#2 魔の森講座
ブクマ550件超え、PV80万アクセス超え、ユニーク8万5千人超え。
いつもありがとうございます!!
今回は半分くらいが説明になってます。
では続きをどうぞ!!
翌朝の30日、俺たちは予定していた通り、ギルドへ向かっていた。
「ふぁぁぁ…ねむ…」
俺は歩きながら、大きい欠伸を1つ吐いた。
「まさかあんなに質問攻めされるとはな~」
「しょうがないじゃろう。何と言ってもあの大会の優勝者が目の前に居たのじゃ。
試合を観ていない者が内容を聞きたがるのは自然なことじゃろう」
ティアが腕を組みながら、ウンウンと頷いている。
そんなもんか…
まあ、俺がもし地球で空手の選手と話す機会があったなら、奴隷たちのように質問攻めするかもしれないな。
そういう心境かと思うと、当然といえば当然か。
さて、俺たちに昨日の夜、何があったのかいうと…
屋敷に戻って一時すると、奴隷たちに怒涛の質問攻めにあったのだ。
まあ女性の奴隷たちは興奮していたものの、比較的自制心があったから良かったんだが…
門番のディーターとトビアスの2人がな…
門番の当番を交代しながら矢継ぎ早に聞いて来るものだから喉が痛いのなんのって。
その質問攻めが深夜まで続いたせいで、俺は今、若干の寝不足になっているという感じだ。
「フフフ。
有名税よ。観念なさい。
それよりも喋っていたら、もう着いちゃったわね」
リーンの言葉を聞いて顔を上げると、確かに王都アクセプタールのギルドに到着していた。
「んっ!!そんじゃ、ジャイルズギルドマスターに会いに行くとしますか!!」
俺は1つ背伸びをすると、身体に気合いを入れて探索者ギルド内へと足を踏み入れた。
…
只今、目の前でギルマスが頭を抱えております。
「まさか1年も経たず依頼を達成するとは…」
「え?」
「本来この依頼は2年以内という期限を設けていたよな。
この期限は依頼を出した各首都のギルドマスターが妥当だと判断した結果だったのだ。
しかし、君たちはその予想を遥かに上回る速度で依頼を達成し、ここに戻ってきた。
本来、最後に君たちが訪れた獣王国では力を図る為にランクSの探索者と戦ってもらうだけ、の予定だったのだがな…
まさか、急遽依頼の内容を変更したにも関わらず、強者が居る大会の中で全員が本選出場、更には優勝してくるとは思わなかったぞ。
正直、正式にランクBなってもらったのが申し訳なるくらいの偉業だ」
そう言い終えると、ギルドマスターが何度目か分からない溜息を、また吐き出した。
「はぁ…何か申し訳なく」
俺は苦笑いしながら頭をポリポリと掻いた。
「いや、謝るな。悪かったのは我々の見通しだ。
それよりも、だ…今回、正式にランクBになったことで魔の森への侵入許可が下りる。
各人のステータスプレートと報酬が来る前に注意点の説明を済ませてしまおう」
ギルドマスターから受けた説明をまとめると、重要な点は3つだ。
1つは小規模でも《魔力溜まり》には気を付けろ、とのこと。
これは変異種の発生が予想される為、魔の森の基準が脅威度ランクCと言っても油断するなという意味だ。
過去にランクCの探索者が油断し、誤って《魔力溜まり》に近付いた為、変異種のランクAに殺害されたらしい。
そのような理由で毎回、魔の森に入るパーティーには厳重注意しているのだそうだ。
2つ目は緊急避難用の転移陣について。
俺も最初、広大な魔の森の情報がどのように共有されているのか気になっていたんだ。
探索者になって初期の頃、それが気になり、調べた結果に驚く情報があった。
魔の森を踏破して迷宮に辿り着いたパーティーが6割以上居る、と書物に書いてあったんだ。
正直、多過ぎると思った。
経由点も無し、補給も無しの状態で往復3ヶ月以上掛かる距離を踏破できるものなのか?
