#24 魔性の力
もともとこの話は無かった!!
ただ魔性の力に俺も癒されたかったんや!!
計200話達成です!!
それでは続きをどうぞ!!
「…で、私たちが戦っている間にこのカーバンクルを『調教』したと…」
俺は今、10の目にジト目で責められている…ザクロを腕に抱えながら。
腕に抱えているザクロが怯えているな。
スゲー威圧感だ。
「仕方ないだろ、エルザ!!
こんなに可愛いんだそ!!
倒せる訳ないだろう!!」
プルプル震えているザクロを撫でながら、俺は皆に力説した。
「いや、まあ確かに目の前に出てきたら倒し難いのう…」
「そうね。
正直、私も見るのは初めてだけど、こんなに可愛いとは思わなかったわ…」
「カワイイ…」
「俺は口を挟める立場じゃないが、時と場合を考えるべきだったと思うぞ。
まあ、可愛いのは否定しないがな」
「いや、まあ私も可愛いとは思うが…」
皆が口々に俺の間が悪いと言いながら…いや言ってないな。
皆、全面的に可愛いとしか言っていない。
それにザクロを愛でたそうな顔で徐々に近づいて来ているし…
あと目を爛々と輝かせている人が1人居るが、本人の名誉の為にスルーしておこう。
「なあザクロ、皆がお前と仲良くなりたそうなんだが、触られても問題ないか?」
俺はザクロを顔の前に持ってきて、そう問い掛けた。
――え~…
――今は違うけど、あの人たちさっき怖かったからな~…
あーさっき怯えていたからな。
でも、これから一緒に暮らすんだから慣れてもらわないと。
「ああ、さっきは俺の不謹慎さを怒っていたのであって、ザクロが悪い訳じゃないからそんなに怯えなくても大丈夫だぞ。
それに彼女たちは俺の恋人と仲間だ。
彼女たちが優しいことは俺が保障するよ」
――う~ん…分かったよ。主様がそう言うなら…
――主様、わたしから自己紹介していいかな?
「うん?
いいがちょっと待ってくれな。
皆、イヤーカフで『以心伝心』を使ってザクロの言葉を意識してくれ」
俺がそう言うと、皆は首肯してイヤーカフに意識を集中して『以心伝心』を発動してザクロの言葉に耳を傾けた。
因みに、ギーゼラにも藤色のイヤーカフを渡しているので、問題なくザクロの声は聞こえるはずだ。
渡した時は性能に驚いていたがな…
閑話休題
――えーと、この度主様の従魔になりましたザクロです。
――よろしくお願いします。
ザクロは俺の腕から肩へ上り、頭へと駆け上がった。
そしてペコリと頭を下げると、先ほどの自己紹介を行った。
「「「「「カワイイ!!」」」」」
「うぉ!!」
「キュッ!!」
俺とザクロは皆の大声に驚き、ビクッと跳ね上がった。
「あの~トール?
その子…ザクロを抱かせてくれないかしら?」
「あ、ああ。
ザクロ、どうだ?」
――キュ~…
――ちょっと怖いけど…いいよ。
俺は頭の上のザクロを優しく抱きかかえると、そっとリーンに手渡した。
あ、なんか長くなりそうだから密かに時間経過を遅くしておこうっと…
そこから女性陣の熱狂さが増した。
あの冷静なリーンでさえ、口角が上がる程の笑みでザクロを撫でていたんだから…
特にドミニクは恍惚な表情を浮かべながらザクロを愛でていたな。
ザクロを見た時の表情から伺えるに、相当可愛い物好きなんだろう。
今まで本人はそんな素振り一切表に出していなかったが…
まあその我慢の分と言っては何だが、ザクロはドミニクに撫でられている時が一番気持ちよさそうだったから、ドミニクが頑張って我慢していた分は報われたのかな。
因みにその間、俺は無心で近づく魔物の殲滅を行っておりました。
この空気を壊して皆に怒られるのが怖かったからです…
こういう時の女性の力は凄いですからね!!
