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すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第5章 魔闘技会開幕
169/329

#29 精霊の演武

精霊のキーワード探すの大変だった…


続きです。

どうぞ。

~side 女性陣~


 これは決勝直前、観客席での会話である…


「それでトールは何と言っていたんだ?」

エルザが隣に座るリーンに顔を向けて問いかける。


「取り敢えず初手から『疑似精霊(フェイクスピリット)』を使ってみるそうよ」

リーンは腕を組みながら、若干顔をしかめ、真直ぐ闘技場の中央を見つめている。

朝、トールの次に目の覚めたリーンは、他の皆が目覚める前に今日の試合をどう進めるかを聞いていた。

今はその説明を3人に行っている最中だ。

彼女が顔をしかめているのは、トールの行動により試合内容がトンでもないことになりそうだと感じているからだろう。


「取り敢えずで使うような魔法ではないじゃろうに…」

ティアは驚いた顔をリーンに向けるが、次の瞬間には力が抜けたのか背もたれに身を(ゆだ)ね、天を仰いだ。


「リーンさん、トール様は何体出すと仰っていましたか?」

ドミニクも同様に驚愕するも、次の瞬間には考え込むように口を手で隠し、こうリーンに尋ねた。


「全部よ…11体全部。どう考えても過剰よね~」

そう答えると頬に手を当てて溜息を吐くリーン。


「ぜ、全部ですか!!」

想像以上の答えが返ってきて再度驚愕するドミニク。

無意識に指折り数えているのは、どの精霊がどのような被害をもたらすか考えているのだろう。


「我、水の奴に滅多打ちにされ負けたのじゃが…」

「私は火の奴に盾の上からの攻撃で気絶させられたぞ…しかも一撃だ」

(わたくし)は魔法の撃ち合いで魔法を相殺され続けた挙句、最後は絶妙な力加減で魔法を喰らい、気絶させられましたね」

1人を除いた、3人の女性全てが遠い目をして訓練していた時のことを思い出していた。


「それって明らかに脅威度ランクS以上の代物よね…」

リーンは口の端をヒクヒクと動かしながらも平静を装う。内心は叫びたい程なのだろうが…


「しかし、訓練時に言っていた問題点は解決出来たのでしょうか?

もし…万が一…億が一、プリシラが全精霊の攻撃を防ぎ続けることが出来たのならば、魔力が切れてしまうはずですが…」

ドミニクが思い出したように1つ手を叩くと、自分も知る『疑似精霊(フェイクスピリット)』の問題点を語った。


「さあ、どうなのかしら?

今から始まる試合を観れば分かるかもしれないわね」

リーンがそう言うと同時に会場が熱狂に包まれた。




 「さあ、皆さんとうとう始まりますよ!!決勝戦!!

今、闘技場の中央で向かい合うプリシラ選手とトール選手!!

プリシラ選手は二つ名の由来通り、様々な魔法を魅せ付け、この決勝の舞台まで勝ち上がってきました。

一方、トール選手はランクBでありながら、様々な戦闘方法で格上の選手を(ことごと)く破っております。

この試合、プリシラ選手が格の違いを見せつけるのか!?

それとも、またもやトール選手が格上を破り、大会初のランクB優勝者となるのか!?

皆~!!目ん玉よーく見開いておけー!!決定的瞬間を見逃すなよー!!

そしてっ!!決勝を戦うお2人にお知らせです!!

なんと!!今回の勝者には元ランクSパーティ「王の牙」で【()(こぶし)】こと現獣王のハーゲン・ダウム・ゴート様とエキシビション戦の機会がご用意されています!!

是非、ゴート獣王国最強と謳われる獣王様と戦ってみて下さい!!

更に!!獣王様に勝つと優勝賞品とは別に王妃様が賞品を準備しているらしいですよ!!

楽しみですね!!

是非、この情報を糧として決勝を盛り上げて下さい!!」

実況のバカは毎度毎度、人を煽らないといけない病気にでも(かか)っているのか?