俺には無理だな。
っと、前置きが長くなったが、ここで最初に言った緊急避難用の転移陣が出て来る。
この転移陣があるおかげで、情報が途絶えることなく、ギルドへ伝えられていたらしい。
この転移陣は魔の森の各所に存在しているが、起動はしていない。
未起動の転移陣は特大の魔石1つを消費することで起動し、近くの港の転移陣まで転移してくれるとギルドマスターは説明してくれた。
また、そこは一種のセーフポイントになっており、ギルドが脅威度ランクB~Cくらいの魔物までの攻撃なら防げる結界を張っているので、危ない状況になったら逃げこむようにとも説明してくれた。
まあ、そんなに広くは無いらしいがな…
説明を終えると同時に、ギルドマスターは無属性の特大魔石を1つと転移陣の場所を記した簡略地図を手渡してきた。
本来ならランクCに上がった時に渡す餞別だそうだ。
俺は諸々の過程を飛ばして、やっと魔の森に入れるので渡すのが今になったらしい。
この説明の最後に、転移陣の場所は覚えておくようにとギルドマスターが念を押してきた。
何故と問うたら、「緊急避難時に地図を見る余裕があるか?」と返された。
確かに、そう考えると余裕は無い。
日本の時の様にピクトグラムが避難経路を指し示している訳ではないんだから、地図を覚えて事前に場所を確認してないと森の中だから迷う確率の方が高い。
魔の森に入ったら『マップ』を用いてきちんと把握しておく必要があるな。
さて、最後はステータスプレートの認証についてだ。
これは迷宮の入り口に着いた時の話になる。
入り口近くに石碑があるので、そこに必ずステータスプレートをかざさなければならない。
そうしないと、迷宮に入れないのは勿論のこと、迷宮近くの転移陣と港の転移陣の直通経路が使えない状態のままになるかららしい。
それに加え、迷宮の踏破階数も記されるようになるとのこと。
何故そんな親切設計があるのかは分からないが、便利なので認証しておくようにと言われた。
また、それで迷宮まで辿り着いた事が証明できるので、本来ならランクBの昇格条件を満たしていることをそれで証明して試験を受けられるんだと。
まあ、俺たちは既にランクBだから余談にしかならないがな。
以上が魔の森に入る際の注意点だ。
細かい魔物の情報なんかは自分で調べる様にと釘を刺され、説明は締め括られた。
その説明が終わった所で、ステータスプレートと報酬がタイミング良く受付嬢により運び込まれて来た。
「さて、今、目の前に置かれた物が各自のステータスプレートと今回の報酬の400万モルだ。
報酬に関しては最初に会った頃よりパーティーメンバーが増えているので、1人頭で考えずにパーティー全体での報酬にしている。
あと、アイリーンさんのステータスプレートに関しては、ランクをBに、パーティー名を「日月」に変更しておりますのでご確認下さい」
リーンに対してこの敬語…このギルマスもリーンの後輩みたいだな。
「分かったわ。世話を掛けたわね、ジャイルズ」
「いえいえ、仕事ですので…
それでは、これで依頼に関する要件は全て終了だ。
魔の森での活動、頑張ってくれ。
まあ、先駆者であるアイリーンさんが居るから色々学ぶといい」
「そうですね。
しかし、最初はリーンの力を借りずに調べてみたいと思います。
リーンの力を頼るのはその後の情報共有の時ですかね」
俺がこの様に返答すると、ギルドマスターは姿勢を正し、真摯な目で俺と向き合ってきた。
「いい心掛けだ。
教えて貰うだけだと身に着くものも身に着かない。
自分で学び、理解し、経験し、失敗して初めて己に知恵という実が生る。
教えて貰うならば、絶対に失敗してはいけないことだけにしておけ。
仲間を危険に曝してしまうからな」
ジャイルズギルドマスターはそう言うと、俺を見て軽く微笑んだように見えた。
俺はそれを見て何となく、「お前なら大丈夫だ」と言われたような、そんな気がしていた…
…
俺たちはギルドマスターの助言を胸に部屋を後にした。
予定ではこの後情報収集を行う予定だったので、その足で皆と資料室へ向かった。
資料室へ着くと、俺とティアは魔の森及び迷宮に出現する魔物の調査、エルザとドミニクは魔の森や迷宮での踏破経路や罠などの地形調査を行った。
残ったリーンは以前の知識との誤差が無いかの確認を行った上で、俺たちのフォローを行ってもらった。
やはり情報は迷宮深部に行くほど少ない傾向にあるな。
深部に到達する人数とランクの高い魔物に遭遇する確率が少ないから情報が集まらないのだろう。
それと同様に、魔の森や迷宮への侵入経路も少ないはずだ。
先駆者の情報を元に進んでいる人が大半だろうから、その場所以外の情報は少なめだろう。
休憩を挟みつつ、夕方まで調査してある程度の情報を得ることは出来た。
後は皆と情報共有をして、実践あるのみだな。
…
屋敷に帰ってくると、直ぐに情報共有を行った。
時間も時間なので、夕食を取りながらになってしまったのは致し方ない。
まず行ったのは魔物の話についてだ。
俺たちの集めた魔物の情報では、一般的な魔物の情報しか得ることが出来なかった。
ただ、脅威度ランクCの所にスライムやゴブリンの情報があったことには驚いたな。
ゲームでは最弱の代名詞なのに…
まあ、ゴブリンに関して言えば、単独で動くことが少ない為、総合力で脅威度ランクCになっているみたいだったがな。
ゴブリン単体の脅威度ランクはD以下らしい。
リーン曰く、ランクCの探索者がよく油断して怪我を負う原因がこの2種類の魔物とのこと。
まあ色々語ったが、結論として魔物はその時に随時鑑定し、調査した情報と照らし合わせて対応するという事に決まった。
理由は曖昧な部分が多かったからだ。
「~だったはずだ」や「~のように見えた」などの記述のみで、具体的な特徴や技の威力・範囲の情報が示された情報は少なかったよ。
また、それに伴って魔の森への侵入経路なども『マップ』を駆使して行くことに決定した。
何故かと問われれば、統一性が無さ過ぎたからだ…魔物の情報以上にな。
地図があっても書物によって縮図がバラバラ、経路もバラバラ…
最終的にはエルザとドミニクが匙を投げる形で調査は終了したらしい。
まぁそれでも、転移陣付近は安全性の高さから情報は良く集まっており、使えるみたいだからOKとしておこう。
そんなこんなで有意義とは言い難かった情報共有も終わり。
明日の予定などを皆でゆっくりしながら話していると、夜だというのに訪問者が現れた。
「突然の訪問お許しください、「日月」の皆様。
そして、トール様、セレスティア様、エルザ様はお久しぶりでございます。
初めてお会いする方もいらっしゃるようなので、改めて自己紹介を…
私、王城で執事をやっておりますコンラッドと申します」
その訪問者は玄関先で出迎えた俺たちに深々と頭を下げた。
あ、俺、この流れ知ってるわ!!
あのクリフの突発性お宅招待じゃん!!
次回は3章以来のあそこへ!?




