#10 本気の生産と装備品完成
一気に1か月飛びます。
それでは続きをどうぞ!!
4の月1日
「おっし、出来たー!!」
俺は作業台から立ち上がると、大きく背伸びをして大きな吐息を吐きだした。
俺は王城に招待されてから今までの1ヶ月間、皆の装備品を作成することに専念していた。
その作業が今ようやく終わりを迎えていた。
いやー、本当に疲れた!!
生産作業で本気を出したのは久しぶりだったからなぁ。
『並列思考』や『分身』等をフル活用した上で、作業空間の時を魔法で調整して1日で2日の作業が出来る様にしていたし、魔力が余る度にそれを3日、4日と延ばしたりもしたから本当に結構な無茶をやったものだ。
俺が作業部屋を出てリビングに行くと、女性陣は雑談等をしながらそれぞれの時間を過ごしていた。
「あらトール、まだ夕食の時間まで結構あるわよ。
どうかしたの?」
俺がリビングに入ってきたのを見付けたリーンが俺にそう問い掛けて来た。
いつもは食事時にならないと作業部屋を出ないから不思議に感じたんだろう。
「いやいや、しつけの出来たペットじゃないんだから、それ以外の理由でも出て来るって…
今回出て来た理由は皆の装備が出来たからだよ。
ようやく出来たんだから、もう少し労ってくれよ~」
俺が肩を落とす仕草をすると、「ごめんごめん」とリーンが笑いながら謝ってきた。
「それよりも…ようやく出来たのね」
「うむ、待ちわびたのじゃ。何も手伝えんかったのが、少々申し訳なく思うがな」
「ああ、私もトールを少し手伝っただけで、その後は全く関わって無かったから少々悔しいし、申し訳ないとは思う。
だが、心は誤魔化すことは出来ないな!!新しい装備、本当に楽しみだ!!」
「私の装備品まで作成して頂き、申し訳なく思います。
ですが、その力で今より更に精進して参ります!!」
皆が装備の完成に関する思いや決意を語る。
俺はそれを聞き、嬉しく感じながらも皆に完成した装備品を手渡した。
「トール、ありがとう。
前に聞いていた限りだと、装備品のチェックをする予定よね?
自室で着替えて来るから、それまでゆっくりしてなさい。
気付いてないかもしれないけど、貴方ちょっと顔色が悪いわよ」
着替えの為、リーンを先頭に次々と女性陣がリビングから出て行く。
それを見送る度に、他の女性陣からも感謝と労いの言葉を貰えた。
やっぱり人から感謝されるのはちょっとくすぐったいが、良いものだな!!
しかし、皆から口々に体調のことを言われたってことは、相当悪そうだな。
若干徹夜のテンションだから自分ではちょっと分かり難い。
皆がリビングから自室へ移動したのを確認した俺は、ソファーに身を投げ出した。
あ~なんか自覚させられたら一気に疲れが出て来たな。
ねみぃ~…
…
「…ル、トール!!起きて、トール!!」
「はっ!!どうした!?」
俺はリーンの声で跳ね起きると、状況を確認するために激しく首を左右に振った。
「もう!!そんなに慌てなくてもいいのよ。
別に何か緊急事態があった訳でもないんだから…
それより、疲れている所悪いけど装備品の最終チェックお願いね」
隣で俺を揺すって起こしてくれたリーンの言葉で、俺が何で寝ていたかを思い出した。
寝落ちしましたか…
うし、あとちょっと気合を入れてチェックと装備の説明をするとしますか!!
「ああ、分かった。
えーと、まずは…」
「トール、我から良いかの?」
俺が誰からチェックするか迷っていると、ティアが真っ先に声を掛けて来た。
「おう、いいぞ。
じゃあ、俺から見てティアから左にリーン、エルザ、ドミニクの順でチェックと装備の説明をしていこうか」
俺はティアの前に移動すると、質問形式で着心地などのチェックを始めた。
事前にきちんと測定していたおかげもあって、3分程でチェックは終わることが出来た。
ティア曰く、装備品に異常は無いそうなので、俺はそのまま装備の説明に移る。
「さて、ティアの装備だが基本構想は中遠距離の行動を視野に置いて作ってみた。
特徴的なのはその全身を覆うことの出来るマントだな。
材料には金剛鉄羊の羊毛で作った布を用い、それにミスリルを繊維状にして織り込んで魔力の通りを良くしてある。
もしもの時はこれに魔力を流せば盾にすることも可能だ。
加えて『隠蔽』によって隠密行動時にも役立つ代物になっている。
次の大きな変更は靴だな。靴は膝までのアダマンタイトのグリーブに変更しているが、足場を作る機能は変わっていない。
まあ足場を作る魔法が『風魔法』から『時空間魔法』に代わっているから安定性と持続時間は増したかな。
あと『飛行』も付与しているが、これは重量軽減と跳躍力増加の為に付けているだけだから、完全な『飛行』は出来ないぞ。
自分で習得しないと制御が不安定になることは、事前に訓練で確認してもらったから判っていると思うから割愛するな。
その次は頭だ。弓を使うからヘルムなどの目線を遮る物は止めて、イヤーカフにしてみた。
これには常時防御シールドを頭部に発生させる効果があるので、余程の事が無い限り傷を負うことはないだろう。
また『以心伝心』を付与しているから、これで声に出さない意思疎通も出来るはずだ。
ただ、遠距離での意思伝達は無理だということは覚えておいてくれ。
次の服に関してだが、これは皆と選んだ服に裏地を付けただけだから割愛な。
えーと、あとは胸部のプレートアーマーだな。
これは裏に古代竜の革を張ったのと、回復魔法の付与を追加しているから傷を負った時には魔力を流すといい。
それ以外の効果は前の物と同じだ。
最後に武器に関してだが、弓は実際に使いながら説明した方が良いと思うから説明は後日に回す。
ただ、矢に関しては今説明しておくぞ。
矢はオリハルコン製で10本、予備で10本程用意したが、基本は『分身』したものを常時使用してもらう。
10本をまとめて変形させれば小刀になるので、もしもの時はそれで応戦してもらう形になるだろう。
以上が装備品の説明だが何か質問はあるか?」
俺が矢継ぎ早に説明を終えると、ティアは疑問を俺にぶつけて来た。
「うむ、最早凄いとしか言えんな。
では1つ質問じゃが、武器だけ何故後日に回すのじゃ?
