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すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第6章 迷宮災害(メイズディザスター)
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#6 トールvsクリフ~限界突破~

さあ、クリフはトールを倒せるのか!?


それでは続きをどうぞ!!

 「はは…マジかよ…」

間近で俺の『魔人衣』を見たクリフは…笑っていた。

あの震えている手足は恐怖では無く、多分武者震い。

戦闘狂ここに極まれり…だな。

俺はお前が怖いよ、クリフ。


「さて、準備は良いか?」

俺は普段通りの口調で言ったつもりだが、どうだ?

正直、まだ2つ掛けはきついものがある。

弱みがあることを見せないようにしないとな。


「ふ~…

ああ、問題ない。

だが、先手は貰うぞ!!

ちょっとしたハンデとでも思って許してくれ!!」

クリフは動かないと負けると悟ったのか、俺の返事も待たず、フライング気味に間合いを詰めて来た。


クリフは己の間合いに入ると、左の剣を右斬上げの形で振るう。

余裕を持ってそれを見ていた(・・・・)俺は、左手で剣を掴み、威力を吸収した上でクリフを剣ごと思いっきり引いた。


「うおっ!!」

当然、力の差は考えていたと思うが、流石にこれは予想外だったのだろう。

驚愕の表情を浮かべたクリフは、つんのめる身体を支える為に左足を思いっきり踏み込んだ。


そんなクリフの脇腹目掛けて俺は右拳を繰り出す。

クリフはそれを察知したのか、左手の剣を手放して一気に後方へ跳び、緊急回避を試みた。


しかし、それは失敗に終わる。

俺の拳がクリフの鎧を掠ったのだ。


さて、俺の『魔人衣』の説明を覚えているだろうか…

覚えてない?

はぁ…じゃあ簡潔に言うが、攻撃時に『疾風』は圧縮空気を、『迅雷』は雷並の電流を相手に喰らわせることが出来る。

…思い出したか?

この効果、クリフがまともに喰らうと一撃必殺くらいの攻撃になるんだが…

これが掠るくらいの攻撃になると、どうなると思う?

正解は…


「かっ…がぁあああ!!」

吹っ飛ばされて、痺れるだ。

言葉にすると「そんなに危険ではないのでは?」と思われるかもしれないが、「5mほど転がって雷に打たれた」と言えばどんな状況なのか分かり易いだろう。

クリフは今、そんな状態だ。


さて、クリフは立ち上がってくるかな?

俺が左手に持った剣を投げ捨てながらそんなことを考えていると、意外にも早くクリフが立ち上がってくるのが見えた。

『剣術』だけじゃなく、『異常状態耐性』も上げていたか。

無粋だからステータスは視ていないが、おそらく以前のLv.6からLv.8以上にはなっていると思われる。

じゃないと、感電したのが短時間だとしても、痺れは簡単に取れないはずだ。


「おい、トール…お前本気で戦っているか?」

クリフは片方だけになった剣を構え、俺を見据える。


「ん?ああ、戦っているぞ。突然どうした?」

俺もそれに対して重心を落とし、如何様(いかよう)にも対処出来るように構え直した。


「いや…ならいいんだが…

実際、さっき剣を掴まれた時、余裕だったような気がしたからな。

あんな対処の仕方されたのは生まれて初めてだったし…」


「ああ、すまない。言葉の解釈を間違っていたみたいだ。

確かに、今の俺は本気(・・)全力(・・)を出している。

だから戦いには(・・・・)余裕があるんだ。

だが、問題もある。対戦相手がお前だから言うが、まだこの技の制御には(・・・・)余裕がない状態なんだ。

う~ん…内にある獅子(魔力と氣)を抑え込んで暴れる方向を制御しながら、戦っていると思ってもらえればいい」


「あ~つまりだ、俺と本気(・・)で戦う為に全力(・・)を出している。

しかし、その全力(・・)制御する(・・・・)ことに苦労していると…

で、制御出来ている(・・・・・・・)間は戦いに余裕がある(・・・・・)

そんな感じか?」


「そうそう!!俺が言いたかったことはそれよ!!」


「なんつーか変なことしてるな、お前」


「仕方ないだろう!!