一時して皆が戻ってきたのを確認すると、俺はこう切り出した。
「しかし、リーンですらカーバンクルにあったことは無いとは…驚いたな」
「そうね。
カーバンクルは実力的に脅威度ランクC~B程度の力しかないと言われているわ。
では何で、脅威度ランクAに分類されるのか…
それは彼らの隠密性がランクSの探索者をも苦しめるからよ。
私も迷宮に長い間潜っていたけど、その隠密性からか一度も会わなかったわ。
それに彼らは基本的に穏やかな性格と言われていて、偶然に遭遇した探索者が返り討ちにあった程度の情報しかないのよ。
今回は迷宮災害という特殊な状況で、しかもトールという規格外が居たから見付けられたと言っても過言ではないわね」
ふむ、確かにザクロの情報を見る限り、見かけるのでさえ不可能に近いだろうな。
因みにザクロの情報はこんな感じだ。
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ザクロ【カーバンクル】
状態:契約【トール】
特徴:全長40cm程度の魔物。姿は兎がメインで、尻尾が栗鼠の形をしている。その隠密性は脅威度ランクSSに匹敵。基本的に温厚で、群れは作らずに単独での行動を行う。脅威度ランクは戦闘力と穏便な性格を考えるとランクB程度だが、その隠密性によりランクAの上位となっている。額にあるレネットのように真っ赤な宝石を持っていることが特徴的。この宝石は蒐集家に大人気で、一昔前はその希少性の為にその宝石を得ようと争いが起きたほどである。しかし、この宝石は感情を溜めこむ傾向にある為、争いなどの負の感情で満たされると持ち主に不幸を呼ぶ。逆に、笑いなどの正の感情に満たされると持ち主に幸せを呼ぶと云われている。
マスタースキル
・『気配消失』・『異常状態耐性』
レアスキル
・『隠蔽Lv.9』・『天恵眼Lv.9』
・『心眼Lv.8』
スキル
・『魔力操作Lv.9』・『透過Lv.9』
・『気配察知Lv.8』・『看破Lv.8』
・『並列思考Lv.7』・『体術Lv.3』
・『歌唱Lv.3』
魔法スキル
・『無魔法Lv.7』・『地魔法Lv.7』
・『光魔法Lv.7』・『闇魔法Lv.8』
・『時空間魔法Lv.7』
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これで温厚な性格じゃなかったら、探索者はほぼ死亡しているな。
迷宮に入る時は『マップ』や『気配察知』などを常に意識しておきたい所だ。
「さて…ッ!!」
俺たちの空気がそろそろ落ち着いた頃、俺は他の所に動こうと声を掛けようとしていた。
しかし、それは少し遅すぎたらしい。
左端のユニオンに居た『シルフ』が自爆したのを感知したのだ。
「皆、左端の精霊が自爆した!!
緊急事態だから跳ぶぞ!!
俺に掴まれ!!」
俺の少し焦った声に皆は驚くも即座に事態を把握し、急いで俺に駆け寄ってきた。
そして全員が俺を掴んだのを確認すると、『神眼』と『マップ』を使って転移箇所の状況を把握。
人と魔物が居ない場所を確認した俺は、直ぐに『転移』を行った。
「皆、現場はあっちだ!!
俺は少し魔力を回復して行くから、先に行って救助を頼んだ!!」
『転移』を終えた俺は間髪を置かずに森の先を指差すと、皆へ先に向かう様に指示した。
それを聞いた皆は、迷うことなく俺を置いて駆けだした。
流石に連戦後に、多人数の『転移』は効いたな。
膝を着くほどではないが、感覚で合計半分近くの魔力を消費したのが分かる。
だが、そのおかげで救助は間に合うはずだ!!
皆、頼んだぞ!!
次回こそシリアスに…
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