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すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第5章 魔闘技会開幕
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#32 受け継がれる力、そして決着

獣王戦2話目です。


それではどうぞ!!

 俺は切り札の1つ『神宿刀(しんすくとう)十握剣(とつかのつるぎ)』を掲げ、獣王へと迫る。

一気に間合いへと入り込んだ俺は、間髪を置かず、右の小太刀を左斬上げで振るった。


「っ!!むっ!!」

獣王は一度気合を入れて威圧から抜け出すと、身体を大きく引いて小太刀の軌道からギリギリ逃れることに成功。


拳を握りしめているのが横目で見えたな…ということは、次のタイミングで反撃するつもりか。

だが、俺もこの攻撃だけで終わらせるつもりはない。


振り抜いた捻りを利用して今度は逆の小太刀を右斬上げに振るう。

力の反動を利用した斬撃は、速度が増し、遠心力により射程が若干伸びるという恩恵を受けて獣王へと迫った。

反撃の態勢を取っていた獣王は、アッパー気味のボディーブローを放とうとしていた。

が、俺の2撃目が予想以上に速いことが分かったらしい。

獣王は放とうとしていた拳とは反対の腕を強引に引くことで身体を無理矢理後ろへ逃がし、何とか斬撃を回避。


俺は明確なスキが出来た獣王にすぐさま刺突を放つ。

しかし、獣王は崩れた体勢を立て直す為、一足(いっそく)で大きく後方へ跳んで俺から距離を取っていた。

その為、俺の刺突は虚しく空振り。残念な結果に終わった。


だが、この攻防では更に優勢に立てたな。

何故なら…


カランッ


獣王が装備していた魔鋼製のハーフプレートを斬り落とすことが出来たからな。

2撃目の斬上げがかすっていたらしい。


「……認めたくは無いが、このままでは負けるのう」

獣王が少し悔しそうに呟く。


「何だ?諦めるのか?」

そんな訳ないだろうけど…


「ふん!!馬鹿を言うでない!!

これからワシの奥の手を出すんじゃ!!これで逆転してやるわい!!

さあ、行くぞ!!『緋炎剛体(ひえんごうたい)』!!」

獣王がキーワードを発すると、荒々しい赤いオーラが獣王を包む。

あれだ…界○拳そっくりだ。効果も似てんのかな?


「どうじゃ。これがワシの奥の手じゃ」

ふむ。身体内外の爆発的強化か。

視る限りじゃ内はエネルギー燃焼を上昇させて基準となる運動能力を上げているみたいだな。

それに加えて魔力の強化…さっきの2倍以上の力が出ると見ていいだろう。

外は炎の鎧…いや、補助の為に無の魔力で身体を覆って、その上に炎を形成しているのか。

特にガントレットとグリーブ(脛当)の部分に炎が密集している所を視ると、攻撃に特化するための鎧といったところかな。


「では行かせてもらうかのう」

獣王はそう言うと、先ほどまでとは段違いのスピードで俺に接近してきた。


「しっ!!」

獣王の踏み込みは地面を砕き、放たれた蹴りはゴウッと風切音を鳴らして俺に迫る。

俺は紙一重で避けられるくらいに身体を引き、反撃に備えた。

見切りは成功。

目の前を通り過ぎる蹴りを見つめつつ、今度は炎の影響を調べる。


うん、ちょっと熱いかな。

コートの能力のおかげで火傷するほどではないが、受けるのは避けた方が無難だ。


蹴りの勢いで後ろを向いた獣王。

それを見て斬りかかろうとしたが…危険だと感じ、再度身体を引く。


やはり、誘いだったか。

先ほどの蹴りを上回る速度で回し蹴りを放ってきやがった!!

さっきの蹴りの速度も誘いとか…獣王って結構やり手だな。

流石に戦闘経験では獣王が一歩どころか十歩以上先を行っているから当たり前か。


俺はその後も獣王の連撃を避け続けていた。

時折、反撃とは言い難い斬撃を放つも、勢いの無い振りでは、たとえ『神宿刀(しんすくとう)十握剣(とつかのつるぎ)』を用いたとしても今の獣王自身を傷つけることは出来ず、防具に多少の傷を残すのみに終わってしまう。

それどころか、小太刀が弾かれることで懐へ入るスキを獣王に与える結果となってしまっていた。

その為、軽々しく斬りかかるのは止めて回避に専念。


闘技場を縦横無尽に駆けること約5分。

獣王は疲れたのか、動きが一瞬鈍った。

俺はその間を逃さずにすぐさま跳躍し、大きく間合いを取る。

そして『神宿刀(しんすくとう)十握剣(とつかのつるぎ)』を解除し、納刀した。


「何じゃ、諦めたのかのう?」

獣王はそう言いながらも、構えを解かずに俺を注視する。

本心では俺が諦めていないことが分かっているのだろう。


「んな訳ねーよ。

ただ、このままじゃアンタのスピードに追い付けないからな。

本気を出そうと思ったまでさ」

そう、俺の全力はまだ進化中だ。

トリスタン戦と同じ所で停滞しているはずがない!!


