#31 二つ名は…そして試合開始!!
二つ名決定致しました。
突然の募集にご回答頂き、ありがとうございました。
それでは続きです。どうぞ!!
「トール選手の二つ名は!!
【心滅の無限者】だーーー!!」
ん!?比較的まともか!?
「皆様ー!!お静かに!!
これに選ばれた理由が書かれた書類をギルドから頂きましたので、読ませて頂きます。
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この度、ご提案頂いた案件について決定しましたのでご連絡致します。
結論から申し上げますと、探索者ランクB「日月」のトール様の二つ名は『心滅の無限者』に決定致しました。
理由と致しましては以下の意見が挙げられます。
・試合観て心が折られた(探索者D氏)
・会いたくない…(一般男性K氏)
・あの人、色々出来すぎて怖いんだけど…(探索者V氏)
・戦闘の引き出しが多くて、観ている方は面白かった(一般女性F氏)
・どうやってあの男と戦えばいいのか教えて下さい!!(探索者O氏)
・大会中と分かっていても殺されたと思いました(エルトン)等々…
以上の意見を取りまとめ、先の二つ名が相応しいとギルドは判断。
各ギルドマスターの承認も即決で頂きました。
トール様に関しましては、次回ギルドへお越しの際にカードへ二つ名を追記致します。
お忘れなきようお願い致します。
以上
マハムート探索者ギルド ギルドマスター イェルク・ヘプケン
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とのことです!!
心滅…心が折られるを通り越して滅ぼされるということでしょう!!
無限者…武術も魔法も出来過ぎだったから出来た言葉でしょうね!!
合わせて言うと、【どんなことをしても心が死ぬ目に合うよ】ということでしょう!!
何とも物騒な二つ名が付きましたね!!
あれ!?ということは、獣王様はもう死ぬ運命にある!?」
うぉい!!
色々…そう色々と言いたいが、この2つだけは言わせてくれ!!
エルトン、てめぇー今度戦う時は手加減せずに痛みを与えて倒してやる!!
そして誰かあの実況者に鉄槌を!!俺だけでなく、獣王もバカにしやがったぞ!!
「むっ!!何やら寒気が!!
それでは係員さん!!ちゃっちゃと防音結界も展開して下さーい!!」
あ、逃げやがった!!カンが良いな、あのバカ!!
実況者が指示を出すと、一拍おいて防音結界が展開される。
瞬間、会場の音が消え、獣王の息遣いのみが聞こえてくるようになった。
「さてお主、トールと言ったのう」
結界が展開されたのを待っていたかのように、獣王が話しかけて来た。
あまり意識していなかったから、スルーしていたが、獣王は虎の獣人みたいだな。
威厳のありそうな顎ひげに朱色のガントレットを装備したマッスル老人。
俺が見上げるくらいだから2m近い身長だな。
「…?そうですが、何か?」
「アイリーンはワシが最初に目を付けておったんじゃぞ!!
それを許可も無しに横から掻っ攫ってからに!!」
あぁ!?こいつ、突然何言ってんだ?
「は?言っている意味が分からないんだが?
リーンは自分で俺の所に来て、俺はそれを受け入れた。
それをアンタがどうこう言うのはおかしくないか?」
俺はイラつきながらも、努めて冷静に獣王に話しかける。
「あのぉ…両者とも準備はよろしいでしょうか?」
審判が会話を遮る形で、恐る恐る俺たちに話しかけて来た。
俺はそれに答えようとしたが…
「うるさいわ小僧!!アイリーンはかつて己よりも強い奴が好みと言っておった。
確かにお主は優勝したかもしれんが、ワシはお主みたいな小童なぞ認めん!!
ワシこそがアイリーンに相応しい!!」
ブチッ!!
「おい…いい加減にしろよ…言いたい放題言いやがって…
俺のことをどうこう言うのはこの際構わねー!!
だがな…リーンの意思を無視した言い方をするのは許せね―!!
俺に怒りをぶつける前にリーンにぶつかって行けや!!臆病者!!」
「なんじゃと!?」
俺と獣王が険悪な空気を醸し出している中…
「あの…」
審判が勇気を持って、再度話しかけて来た。
「審判!!待っていてもキリが無いからテキトーに始めて!!」
俺は獣王を殴りたい衝動を押さえながら、びくびくと話しかけてくる審判に怒鳴り付ける様にそう言う。
「ワシはお主を倒し、アイリーンを第2の妃に迎える!!
