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すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第6章 迷宮災害(メイズディザスター)
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#18 ギーゼラの意志

この話は何故か長くなりました。

この半分くらいで終わらせる予定だったのに…


それでは続きをどうぞ!!

 「はぁ…やっと落ち着けたな。

さてギーゼラさん、先ほど言っていた話とはなんでしょうか?」

俺はグレタが用意してくれた紅茶を一口飲むと、早速ギーゼラに話をするよう促した。


今、俺たちは自宅に放置されていた書斎に居る。

ここに住むようになった時に作ったんだが、全く使っていなかった場所だ。

静かに話が出来る所を探していたら、執事のグレタがここを使う様に提案してくれたのでギーゼラを案内した。

でも、まさか最初にお客さんを招くことになるとは思わなかったよ。



さて、話を戻そう。

話を聞くために書斎に来た俺たちは、グレタが用意してくれた紅茶を飲みながらギーゼラの言葉を待った。

そして、ギーゼラが意を決したような表情を浮かべ、話を切り出した。


「俺を…俺を一時的にでもいいから、貴方たちのパーティーに入れてくれ!!」

ギーゼラはガバッと急に立ち上がり、俺に頭の頂点が見えるくらい深く深く頭を下げた。


「ギーゼラさん、頭を上げて下さい。

確かに俺たち「日月」は5人パーティーだから残り1枠空きがあります。

ですが理由も聞かずに仲間に入れようとは思いません。

何故「日月」に入りたいのか、そして貴女が何を成したいのか…

正直に教えて下さい」

迷宮災害(メイズディザスター)発生時の状況を聞いたおかげで、何となくその理由は判っている。

それを考えれば、フォローも出来ると思うので臨時にならパーティーに入れてもいいとは思う。

しかし、ここは本人の口から決意を聞きださなければいけない!!

そうしないと彼女が自分の足で歩きだすことが出来ないと思うから…


「……ぁ……いや……ふぅ、だめだ、俺らしくない。

トールさん…」


「トールでいいよ。話し難いだろう?」


「ありがとう。俺の事もギーゼラと呼んでくれ。

では改めて。

トール、俺はまどろっこしいのが苦手だから単刀直入に言うぞ。

俺に仲間の仇を取らせてほしい!!

トールたちの力を貸してくれ!!」


「…大体予想は出来ていたが、やっぱりそう来たか。

ギーゼラ、応えを言う前にまず聞かせて欲しい。

何を倒せば仇が取れるんだ?

迷宮災害(メイズディザスター)を終わらせればいいのか?

それに何故俺たちを選んだ?

ギーゼラなら懇意にしているパーティーもあったんじゃないのか?」


「…トールの言う通り、俺の仇は迷宮災害(メイズディザスター)という現象だ。

それを止めて初めて俺は俺を助けてくれた仲間に顔向けが出来ると思っている。

だがそれには力が必要だ。個の力だけでは限界がある。

だから臨時でもいいからパーティーに入って戦おうと思っていた。

そんな中、トールたちの「日月」というパーティーが何の縁あってか俺の目の前に現れた。

そしてそのパーティーは強者(つわもの)揃いだった。

確かに懇意にしていたパーティーはいたが、そいつらは俺たちと同等の力しか持たないパーティーだ。

それにそのパーティーは上限の6人全員が揃っていた。

入ろうとしても入れない。

それならば、力のある「日月」に臨時でもいいので入れて貰い、共に戦いたいと思ったんだ。

打算と言われても構わない!!仇を取る為には力が足りないんだ!!」


ギーゼラは膝に置いた拳をギュッと握り、涙をボロボロと流しながら全てを吐き出すように喋っていた。

仲間に任された責任と助けることが出来なかった無力感が、話すことで溢れ出て来たのだろう。


「ギーゼラの想いは本物みたいだが…

どうする皆?

俺の応えはもう決まっているが、まずは皆の意見を聞いてみたい」

俺はギーゼラから他の4人に視線を移すと、そう言って意見を求めた。

その回答次第では俺の考えも改める必要があるかもしれないからな。


「我はギーゼラをパーティーに入れることに賛成じゃ。

聞くと、これは復讐(仇討ち)というよりも自分を納得させる為の行動に思える。

復讐なら無謀な行動に出ているはずじゃが、見ると理性的に行動しておる。

パーティーに入れても大丈夫じゃろう」


「私も賛成だ。

折角助けた命を無謀な突撃で散らしてもらっては困るからな。

私たちがコントロール出来るなら、臨時にでもパーティーに入れた方が良い」


ティアとエルザはパーティーに入れることに賛成か。

まあ理由がギーゼラの無謀な行動を押さえる為って所は、優しさから来るものなのか、仲間意識がまだ低いからなのか…


(わたくし)はどちらでも構いません。

しいて言うなら、急拵(きゅうごしら)えなパーティーで連携を行えるか、という疑問がありますが…

そこはトール様のお力があれば多少は改善出来ると思われます」


「私は正直反対ね。

理由は2つ。1つはドミニクが言った連携が(つたな)いこと。

もう1つはギーゼラの精神状態が判らないからよ。

ギーゼラは魔物と戦えるのかしら?

