#22 超遠距離攻撃
今回からこの章メインの戦いが始まります。
それでは続きをどうぞ!!
「さあ、始めよう。
準備はいいか、ティア?」
「ああ、準備万端じゃ。
照準はピタリと先頭集団を捉えておる!!
いつでもいけるぞ!!
トールはどうじゃ!?」
俺の問いに応えたティアの目の前には3つのチャクラムが並び、その特性により数km先の魔物を映し出している。
更に矢を番えた弓の前ではあの大会で使っていた『アクセルゲート』を展開したチャクラムが3つ並び、魔物へと狙いを定めていた。
これはティアの為に作った武器の特性によるものだ。
これがその武器の詳細になる。
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金環弓
品質:最高
状態:武器として最高位に属す魔武器である。神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。形態は弓とチャクラムの2つ。弓の形態では通常攻撃状態と超遠距離攻撃状態がある。前者は弓に加えて3つのチャクラムが使用者の眼前にスコープを作り出し、視界を補助する。後者は前者の機能に加えて更に3つのチャクラムが『アクセルゲート』の膜を作り、それを通すように矢を射ることで通常の10倍を超える速度で矢が射出される。チャクラムの形態では一度投げると『飛行』と『気功術』により、狙った場所へ任意に移動させることが可能。
価値:最低1億モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『飛行』・『気功術』
・『分身』・『時空間魔法』
・『無魔法』・『光魔法』
・『闇魔法』
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「こっちも準備万端だ!!
発射までカウントダウンをするぞ!!
10…9…」
ティアは正面に、俺は上空に射線を取り、弓を更に引き絞る。
「…2…1…発射!!」
そしてカウントが0になると同時に俺たちは矢を放った。
まず到達したのはティアの攻撃だった。
発射直後、『アクセルゲート』を通過した矢は『分身』により、百本程の数に増殖。
当然、木にも当たったが、その威力ゆえに易々と貫通して、矢は先頭集団の魔物を襲った。
魔物へと到達した矢は、それと同程度の魔物を射抜き、その半数程度を射殺した。
だが、それでも魔物は止まらない…
そしてティアの矢を追う様に、今度は俺の矢が魔物を襲う。
俺は矢を空に放ち、曲射でティアの狙いより後ろに居る魔物を狙った。
俺の矢も放つと同時に増殖。こちらも百本程に『分身』する。
また俺はそれと同時に矢に『飛行』を掛けていた。
その矢は頂点へ到達すると増加していた自重に従い、魔物へ降り注ぐ。
『飛行』の効果、そして氣で強化していた矢はティアのそれと同等とはいかないまでも、多くの魔物を貫く結果に至った。
先頭、2列目と多くの魔物を仕留めたが、それでも魔物は止まらなかった…
明らかに狂っている。
死んだ魔物、傷付き倒れた魔物を無視して踏み潰しながら、速度を落とすことなく侵攻して来ているのだから…
「ちっ…死など気にも留めないか。
全員準備はいいか!!
予定通りあのおかしな奴らを止めるぞ!!
遠距離組攻撃準備!!
…放てー!!」
既に陣形を整えていた俺たちは、魔物たちが遠距離組全員の射程に入ると、俺の号令の下、一斉射撃を行った。
吹き荒れる風や雷、それを縫う様に放たれる矢の数々が次々と魔物を襲う。
俺も火と地の魔法で『クレイモア』を作り出し、侵攻してきた魔物を罠で亡き者にしていた。
だが、中にはその狂気ゆえにそれらに耐える奴らも居る。
それらは怪我をものともせず、数多の攻撃を抜けてこちらに迫って来ていた。
そして魔物が盾組へと接触した。
「盾組は敵の勢いを殺しつつ、余裕があれば攻撃を!!
回復組は盾組を優先して回復!!
近中距離攻撃組は盾の後ろから攻撃して敵を減らせ!!
出来れば前に出て敵を殲滅!!
遠距離攻撃組は対応出来るなら空の敵も攻撃を!!」
俺の号令の下、皆はそれにそれぞれの言葉で肯定を示し、直ぐに動き始めた。
やはり始めに目立ったのは「力の宴」の面々だった。
良く言えば実直、悪く言うとバカの一つ覚えで防御をほとんど無視して敵を殲滅していた。
時々出て来るランクBの魔物に対しては声を掛けずとも、示し合わせたかのように互いに連携し、倒しているのを見て取れた。
回復組の苦労も分かれと言いたいが、殲滅力があるから一応許しておこう。
それに続くように魔物を殲滅し始めたのは「グライフフリューゲル」のアードルフとロータルだ。
彼らは確か討伐数で勝負していたはずだが、後方からの援護を上手く使い、互いに敵が接敵しないように助け合っていた。
アードルフは『風魔法』で空を駆けて蹴撃で敵を吹き飛ばし、ロータルはそれを見越して素早い踏み込みで拳を振るう。
見る限りはそれを交互に行い、目の前の敵を一掃していた。
「グリーズオグル」と「アストラル」に関しては前の2パーティーとは違い、安定した戦い方を示していた。
後方からの魔法で敵を止め、近接がそのスキに急所を一突きでトドメを刺す。
ランクBなどの強敵には盾組に声を掛け、後衛が作ったスキを更に広げて大技に繋げるなどの工夫が見られた。
特に俺が驚いたのは【二枚盾】オディロンの動きだ。
その二つ名が示す通り、2つの大盾を使い魔物の攻撃を全てと言っていいほど弾き返していた。
だが、俺が驚いたのはそれではない。
彼が敵を止めている時にポリーの弓矢が彼の頬をかすめて敵を討っていたのを見たからだ。
それを見た時はヒヤッとしたが、それが信頼関係の成せる技だと判ると素直に凄いと感じている自分が居た。
後で判ったことだが、彼の【二枚盾】という二つ名は両手に持つ盾の事に加え、その隙間から放たれる様々な攻撃の恐怖を表したものだそうだ。
彼曰く、仲間が居てこそ付いたこの二つ名は自身の誇りになっているらしい…恥ずかしくて仲間には言えないみたいだったがな。
さて、そんな中「日月」の面々はというと、特に目立った動きはせずに各パーティーのフォローをするような動きに徹していた。
『すきと~る』を分からないように行い、トドメを刺しやすいようにするなど様々な行動を執っていたのだ。
だが、それはギーゼラを除いての話だ。
ギーゼラは序盤、十分に連携を意識した動きをしていたのだが、時間を追うごとに突出する気が出てき始め、俺の注意やティアに回復魔法を数度掛けられる始末になっていた。
よって今は俺の隣で反省中だ。
理由は簡単。俺が首根っこ掴んで引き戻してきたからだ。
最初は何故こんなことを、と抗議してきたが、懇切丁寧に『威圧』を以って説明したら、ブルブル震えて反省してくれている。
余談だが、ユニオンメンバーが言うにはこの時だけ何故か魔物の侵攻が弱まったらしい。
「魔物もお前に怯えていたんじゃねーか?」とオディロンに茶化されて笑いのネタにされてしまったのはご愛嬌だ。
俺は皆が魔物を次々と殲滅している間に、指揮をしつつ対応が難しい空への攻撃を重点的に行っていた。
スキルを盗ってもらう為に殺しはせず、ティアたちの近くに落としていたので、割とスピーディーに空の敵を落とすことが出来ていた。
だが、その順調な戦闘も次第に辛い状況に変化し始める。
次回は苦戦…するのかな?
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