#62 全てを賭けて-all or nothing-
通常視点に戻ります。
7/16:セレスティアの『料理』スキルを削除しました。
「簡単に説明すると、こう言うことね。でも、あなた本当におかしいわよ。ここまで用意した計画がほとんど通じなかったんだもの」
「そりゃ良かった。まだ、死にたくはないからね」
俺はニヤッと笑った…
虚勢くらい張らねーと、怪我が痛ーんだよ!!
…っは~っは~
「ムカつくわね…その顔…」
ドナが苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「実際、余裕だからね。この状態でも、君たち2人くらいは倒せるからさ」
ドナが状況を説明している間に、『人物鑑定』と『天恵眼』で能力の確認は済ませてある。
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名前:ドナ
種族:ヒューマン
年齢:19歳
職業:探索者-ランクF
犯罪歴:詐欺罪-1件、殺人未遂罪-1件
レアスキル
・なし
スキル
・『算術Lv.5』・『物品知識Lv.4』
・『接客Lv.5』・『料理Lv.5』
・『看破Lv.3』・『異常状態耐性Lv.2』
・『性技Lv.4』・『魔力操作Lv.2』
・『剣術Lv.1』・『詐術Lv.3』
魔法スキル
・『無魔法Lv.2』・『火魔法Lv.2』
所有奴隷
・セレスティア
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名前:セレスティア
種族:エルフ
年齢:167歳
職業:奴隷-元探索者ランクC
犯罪歴:違約金未払い-200000モル
レアスキル
・『心眼Lv.6』
スキル
・『弓術Lv.6』・『杖術Lv.3』
・『気配察知Lv.6』・『気配消失Lv.5』
・『看破Lv.6』・『魔力操作Lv.4』
・『並列思考Lv.5』・『接客Lv.3』
・『算術Lv.3』・『異常状態耐性Lv.4』
・『魔物知識Lv.3』・『物品知識Lv.3』
・『調合Lv.3』・『異常状態付与Lv.2』
・『裁縫Lv.1』
魔法スキル
・『無魔法Lv.6』・『水魔法Lv.5』
・『風魔法Lv.4』・『光魔法Lv.4』
所有者
・ドナ
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「ウソね!この奴隷は元ランクCなのよ!!そんな傷負ってるお前なんかに負けるはず…」
「ウソじゃないさ。『キュア』、『リカバー』」
やっと回復できる隙ができた。
俺は膝立ちから立ち上がった。
「なっ!無詠唱!!しかも、『キュア』って…そんな早さで治らないはずよ!!」
ドナが驚愕の表情をしている…が、奴隷の方は最初から無表情で動かねーな。気味が悪い。
「知らんがな…だが、それだけ俺の熟練度が高いということさ」
「くっ…」
「俺はランクCに相当する盗賊のボスを倒している。そして、今の俺は疲れもない。
これで、勝てないことが分かったかい?降参してくれないかな?」
こんだけ余裕を演じれば、諦めてくれるかな?
「ふふ、ふふふ…勝てない?降参?
そんなことで私の憎しみは消えないのよ!!!
力押しが無理なら、こうするわ!!」
ドナは激昂したあと、持っていた短剣で自分の心臓を突き刺した。
「なっ!一体何を…」
突然すぎて、俺は彼女の奇行を止めることが出来なかった。
「本当は…使いたく…なかった、けどね…お前を殺す為に…何でもやる…って決めていたのよ!!
ゴホッゴホッ・・・これは『カース』…『闇魔法』に適性が無くても…使える…自分の命を使った…呪いの魔法…
私が死ねば、発動するわ…」
彼女は咳き込みながらも、説明を始めた。死刑宣告をするかの様に…
「なら、貴女を助ければいい!」
俺は彼女の下に向かおうとした…が、
「む、ムダよ…セレスティア!全力であいつを足止めしなさい!!
ゴホッゴホッゴホッ・・・私が死ぬまで…ね…」
奴隷--セレスティア--が俺の前に立ち塞がり、絶え間無く短剣を振るってくる。
「これで…終わり・・・ゲルト、私もそっちに行くわ…そして、約束を・・・」
ドナは笑っており、何かを呟いていた…が、俺はセレスティアの猛攻を避けている為に、聞き取ることが出来なかった。
「ちっ、じゃあ『スロウ』、『アクセル』!!」
俺はドナに近付こうと『時空間魔法』を掛けた…が、
「『アイスウォール』」
セレスティアが魔法を放ち、俺の進行を遮る。
「ちっ!!」
経路を変えながら進もうとしても…
「『アイスウォール』…『アイスウォール』…『アイスウォール』・・・」
防がれる一方だ。『スロウ』使ってんのに…予知能力でも持ってんのか!?…って、そうか!『心眼』か!!
俺はまず、セレスティアを倒そうと方向転換しようとしたとき…
突然、魔法が消えた…
「なっ!…まさか!!」
「そうじゃ、ご主人様は死んだ。よって、命令は解除されたのじゃ」
今まで何の反応も示していなかったセレスティアが、突然話始めた。
「あんた喋れたのか!?」
表情も見てとれるようになっている。
「ご主人様が「喋るな」、「何があっても表情を出すな」と命令していたのでな…」
「まだ、俺を殺しにくるか?」
「いや、ご主人様が死んだことで、我の所有者がそなたに移っておる。ご主人様を殺せる奴隷などほとんどおらんよ…そんなことをすれば我が死んでしまうのでな…」
「所有者が移る?ご主人様?一体どういう…」
「そんなことより、『カース』の心配をした方がよいのではないかの?そろそろ…」
「くっ!左手が!!」
左手を見ると、手先から腕に向かって肌の色が黒へと徐々に変色し始めていた。
「ご主人様は『カース』の侵食速度が遅いの~。常人なら数秒で全身が黒くなって死ぬんじゃが…余程『異常状態耐性』のレベルが高いのかのう?」
「呑気に話してないで、対処方法があるなら教えろ!!」
「それもそうじゃな。『ディスエンチャント』…解呪魔法で『光と無魔法』の合成魔法じゃ。
魔法のイメージは、黒い呪いを追い出すイメージじゃな。
詠唱は『我、願う。光と理を司る者よ、悪しき呪いを振り払いたまえ』じゃ。
我はこの魔法を使うことは出来るが、如何せん命を使った呪いを解呪するほどの力量は持っておらん。
どうするのじゃ?」
「…判った。・・・ふー…」
俺は精神を統一し、一時的に呪いの痛みを無視する。
「ご主人様?」
心配しているのか、セレスティアが俺に声を掛けてくる。
「『ディスエンチャント』!!」
俺の命を呪いになんかにやるものか!!!!
「なっ!!」
魔法を使った俺に驚いているのか、セレスティアが声をあげる。
左腕の肘に達しそうだった呪いは、白い光に押し返され、徐々に呪いを手先の方に追いやっていく。
やがて、呪いは指先から追い出され、光に包まれて…消滅した。
「・・・よし!!終わった~…」
俺は疲れから尻をつき、
「今度のご主人様は異常じゃのう」
セレスティアは俺を見て若干呆れていた。
こうして、俺と「草原の狼」との戦いは一応の終わりを迎えた。
次回、後始末①
 