使うって宣言しちまったし、お前変に手加減すると怒るだろうが!!」

そう、こいつ(クリフ)は戦略的な余裕は許せる奴だが、舐めプは許せないという奴なのだ。

一度何も考えずに只々相手をしていたら怒られたし…

それに反して、さっきの剣での勝負みたいに、俺が意識的に戦い方を試している時には何も言わないと…

何ともめんどくさい奴なのだ。

よって、クリフに変な奴と思われるのは心外なのである!!


「はっはっはっ!!

まあ、本気出してくれてんならいいや。

で、だ…ものは相談なんだが、大会みたいに一撃勝負してくれないか?

ちょっと体力的にギリギリみたいでな…」

クリフはちょっと悔しそうに俺に提案してきた。

自分の不甲斐なさを悔やんでいるのだろう。

クリフの努力は視えているし、恵まれ運の強かった俺に「すまない」という気持ちは持たなくてもいいんだがな。

まあそんなこと言うと、クリフが怒るから言わないが…

だから…


「いいぜ。思う存分付き合ってやる!!」

俺はクリフに応えることで、お前の力を称えてやる!!





~side クリフ~



 トールはスゲー。

俺は大会中、あいつの試合を全部観た。

予選は正直何をしたかさっぱり分からなかったが、本選に出たあいつは俺の想像を超える活躍だった。


特に1回戦からランクSのグレゴワールを倒した時は最ッ高に興奮したな。

あいつは現ランクSの中で最強ではないかと謳われていた人を圧倒しやがったんだ。

その後も様々な武器を使って勝ち上がり、決勝では新たな魔法または魔導具と思われる物を使用して、各国の重鎮には驚かれていたな。


だが、それらがまだトールにとって序の口だったことに、エキシビション戦で気付かされた。

魔人衣(まとい)』だったか…

あれを見た瞬間、向き合ってすらいないのに恐怖で身体が(すく)んでしまったんだ。

(ライバル)として思ってはいけないのに、戦士としての俺はあいつを「怖い」と思ってしまった。


それからだ…約1ヶ月、俺は武術だけに拘らず、『魔力操作』を鍛えて魔力の扱い方を向上させることに努めた。

アレを観たことがきっかけで、トールには武術だけでは追いつけないことが分かったのは良かったと思うべきなのだろうな。

その努力の甲斐あってか、『魔力操作』のレベルはトールと初めて戦った頃と比べ、2つ上昇して一流と呼ばれるLv.7となっていた。


そのおかげもあり、この戦いでは傷を負いながらも戦えていたのだが…

『魔人衣』が出た瞬間から全く敵わなくなってしまった。しかもあいつ大会以上のモノを出してきたんだぜ!!

2属性って…


いや、正直嬉しかったぞ!!間近で強くなっていた友を見られたのは!!

だが、対戦相手としては勝ちが遠のくのは絶望としか言えないだろう!!


俺はそんな気持ちを押さえつけながら攻撃を放つも、剣を掴まれるという離れ業を掛けられる始末。

あの時、咄嗟の判断で剣を手放した俺を自分で褒めてやりたいね。

じゃなきゃ、あの一撃で俺は死んでいたはずだ。

何せ、掠っただけであの衝撃と悲鳴を上げるような電撃だったからな。

だがそのせいで身体は傷だらけ、体力と魔力が消耗していて正直立つだけでも辛い状況だ。

ほんと不甲斐ない。だが、最後まで全力で戦いたいのも事実だ。


だから提案してみた。

あの一撃勝負を…


断られるとは全く思っていなかった。だってトールだぜ!!