今説明した方が後々の訓練の時間短縮になるのではないか?」
「うん、ティアの指摘は間違ってはない。
だがな、今は圧倒的に時間が足りないんだ。
4人分の説明を細かくやっていたら、夕飯通り越して夜中になってしまう。
それに武器に関しては新構想が多い分、実演した方が俺も説明しやすいしね。
だから後回しにさせて貰った」
「なるほどのう。了解した。
質問は以上じゃが、こんな特徴的な武器を手渡されて性能が分からんのは、なんかモヤッとするのう…
仕方ない。防具などの性能を確認しながら、好奇心を紛らわしておくのじゃ」
ティアは手元にあるチャクラムを弓状にした物をみてそう言った。
うん、その気持ち分からなくはない。
4人の中で一番特殊な武器になったからな。
リーンの主要武器が弓だと言っても、誰もこれが弓だとは思うまい。
「ああ、そうしてくれ。
一応この紙に防具の説明を書いておいたから見ておいてほしい」
俺はそう言って鑑定結果を書いた紙をティアに手渡した。
「わかったのじゃ」
「よし。じゃあ、次はリーンだな」
俺はティアの前からリーンの前に移動し、そう言った。
「ええ、よろしくね」
俺は先ほどのティアと同様にリーンに質問を行う。
…うん、こちらも問題は無し。
早速説明に入ろうか。
「それじゃあ、装備品の説明に移るな。
取り敢えずティアと同じ理由で武器と服の説明は割愛するぞ。
まずは頭部だがこれはティアと同じイヤーカフだ。
ただ識別という意味で色をエメラルドグリーンから金にしている。
他の皆にも渡しているが、エルザは緋色、ドミニクは乳白色、俺は瑠璃色になっているから一応覚えておいてくれ。
次にコートだが、これは俺と同じ古代竜の革と白虎の毛皮から出来ている。
腰あたりからサーキュラー状に広がっているから動きを阻害することは無いはずだ。
効果は俺のコートと同じだから割愛するぞ。
最後にブーツだな。これも古代竜の革で出来ている。
脛と爪先、踵にはアダマンタイトを仕込んでいるから格闘戦でも使用できる1品になっているぞ。
効果はティアのグリーブと一緒だから割愛するが、元の重量が軽い分、動きに関してはこちらの方が素早く動けるはずだ。
ティアもブーツにしようかと考えたが、万が一を考えて防御力を上げるグリーブにしている。
これは経験などを考慮しての俺の判断だから、使っていて不満が出た場合は遠慮なく言ってくれ。
以上がリーンの装備品の説明だが何か質問はあるか?」
「そうねぇ…
ブーツの事なんだけど、オリハルコンでの変形機能を付けなかった理由は何故なのかしら?
