#21 各々の動き
一気に防衛戦当日になります。
まずは作戦の整理です。
因みに私事ですが、仕事が忙しくなってきたので文章量が減るかもしれません。
投稿はなるべく土曜日に出したいと思います。
それでは続きをどうぞ!!
4の月9日
所変わって魔の森。俺たち遊撃隊は所定の位置まで移動を完了している。
それまでは特に何も問題が起きず、多少の魔物を倒しただけで比較的安全に過ごすことが出来ていた。
だが、ここからは違う。
ギルドマスター直属の斥候が言うには、予定通り今日の昼には俺たちが居る最前線に魔物が到達するらしい。
嫌でも周りの緊張感が高まってきているのが分かる程、皆の顔が強張っている。
一応昨日から作戦会議や各自でコミュニケーションはとっているが、急ごしらえのユニオンだ。
一度崩れれば、立て直しは俺の手腕がモノを言う。
その為にも皆の情報はもう一度整理しておいた方が良いだろう。
箇条書きにするとこんな感じだな。
「日月」
【心滅の無限者】トール→リーダー・指揮・サポート
セレスティア→攻撃役(遠距離)・回復役兼任
【彩の舞姫】アイリーン→攻撃役(近中距離)・前衛のリーダー
エルザ→盾役
ドミニク→攻撃役(近中距離)
ギーゼラ→攻撃役(近距離)
「力の宴」
【クラッシュハンド】オーラス→パーティーリーダー・攻撃役(近距離)
ゲルルフ→攻撃役(近距離)
フィル→回復役
シュテファン→盾役
ジーモン→攻撃役(近距離)
パトリス→攻撃役(遠距離)・回復役兼任
「グリーズオグル」
【二枚盾】オディロン→パーティーリーダー・盾役
ノーマ→回復役
パンジー→攻撃役(近中距離)
オルガ→攻撃役(遠距離)
ネル→攻撃役(近距離)
ポリー→攻撃役(遠距離)
「グライフフリューゲル」
【空の爪】アードルフ→パーティーリーダー・攻撃役(近距離)
【地の牙】ロータル→攻撃役(近距離)
サブリーナ→攻撃役(遠距離)
カタリーナ→連絡員・攻撃役(遠距離)
ペーター→盾役
ラーエル→盾役
「アストラル」
【星の神官】ノエル→パーティーリーダー・回復役
【サンクチュアリ】ソニア→盾役・回復役兼任
ステファニー→攻撃役(遠距離)
ニコラス→盾役
ナイジェル→攻撃役(近中距離)
スペンサー→攻撃役(遠距離)
こんなもんか。
役割については簡単にしか分けていない。
細かく分けた所でチームワークが拙い状態では、それが枷にしかならないからだ。
とりあえず何かあったら声を上げて情報共有とだけは厳命した。
そうすればベテランの域にいる皆だ。
どうにかフォローは出来るだろう。
因みに連絡員は「グライフフリューゲル」のカタリーナになっている。
彼女は猫の獣人で走力もあり、判断能力も聞いた限りだと優れていた。
候補が居なければドミニクに頼もうかと考えていたが、ランクBともなると優秀な人も多いな。
さて、戦闘時の基本的な動きだが、極めて簡単なものにしている。
先頭は魔物に対して盾役が弧の形で相対し、その後ろに近中距離の攻撃役を配置。
その後ろに俺と回復役。そして最後尾に遠距離の攻撃役だ。
動きとしては盾で防いで魔法と物理で攻撃。危なくなると回復役が動き、戦線を立て直す。
…と、口で言うのは簡単だが、実際魔物の波を完璧に止めるには盾役が少なすぎる。
抜かれるのは確実だろう。
その為、混戦になった際は盾役が円状になり、殲滅しつつも生き残ることを前提に動くことになっている。
で、俺たち「日月」はというと…
折角の大所帯なので、スキルを奪えるだけ奪おうという方針になっている…ギーゼラ以外ね。
どの程度集まるかは分からないが、リーンの保持者くらいは発現ことを祈っておこう。
………来た!!
待機から5時間ほど経った昼ごろ、『マップ』に魔物の先頭集団の反応が現れた。
「迷宮災害の先頭集団を捉えた!!