「ほ、ほう…それはまだ本気では無いと…

では見せて貰おうかのう。お主の本気とやらを!!」

おい、動揺を見せるなよ…

威勢が意地にしか見えねーぞ!!


「ああ、俺の今の本気(・・・・)を見せてやるよ!!

魔人衣(まとい)弾焔(だんえん)』!!」

『魔人衣』…これは特定の属性と氣を『融合』して身体へと浸透させ、内部と外部を同時に属性強化する技だ。特徴としては髪や皮膚、目の色が属性を象徴とする色に染まる。今の俺は火属性を使用しているので、髪は紅、皮膚は赤みを帯び、瞳は赤く染まっているだろう。だから獣王の技とは全くの別物だぞ!!

因みにこの技は『魔人』と『武人』以上の保持者(ホルダー)が必須だ。何故なら、『魔人衣』を使う為には勿論のこと、解除するのに身体へ氣を回し続けながら魔力を吸収、又は放出しないと何処かに属性の影響が残り、重度な火傷などの後遺症が発現してしまう。その為、ただ単に『気功術』を発現させただけでこれを使おうとするのは自殺行為となる。


「ぐっ!!……な、なんじゃ、それは!!」

俺が『魔人衣』と同時に本気の『威圧』を使ったせいか、獣王は大きく後方へ跳んで距離を取った。

距離を取っても威圧感に()されているのか、毛を逆立てながら『神宿刀(しんすくとう)』を見せた時と同じ様な台詞(せりふ)を言い放つ。


「ん?姿のことか?

ある男が未完成と言っていた技を俺が完成させたらこうなったんだよ。

だけどな…見た目を気にするくらいなら、もっと他のことを気にしろよ」


「他じゃと…そういえばお主の足下の土、赤いのう。

それにお主が時折、歪んで見える…っ!!」


「気付くのが遅すぎるぞ。

まあいい。それじゃ決着へと入ろうか!!」

俺は一歩(・・)踏み込むと、一気に獣王の懐に入り込んだ。


「なっ!!」

獣王には、いきなり目の前に出現したように見えただろう。

俺がトリスタンと戦った時もそんな感じだったからな。


懐に踏み込んだ俺は間髪を置かず、正拳突きで胴の急所…水月を狙う。

回避が出来ないと悟った獣王は、左腕のガントレットをすかさず間に入れ、防御の態勢を取った。

俺は構わず、拳を突き出す。

そして…衝突。

その瞬間、拳が白い閃光を放ち、それと共に大きな爆破音が会場に鳴り響いた。


気付いたかとは思うが、これが『弾焔』の効果だ。

獣王は攻撃の直前で気付いていたが、俺は身体の表面に高熱の無色の炎を纏っている。

だから足下の土が焼けていたり、周りの空気が歪んでいた訳だな。

で、白い閃光は接触による爆発で放たれた光だ。

この炎の鎧を纏っていると、攻撃時には通常攻撃に加えて爆発の効果が付与される。

また、防御時にも触れた箇所が爆発して自動迎撃するよう設定してある。

この効果が特に活躍するのが近接戦闘だ。つまり今の様な状況だな。

理由としては、ダメージを受けた部分が爆発することで、爆発の威力がそのまま反射ダメージとして相手に向かう攻防一体の技となっているからだ。


しかし自分で考えといて何だが、よくよく考えるとかなり凶悪な技だと思うよ、本当に。

爆発もそうだが、この技はトリスタンの力を前提に作っているので、必然的にトリスタンに劣る獣王の力では破れない。

万が一、この場で獣王が限界を越えて強くなっても封殺出来るだろう。それほど強力なんだ、この技は。


さてその獣王はというと…

あの攻撃で闘技場の壁に叩き付けられていた。

一時は膝を着いて(うめ)いていたが、何とか持ち直したらしく、丁度立ち上がる所が見て取れた。


「ごほっ!!