アイリーンはワシのじゃー!!」
「うるせー!!じじぃ!!リーンは俺の女だ!誰がテメーなんかに渡すかよ!!」
「あーもう!!エキシビション戦始め!!」
俺たちの問答に嫌気がさしたのか、審判が投げやり気味に試合開始の合図を出した。
「がぁあああ!!」
「はぁあああ!!」
合図の直後、叫び声と同時に飛び出した俺たちは一気に間合いをゼロにする。
俺の拳が獣王の脇腹を捉えようとしている中、相手も俺の顔面へ拳を叩き込もうとしていた。
ドゥッ!!
2つの音が重なって会場に響く。
その音が観客の耳に届くと同時に、俺たちはそれぞれ後方に殴り飛ばされた。
初の攻撃は相打ち。お互いに地面に転がることとなった。
互いにダメージはあるものの俺たちは気にすることなく、直ぐに起き上がって構えを取る。
あー…頭が冷えたぜ。
怒りで冷静さを失うとは…よく強化もせず飛び出したよな、俺。
獣王も同じく強化していなかったから良かったものの…
下手すりゃ、グロイこと間違いなしの絵になっていたな。
俺は一つ深呼吸をして、素早く入念に強化を施す。
獣王も正気に戻ったのだろう。同じく強化を行っていた。
仕切り直しだな…
ジャリっと靴が砂を擦る音が聞こえた。観客はこの時点で俺たちを一瞬見失っていただろう。
それほどのスピードで、今度も息を合わせたかのように俺たちは同じタイミングで間合いを詰める。
しかし、今回先手を取ったのは獣王。その拳で再度俺の顔面を狙ってきた。
それを見切っていた俺は首を傾けてそれを難なく回避。
回避と同時に俺は獣王の肘に手を添え、手首に掌底を叩き込もうと動き出す。
獣王は俺の反撃に驚愕の表情を見せ、手首を叩かれる前に腕を引き抜き、後方へ勢いよく跳んだ。
失敗か。腕を折れるかと思ったんだが…
因みにさっきの攻撃はてこの原理を利用した攻撃だ。
支点を肘、力点を手首、作用点を獣王自身と考えればいい。
あれが成功していれば、腕が獣王の重量を支えきれず、力が集中する肘で折れるという状態になっていたはずだ。
俺も師匠にこれ喰らったんだが、避けきれなかったんだよな…
まあ、手加減されていたおかげで腕が痺れるだけに留まったがな。
あの恐怖は忘れたくても忘れられんな~。
閑話休題
後ろへ跳んだ獣王が構えを整えると同時に、俺へ語り掛けてきた。
「お主、決勝で用いた魔法は出さぬのか?」
やっぱり気にしていたか…あれが最強の技と思われているならそう言われると思っていたよ。
「ああ、使うつもりはない」
俺は構えを維持して油断しないよう注意しながら返答する。
「何故じゃ!?あれを用いればお主の勝利は確実ではないか!!」
「あの時は相手が魔法使いだったから使ったんだよ。結果は予想外だったが…
それにこの試合はお前を上回って正面からぶっ潰すことが目的だ。
あいつらを使うなんてもったいないことはしねーよ」
相手の土俵に立って倒さないと、相手を潰すことが出来ないでしょうが!!
今この瞬間なら【心滅の無限者】を素直に受けていいとさえ思っているぞ、俺は!!
「ほう…言ったな、お主。
後悔してもしらんぞ!!」
獣王がさらに身体へ魔力を供給し始める。
それと同時に威圧感も上昇した。どうやらスキルを使ったらしい。
「後悔?しねーよ。
言っただろ!!ぶっ潰すって!!」
俺は素早く小太刀を抜くとある魔法を発動させる。
そう…【現世神】を倒したあの魔法だ。
「『神宿刀・十握剣』!!」
小太刀が神氣を纏い、獣王を越える威圧が小太刀から放たれる。
「っ!!なんじゃ、それは!?」
獣王が一歩後ずさった…どうやら気圧されたようだ。
表情も一変。先ほどよりも幾分か顔が強張っているように感じる。
「何って、アンタを倒す武器の1つさ。
簡単に倒れてくれるなよ!!」
俺は威圧で足が止まっている獣王を目掛けて駆け出した。
さあ獣王、アンタはこれを切り抜けられるかな!?
二つ名はにぼし様の案を採用させて頂き、私の案を+αしたものです。
最初は【邂逅殺】という微妙なやつをつけようとしていたので助かりました。
次回は獣王戦決着です。