案の定、トールは快く賛成してくれた。


そして現在、俺は片割れの剣を右手に握り、左手で剣の腹を摘んで抜刀術の様な構えを取っている。


効率良くトールへと剣を届かせるにはこれが一番いい。

今は大剣時より、重量が軽いので振り下ろしは速さが出ない為、論外。

ならば軽さを活かし、身体の捻りによる剣速の上昇を狙った方が良い。

それに加え、左手で押さえつけている剣を離した時の爆発力を利用してさらに剣速を上げるつもりだ。

更に剣に通す魔力を増やし、魔力の刃が薄く強固になるように剣の周りに形成させて切断力を向上させる。

これで準備は完了だ。


あとはタイミング。

踏み込み、左手からの切り離し、身体の捻り、右手の握り等々…全ての動きを連動させるように動かさなければいけない。

その為には…視覚は邪魔。始まったら閉じよう。聴覚、嗅覚も意識から外すべきだな。


「『オーバーロード』」

俺が準備を終えると同時に、トールがキーワードを呟く声が聞こえた。


…ヤバい…あれはヤバい!!

両腕に濃密な雷と風が渦巻いてやがる!!

あれ喰らったら俺、死なないよな!?

これほど結界が信用ならないと思ったのは初めてだ!!


…ん?トールの奴…

まあ仕方ないか…今は俺が挑戦者だ。

「何処からでもかかってこい!!」と目が言ってやがる…

その言葉に甘えようじゃないか!!


俺は目を閉じ、意識を触覚に集中…

一つ大きく息を吸い、そして吐き出す…

そしてまた吸い………


地面を蹴った。





~side トール~



 ハハハ…やられた。

クリフの動きは完璧だった。


踏み込みからの抜剣。身体の捻りによる剣の速度上昇。手首の動きによる切っ先の速度上昇。

そして一撃に込める思い…

全ての行動と思いが相乗効果として現れ、一瞬だが俺の認識を超えた。


俺の時が止まっているのに剣は俺へと向かってくる…

初めて味わったぜ、この感覚!!

俺は戦闘中だというのに、思わずニヤッと笑みを浮かべてしまった。


その感覚は一瞬だったが、既に剣は眼前まで迫っている。

俺は攻撃途中にも関わらず、顔を傾けて回避を試みた。

だが、遅すぎた。クリフの剣は俺が完全に避けるよりも早く振り抜かれたのだ。

つまり…


俺が斬られたということだ。


だが、俺はそんな些細(ささい)なことは気にせず、クリフへ拳を突き出す。

その拳はクリフの胸を貫き焦し、クリフを壁まで吹き飛ばした。


ある種、俺も限界だったので勝敗を確認する前に『魔人衣』を解除。

残心を終わらせると直立し、クリフの行方を(うかが)った。


ブシュッ…

擬音を付けるならこんな感じだろう。

剣が通り過ぎた頬から目にかけての一筋の切り口から、勢いよく血が噴き出した。


クリフめ…どこの英雄だって感じだよ!!

極限まで追い詰められて限界突破だ!?

視てはいないが、確実に『剣術』がマスタースキルになっているな。

あと『心眼』もLv.9若しくはエキスパートスキルになっている可能性もあるな。


ああもう!!悔しい、悔しいな!!

でも…嬉しさが抑えられねー!!

だって超えて来たんだぜ!!

『魔人衣』を!!今の俺の最強を!!

それがたった一瞬だとしてもだ!!

これが出来るならあいつはまだまだ強くなる!!絶対だ!!

あいつを戦闘狂とか言っていたが…

これを感じちゃぁ、人にどうこう言えないな…ハハハッ!!


俺は斬られた痛みも忘れながら、そんなことを考えていた。


「勝負あり!!勝者、トール!!」

俺が考えに(ふけ)っている中、クリフの状態を確認したルシアンさんがそう宣言する。

どうやらクリフは気絶したみたいだな。




さーて、色々言われるだろうが…

まずはクリフを祝福して、その上で早く「ここまで来い!!」と発破を掛けてやらんといけないな!!

そうしたらあいつは反骨心から、もっと強くなるよう努力するはずだ。


そして俺もクリフを突き放す為にもっと努力しなくちゃな!!

今度戦う時は一撃も貰わずに勝利してやる!!


ま、それは兎も角…

あ~楽しかった!!

次回はアレが出る予定です。

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