私はティアと違って敵に近付かれる可能性が高いから武器は多い方が良いと思うのだけど?」
「あ~、それは俺も悩んだんだ。
捻り出した結論としては、ブーツは最低限の武器として使える様に留めておいた方がいいと決めた。
理由は、リーンの基礎的な戦い方がほぼ決まっているからだな。
俺たちよりも先に探索者として活動していたことで近接戦闘での対処法は確立しているはずだ。
そこに余計な機能を付けて判断を鈍らせるようなことは止めた方が良いと、俺は思った。
だからブーツは比較的普通の構成にしたんだ」
オリハルコンが装備者の意思を汲み取って、直ぐに変形出来るのは確かだ。
だが、それでもタイムラグは必ず存在する。
攻防の可能性・選択肢を広げることで、逆にそれに意識を割いて判断が遅れてしまうのを俺は避けたかった。
「なるほど。
確かに、いきなりそれに慣れろって言われても無理ね。
戦闘方法に組み込むなら、私がそれを使っての習熟度を高める時間が必要だもの。
その為に使う時間は正直、今は勿体無いわね」
「そういうこと。
質問はそれで終わりかな?」
「ええ、今は無いわ。
またあったらその都度質問をするから、その時はよろしくね」
「ああ、分かった。リーンもこれを読んでおいてくれ。
さて、それじゃ、次はエルザだな」
俺はリーンにも装備の鑑定結果を渡し終えると、エルザの前へ移動した。
そして俺は三度目の質問を開始する。
次回は残り2人の装備+αです。
以下、装備品の説明です。
トールの装備品(改定版)
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クロノブーツ
品質:最高
状態:装備品として最高位に属す魔武具である。古代竜の革と神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。また、踵を補強している神鉄は用途によって足裏にスパイク、脛部分に棘、つま先に刃を形成することが可能になっている。
価値:最低7千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『時空間魔法』
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オプティマムコート
品質:最高
状態: 装備品として最高位に属す魔武具である。古代竜の革、三叉頭狼の毛皮、神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。火属性と水属性が付与されている為、意思を以って魔力を伝えると防熱、防寒の効果で体の表面を快適な温度にすることが可能。
価値:最低9千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『時空間魔法』・『火魔法』
・『水魔法』
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武極・阿形
品質:最高
状態:武器として最高位に属す魔武器である。古代竜の革、神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。神鉄により手の甲に杭、腕の側面に刃を形成可能。
価値:最低1億モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『時空間魔法』
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武極・吽形
品質:最高
状態:武器として最高位に属す魔武器である。神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。小太刀2刀、弓矢、戦鎚、戦斧、杖棍、十字槍、多節鞭、鎖大鎌、投盾、苦無が記憶されている。
価値:最低1億2千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『時空間魔法』
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守護伝心のイヤーカフ
品質:最高
状態:装備品として最高位に属す魔武具である。神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。また、同種の装備を装着している者との念話が出来るが、遠距離になるほど魔力消費量が増加するので注意が必要である。『時空間魔法』の『断壁』を常時発動し、頭部を保護している。
価値:最低2千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『以心伝心』・『時空間魔法』
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(補足)
トール:瑠璃色、ティア:エメラルドグリーン、リーン:金色、エルザ:緋色、ドミニク:乳白色
(補足2)
トールは額の鉢がねをイヤーカフに装備を変更しました。
ティアの装備
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狩人神のマント
品質:最高
状態:装備品として最高位に属す魔武具である。金剛鉄羊の布、神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。地属性が付与されている為、意思を以って魔力を伝えることでマントが硬質化し、盾にすることも可能。また火属性と水属性が付与されている為、意思を以って魔力を伝えると防熱、防寒の効果でマント内を快適な温度にすることが可能。
価値:最低7千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『火魔法』・『水魔法』
・『地魔法』・『時空間魔法』
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ソアグリーブ
品質:最高
状態:装備品として最高位に属す魔武具である。金剛鉄、古代竜の革の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。また、『飛行』によりグリーブの重量が半分以下に抑えられている。『時空間魔法』の『天駆』を任意で発動し、足下に足場を作る事が可能。
価値:最低7千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『飛行』・『時空間魔法』
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ヒーリングプレート
品質:最高
状態:装備品として最高位に属す魔武具である。ミスリル合金、古代竜の革の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。風属性と時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると身を守り、補助を受けて身体を加速させることが出来る。また『無魔法』の『リカバー』、『ヒール』、『キュア』、『アンチドート』を任意で発動する事が可能。
価値:最低6千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『風魔法』・『時空間魔法』
・『無魔法』
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金環一矢
品質:最高
状態:武器として最高位に属す魔武器である。神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。任意で魔力を流すことで、使用者が命じた本数へ身を分けることが可能。また、この矢が10本集まることで記憶されている小刀への変形が可能。
価値:最低1千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『分身』・『時空間魔法』
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リーンの装備
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エンプレスコート
品質:最高
状態: 装備品として最高位に属す魔武具である。古代竜の革、白虎の毛皮、神鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。火属性と水属性が付与されている為、意思を以って魔力を伝えると防熱、防寒の効果で体の表面を快適な温度にすることが可能。
価値:最低8千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『時空間魔法』・『火魔法』
・『水魔法』
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---------------------------------------------------
ソアブーツ
品質:最高
状態:装備品として最高位に属す魔武具である。古代竜の革、金剛鉄の魔力伝導率、耐久度共に最高。他者を惑わし、本当の姿は不明。見破れるのは神のみである。時空間属性が付与されている為、魔力を伝えると最高の品質まで戻すことが出来る。ただし、魔力消費量はとても多い。また、『飛行』によりグリーブの重量が半分以下に抑えられている。『時空間魔法』の『天駆』を任意で発動し、足下に足場を作る事が可能。
価値:最低7千万モル
付与スキル
・『隠蔽』・『魔力吸収』
・『飛行』・『時空間魔法』
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