仲間が魔物に殺されるのを間近で見て、魔物に対して恐怖心が生まれていないかしら?

それで足が(すく)む事があったら、貴女だけが危険に(さら)されるだけでなく、パーティーである私たちにも危険が及んでしまうわ」


ドミニクは反対寄りの保留、リーンは反対だが問題が解決出来ればOKってところか。


「厳しめに言って賛成2、反対2って所かな。

さてギーゼラ、リーンはさっき言った問題が解決出来ているのであれば賛成に回ってくれそうだが、実際の所どうなんだ?」


「………判らない。

逃げていた時は使命感や怒りでそんなこと思わなかったが、落ち着いた今、魔物と対峙したらどうなるかは…」

長い沈黙の末、ギーゼラは顔を伏せてそのように呟いた。

未だに自問自答しているが、答えは見つからないようだ。


「そうか…

なら、『実幻影』」

俺は予告も無く魔法を使い、ギーゼラの目の前にゴブリンとラーベの幻影を出した。


因みに『実』と付いているのは、魔力を用いて一部を実際に触れることが出来るようにしているからだ。

一応攻撃にも使用することは出来る…が、あまり実用性が無いので訓練ぐらいでしか使うことはないだろう。


「なっ!!」

ギーゼラは驚愕の声を上げると、椅子を薙ぎ倒して後方へ跳び、戦闘態勢(・・・・)をとった。


「…うん、大丈夫そうだな」

俺は『実幻影』を解除しつつ、そう呟いた。


「…そのようね。

まあ経過観察は必要だろうけど、魔物に対しての闘志は感じられたから大丈夫でしょう。

連携に関しては、死ぬ気で覚えさせるから、もう私からは何も言うことは無いわ」

一応リーンもギーゼラの咄嗟の動きを見て、パーティーに入れることに納得はしたみたいだ。

(わざ)と憎まれ役を買って出て、不安要素を排除しようとしていたサブリーダーに感謝だな!!


「え?え!?」

ギーゼラは話に付いていけず、戦闘態勢のまま呆けている。


「んじゃ、ドミニクも連携をどうにかすれば賛成でもいいみたいだから、全員賛成と言う形でいいかな?」

全員が頷いたのでギーゼラをパーティーに入れることは決定だな。


「なら明日からの連携訓練は皆に任せたぞ。

場所は用意するから、その時になったら言ってくれ。

俺は壊れそうな防具を修理と武器製作を行う。

頼んだぞ。

…という事だ、ギーゼラ。分かったか?」


「分かるか!!」

ナイスツッコミ!!


「ハハハ、悪い悪い。

取り敢えず一時的にパーティーに入れることは全員賛成してくれたから、今日からギーゼラも「日月」だ。

俺の意見は言っていなかったが、心配事(トラウマの有無)は解決したからギーゼラが「日月」に入るのは勿論賛成だ。

で、もう1つの問題を解決するために、明日から1日で連携に関して詰め込むことになる。

あと、今装備している防具は俺が修理するから後で俺に預けてくれ」


「あー…とりあえず了承を貰えたことは分かった。

だが、連携を1日で詰め込むとはどういうことだ?

時間が足りないだろう?

正直俺は足手まといになりそうだから、フォローに回るか突撃して敵を掻き回すつもりだったんだが…

それに防具を修理するってトールは鍛冶師じゃないよな?」


「連携訓練に関しては明日のお楽しみだ。

それと俺のことは鍛冶も出来る探索者と思ってくれればいい。

そこいらの物よりはいい物が作れるぞ。

期待まではしなくていいが、品質に関しては任せてくれ。

それと物は無いが鞘から察するに、武器は大剣を使っていたんだよな?

そっちも元から作るから待っておいてくれ。

明日までには練習用を用意する」


「???

駄目だ。トールが何を言っているのかほとんど分からない。

だが、騙している訳でもないのはなんとなく判る。

少し不安だが、大人しく待っておくことにするよ」


ギーゼラの困惑した姿を見た女性陣が必要以上に頷いている気がする。

「分かる、分かる」みたいな雰囲気が出ているのだが…

はいはい。俺が非常識という所に共感しているんですね。分かります。

俺にも多少の自覚がありますからね!!

治す気はありませんが…ね!!


その話し合いの後、ギーゼラは女性陣のフォローのおかげもあってゆっくり休み、食後直ぐに寝入ったらしい。

あとは夢という名の心の整理が出来るかどうかだが…それは明日になってみないと分からない。

出来るなら穏やかな眠りになって欲しいが…


さて、俺は俺で今から装備作りに専念しますか!!

そこまで凝った物を作る訳でもないから時間を掛けずに出来るだろう。

さあ残り2日!!

一時も無駄にしないぞ!!

次回は2日後のギルドへ


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