はー…こんなこと言うのもあれですが、クリフ殿下も逃げ出した貴族もバカですね…」
「主殿!!本人の前じゃぞ!!」
と、ティアが忠告してきた。
「はっ!すみませんでした!!」
俺らは勢いよく頭を下げた。
「よいよい、その通りだからな。私が許す。クリフォードもそこまで気にしてはおらんだろう」
いやいや、なんか苦い顔をしてますよ!
「と、まあ簡単に話したが何か質問はあるか?」
「内容は大体判ったので大丈夫です。しかし、気になったことが1つ…アルフォンス様とブラッドフォード様というのは第1王子と第2王子のことですか?」
「おお、そうだ。自己紹介もしてなかったな。私はマレノ王国国王ウィルフレッド・ホワイトウェイ・マレノだ。そして、私の隣にいるのが…」
王様は30~40代くらいで白髪混じりの金髪。服装も合わせると威厳というものが目の前に現れたように感じる存在だ。体格もきちんと筋肉がついているので、柔な王様ではないことが判る。
王様は王子の紹介をしようと、隣にいる男性に目線をやった。
「アルフォンス・レイトン・マレノという。この国の第1王子だ。この度は弟が迷惑をかけて申し訳ない」
王様が紹介する前に第1王子が自己紹介を始めた。
アルフォンス殿下は王様と同じ金髪で背は180cmくらい。引き締まった身体を持っている18歳くらいの青年だ。目が鋭いからちょっと怖いな…
「次は私ですね。私は第2王子のブラッドフォード・オルグレン・マレノです。弟を助けてくれてありがとう。君のアンデットを消滅させた魔法を弟から聞いたとき、新しい魔法だと思い感動しました。後で見せてくれると嬉しいです」
なんかキラキラした目で見られてるな。さっきそんな顔してなかったじゃん!!
ブラッドフォード殿下は薄い紫色の髪に眼鏡を掛けており、どこか知的な雰囲気がある。背は俺と同じくらいで、ローブを着ていることから魔法を主体に活動しているのだと思う。
「で、俺は知っていると思うがクリフォードだ。さっき殿下と言っていたが公の場でなければクリフでいいぞ」
うん、なぜそんなにクリフ推しなんだよ…なんか気に入られることした?
クリフ殿下は茶髪でスポーツ刈りの少年という感じだ。背は俺よりちょい小さいくらい。隙の無い立ち方から見るに王族の中で一番強そうだ。
「・・・私が紹介しようと思ったんだが…まあいい。そして、こっちにいるのが…」
と、王様は王子等とは反対側に居る王妃たちに目線をやった。
「第1王妃のアンジェラ・C・レイトン・マレノよ。第1王子と第2、3王女の母をやってるわ。よろしくね」
表情は柔らかい人だが、雰囲気に鋭さがある。油断のならない人っていう感じだ。赤みがかった茶髪が彼女の存在をより際立たせている。アルフォンス殿下の目はこの人譲りだということが判るな。
「第2王妃のクラリス・F・オルグレン・マレノですわ。第2王子と第1王女の親をやっております。よろしくお願いしますね」
うん、エルフだ。ということはブラッドフォード殿下はハーフってことか。
クラリス王妃は王子よりも青みが強い薄紫色のキラキラした髪をしており、白いドレスが合わさると全体的に光って見える。
「第3王妃ユリアーナ・E・コリント・マレノだ。第3王子と第4王女の母親だ。息子を助けてくれたこと改めて感謝する」
獅子の獣人かな…片目が猫目になっており、雰囲気にも威圧感がある。女性の軍人って感じだ。その雰囲気に赤いドレスを着てると、より危険な香りを出してるようにも見える。王子が強いのはこの人の影響が強いんだろうな。
「第1王女のメロディ・オルグレン・マレノです。よろしくお願い致します。私もブラッド同様に魔法に興味があるので、新しい魔法を見せてくれると嬉しいです」
この人もブラッドフォード殿下も魔法バカなのか?ボブカットされた母親譲りの髪に、優しそうな微笑み…それに加えて紫色のドレスは若干の大人びた雰囲気を演出している。モテるだろうな~。
「第2王女のジャスミン・レイトン・マレノ」
「第3王女のジェシカ・レイトン・マレノ」
「「双子の王女でーす。よろしくね♪」」
本当に似てるな。ワンポイントアクセントのサイドテールが右側にあるのがジャスミン王女、左側にあるのがジェシカ王女と覚えるといいかも。て言うかそれ以外見分けがつかん。2人とも髪の色は母親譲りで雰囲気は天真爛漫って感じだ。
「私で最後か…私は第4王女のエルザ・コリント・マレノだ。兄を助けてくれたこと感謝する…強そうには見えんがな…」
なんか最後ぶつぶつ言ってたな。聞き直すのも失礼か。この人を一言で言うと金色の獅子。ロングの金髪に金色を主体としたドレス、雰囲気が王様に似てて、獅子の耳が付いてるからそう感じるんだろうな。
「・・・私の出番無かったな。まあ、この11人が王族として活動している」
「はー、多いですね。しかし、今思ったんですが、さっきの陛下の話を聞いていると、ブラッドフォード殿下とクリフ殿下はアルフォンス殿下を支えるように動いていますよね?なんでそういう役割になったんですか?」
普通、跡目争いがありそうだけど…
「ああ、それはな…」
「「王様とか面倒だから!」」
ハモったな…第2と3王子。
「自信満々に言うな!!…ハァ、こういうことだ。こいつ等には意欲が無い。こっちは楽でいいんだが…」
と、王様が脱力気味に答えた。
「それと、もうひとつの理由は私が統率力に優れているからだな。もちろん、文武を怠ってはいないが、ブラッドは魔法と経済関係に特化しており、クリフは戦闘に特化しているので王に向いているのが私くらいしかいないということだ」
アルフォンス殿下がさっきよりも根拠のある理由を示してきた。
「は~きちんと役割分担が出来てるんですね」
「そういうことだ。…と、さて準備が出来たみたいだな」
王様が突然変なことを言い出した。
「準備?」
「ああ、君たちの力を見せてもらおうと思ってね」
「はい!?聞いてないですよ!!」
「言ってないからな。なに大丈夫だ、今さら依頼を撤回しようとは思わんよ。魔法の実力は証明してるからな。あとは戦闘力がどのくらいなのかを見させてもらいたいだけだ。部隊のどこに入れるかを考えなければならないからな」
「それはまあ、必要…ではありますね」
変なとこに配置して死なれたり、乱されるのが困るんだろうな。
「うむ、納得してくれたところで修練場へ移動しようか」
王様は皆を促すと、移動し始めた。
俺、保持者持ちですが、手加減しないとヤバイかな~…
次回、手合わせ