ガントレット…いや左腕はもう使えんか。

ワシの技で火の耐性は上がっておるはずなんじゃがなぁ…ここまで焦げるとは思わなんだ」

あとで戻るんだろうが、獣王の腕は二の腕半ばまで真っ黒だ。

更に言うなれば、水月周辺も防いだ腕の形が分かるくらい周りが真っ赤に火傷している。


「獣王、このまま何もせずに終わるのは嫌だろう?

ここで提案だが、本選で行っていた時間切れ後の大技の撃ち合い…あれで勝負を着けないか?」


「何じゃ、情けを掛けるのか?

甘い奴じゃのう…」


「情け?何を言っている。

最初に言っただろうが、ぶっ潰すって!!」

俺は若干『威圧』を高めてそう言い放った。


忘れてないぞ…お前が何を言ったのかもな!!


「くっ…ふん!!よかろう!!お主の提案に乗ってやるわ!!」

獣王は圧されて顔をしかめるも、耐えた後にニヤリと表情を変えて、そう叫ぶ。


「審判!!そういうことだ。合図を頼む!!」

俺は遠くで眺めていた審判へ振り向き、合図を頼んだんだが…

何でそんなにボロボロなんだ…顔もぐしゃぐしゃでヒドイ顔をしてるし。

…いや、多分俺のせいなんだろうな。すまん、名も知らぬ審判さん!!


「は、はいっ!!すみません!!

そ、それでは、始めさせて頂きます!!両者とも準備はよろしいでしょうか!!」

何故謝った!!この姿…怖いか?


「ああ、いいぞ」

「構わん、始めよ」

俺たちはそう言うと再度しっかり構えを取る。


「それでは!!始めー!!」

審判が声を裏返しながら叫び、合図を行った。


「ぬぉおおぁ!!喰らえ!!『緋牙咬(ひがこう)』!!」

最初に動いたのは獣王。

両手に纏っている鎧を太い牙に変化させ、真正面から突っ込んで来る。


左腕使えないって言っていたはずだが…囮か?

だが、そんなものは関係ない!!

それすらもねじ伏せる!!


「『チャリオット』!!」

俺は最高速で突っ込みながら、『分身』を用いて抜き手を秒間100発放つ。

相手から見れば抜き手の壁が迫ってきているように見えるだろう。

『魔人衣』と合わさっているので、凶悪性は増し増しだ。

また、この技は避けられても直ぐに方向転換して突っ込むという、相手との根競べを行う技なのだが…今回はそれを気にしなくてもいいだろう。

獣王が逃げることは絶対にないからな。


因みに『チャリオット』とは古代戦車のことだ。

2頭の馬が馬車を引き、その上で人が槍などで攻撃を行うものを昔は戦車と言っていたらしい。

これを選んだ理由としては、攻撃方法が抜き手という点と突進力が戦車以上という点から付けている。


閑話休題


そして決着の時…

俺たちの技が衝突した瞬間は誰も見えていないと思う。

何せ、闘技場が閃光の白で染められたからな。

観えたのは最後の結果だけだろう。

では、何が起こったのか…


俺と獣王の技が衝突した時、まず抜き手が獣王の技を腕ごと掻き消した。

獣王は身体の捻りを駆使して何とか左腕を使っていたが、こっちはそんなこと関係無しに食い破ってやった。

その後『弾焔』の効果が獣王を襲う。

それにより弾かれた獣王は宙を舞い、闘技場の壁へと一直線に飛んでいった。

だが『チャリオット』は壁にぶつかるよりも早く獣王へ追い付き、再度獣王に抜き手の槍を叩き込む。

まともに喰らった獣王は抜き手と爆発の威力により、更に加速して壁に激突。


俺も抜き手が重要な部位…頭や心臓などを貫いたのを確認した為、その場で急停止して獣王の動向を見守ることにした。




「そこまで!!エキシビション戦、勝者は【心滅の無限者】トール!!」

審判の声が閃光の晴れた会場に響き渡る。

あの後、獣王が起き上がることはなかった。

傷が無い状態へと戻っていたことを確認した審判は気絶と判断。

直ぐに判定を出した。


その判定が下されると、何処からともなく一つの拍手が鳴り始める。

どうやら防音の結界は審判の宣言と同時に解除されたらしい。

その拍手は波の様に2つ、3つと徐々に増え…

終いには会場中の人がスタンディングオベーションを行って俺を祝福してくれていた。


ふう…少し恥ずかしいが…

ま、悪くは無いかな。


こうして、魔闘技絢爛大会の全試合が終了した。

やっと大会が終わった…


次回は表彰式などなどです。

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