距離5km!!まだ時間はある!!
全員落ち着いて戦闘準備!!」
俺は魔物を感じ取った瞬間に直ぐに立ち上がり、待機していたユニオンメンバーに指示を出した。
「かーっ!!流石はギルドマスターだな!!
日にちピッタリに魔物が来やがった!!」
横になっていた「力の宴」のゲルルフが俺の指示で跳ね起き、グルグルと腕を回してやる気を漲らせている。
「全員落ち着け、特にゲルルフ。
殺ル気っていうのは分散させるもんじゃねぇ。
敵に愚直にぶつけてこそ効果があるんだぜ。
さ、早く戦う為にも配置に就くぞ!!」
「力の宴」のリーダー、オーラスはゲルルフの様に闘志を滾らせていたパーティーメンバーを抑え、作戦位置に歩いていく。
「うっし、俺たちも行くか!!」
「オディロン、私たちの所まで魔物を通したら折檻ね」
「なんだと!!」
「大丈夫だって!!私たち遠距離部隊の所までにはパンジーとネルがいるんだから」
「そうだったな!!頼んだぞ2人とも!!」
「グリーズオルグ」の面々はオディロンとオルガでコントみたいなことをしながら作戦位置に進んでいた。
コントの出来を見るに、ポリーがフォローをする所までが一連の流れになっているようだ。
これから辛い戦いになるが、この明るさなら最後まで気力は持ちそうだな。
「なあ、どっちが多く魔物を倒せるか競争しねー?」
「あのなぁロータル、これは遊びじゃないんだぞ!!」
「いいじゃないか、リーダー。余興が有った方がやる気も違うぞ」
「いいね。じゃあどっちか負けた方が私たち全員にご飯を奢るということで…」
「グライフフリューゲル」はちょっとした賭け事で士気を高めているみたいだな。
だが、気付けアードルフにロータルよ…
損をするのはお前たちだけだぞ!!
「さあ皆、落ち着いて事に当たるとしよう!!」
「「「「「はい、リーダー!!」」」」」
「確かに強力なパーティーは居るが、頼り切りにはしない!!
私たちは私たちらしい戦いをして絶対に生き残るぞ!!」
「「「「「はい、リーダー!!」」」」」
こっちはなんかスゴイな。
「アストラル」はリーダーを頂点とした統率されたパーティーらしい。
これはこれで心配いらないほどの気概を感じるな。
「さあ、俺たちも遅れずに作戦位置に就こうか!!」
「了解じゃ!!」
「久々に全力が出せるな!!」
「こらこら、2人とも逸らない!!
少しはドミニクを見習いなさい」
「いえ、私などを参考にされても…
お二方の気迫の方が私の参考になるほどですよ」
俺の言葉にギーゼラを除いた4人は姦しい反応を示した。
では、そのギーゼラはというと…
暗い顔で下を向き、拳をギュッと握って何かに耐えているような雰囲気を醸し出していた。
バンッ!!
「ほら、顔を上げて!!」
「ちょっ、トール!!
そんなに強く背中を叩かなくても…」
「心配すんな!!」
「えっ!?」
「俺が誰も死なせないように動く!!
だからギーゼラは俺を信じて動いてくれ。
ギーゼラのパーティーのような悲劇は必ず防いでみせる!!」
「あ、ありがとう!!
俺も…俺も頑張るから!!
でも、皆を守る為にトールが犠牲になるようなことが無いようにな!!」
「当たり前だ!!
俺はまだまだやりたいことがあるんだ。
こんなとこでやられねーよ!!」
俺もギーゼラも言葉には出しているが、この状況で全てを守りきるのは不可能に近い。
それはお互いに理解している。
でも、仲間を励ます為なら嘘も吐く。
それに口に出したことを本当にすれば嘘にはならないからな!!
このユニオンの皆はたとえ何を使っても、守ってみせるさ…ギーゼラの為にも!!
さて、目視できる所まで魔物が到着するな。
気勢を削ぐ為にも予定通り、俺とティアで先制攻撃を仕掛けますか!!
次回は防衛戦開始です。