あの後も「万全の医療体制が整っているのでどんな状態に陥っても大丈夫ですよ~!!」とか言っているし…

しかしエキシビションの賞品、気になるな。

おっと、目の前に集中っと…


「両者とも準備はよろしいですか?」

プリシラは審判と目を合わすと1つ頷き、肯定の意を示す。

俺も一言「はい」と言い、プリシラへと視線を戻した。


「それでは、トーナメント決勝戦、プリシラ対トール!!試合開始!!」


「い…「悪いがこちらが先だ」く?」

俺はプリシラの言葉に割り込むようにこう言うと、空中へ魔石を11個投げた。


「現れろ!!『疑似精霊(フェイクスピリット)』」

「『イフリート』」

歴戦の戦士の様な出で立ちで、炎に包まれた男が燃え盛る大剣を持ち顕現。

「『ウンディーネ』」

次いで踊り子の服を着た艶美な女性が鞭を持って現れる。

「『フラウ』」

3体目はドリル状の穂先が付いた槍を持つ男装の麗人。周囲の気温が低いのか足下から腰までが(もや)で隠れている。

「『シルフ』」

4体目は薄いヴェールの服を纏った女性。宙に浮いており、周りには持ち手の無い鏃の様な剣が6本飛んでいる。

「『ヴォルト』」

5体目は戦鎚を持つ全身鎧に包まれた精霊。鎧の周囲で放電が起こり、スパーク音を会場に響かせている。

「『ノーム』」

6体目は土の台座に胡坐をかいている男性の屈強な老人。クロスするように双斧を背負い、腕を組んで瞑目(めいもく)している。

「『レム』」

7体目は弓矢を持った狩人風の女性。3つ光球が肩付近で浮遊しながら回っている。

「『ジェイド』」

8体目はフード付きの黒いローブを纏った精霊。身の丈ほどの真っ黒なデスサイズを杖の様につき、静かに立っている。

「『クロノス』」

9体目はコートを纏い仮面を付けた男性。12枚の正六角形の盾が、背中で時計の針の様に規則的に回っている。

「『ヴァニタス』」

10体目は人型精霊ではあるが全体的に黒い靄が掛っており、両手にガントレットがあることしか分からない。

「『オリジン』」

最後の11体目は5つの透明な水晶が付いた杖を両手に持っている男性。背中には天使のような羽があり、その両目は閉ざされている。


「なっ、なに、これ!?」

プリシラを中心に10体の精霊が半円状に展開した。『オリジン』のみは俺の隣だ。

恐怖からかプリシラは両手で杖を持つと、腰を低くして身構える。


「な、な、な~~~!!!

あれ!!あれ、なんですか!?教えて獣王様~!!」

うるせー!!ここまではっきり叫び声が聞こえるなら観客席は…やっぱり、大多数が耳塞いでいるよ。


「………すまぬ、分からん。

おそらく昨日ドミニクが使っておった魔法と同じなんじゃろうが…

レベルが違い過ぎる!!あれは魔物に置き換えると全個体が脅威度ランクSを軽く超えておるぞ!!」


「ええ~~~っ!!脅威度ランクSゥ!?それが11体ィ!?

た、確か探索者ランクSは脅威度ランクSと1対1で戦って死なずに勝利、若しくは撤退が出来る実力を持っていると認められた者が成れるんでしたよね!?

それが11体って絶望的じゃないですか!!」


その危機的状況…逃げられない状況でランクSはどう動くのか、どこまで出来るのか。

プリシラの本気を見たことが無かったからこそ、今見てみたかった。

俺の参考にはならないだろうが、皆の参考にはなるはずだからな。


「行け!!」

俺がそう命令すると精霊たちが一気に動き出した。


始めに動いたのは『レム』と『シルフ』。

『レム』が弓を素早く引いて矢を射ると、矢が分裂し、数十本の光の矢がプリシラへと向かう。

それと同時に『シルフ』が逃げ場を無く為、上空から突き刺す形で飛剣を落とし、後方への退路を断った。

結果プリシラは横方向への回避、若しくは防御しか取る手立てが無くなった。

プリシラは恐怖で思考が遅れた為、不完全になりそうな防御魔法を諦めて回避の為に魔法を使用。

間一髪、矢を避けることには成功した。


まあ、これは当然だろう。誘いだからな。

因みにこの行動は俺が命令したことではない。

疑似的な意思を持てるようになった精霊たちが己の考えで行っている。

その為に単純な作戦にはなっているが、力と速さが備わっているので効果は十分に出ているはずだ。


次に迎え撃つは『イフリート』と『ジェイド』。

回避したプリシラの下に待機していた2体は己の武器を最大限に使用して攻撃。

『イフリート』は大剣を上段から打ち下ろし、『ジェイド』はデスサイズを横薙ぎに振るった。


この時、俺はプリシラがあの『虚無魔法』の防御膜を張ると思っていたので、この後の行動にちょっと驚いてしまった。

まさかプリシラが『テレポート』を使うとは思わなかったよ。


だが精霊たちには関係のないことだったらしい。

転移位置を『クロノス』が看破すると、移動してくる位置を指で示す。

するとその位置へ『ウンディーネ』の鞭と『ノーム』の斧の投擲が即座に放たれる。


転移直後のプリシラがその攻撃に驚愕し、目を見開いるのが見て取れた。

だが直ぐに気持ちを切り替えたのか、手持ちの杖で迎撃。

次々に放たれる攻撃を杖と脚捌(あしさば)きで(しの)ぐも、直ぐに拮抗は崩れ、プリシラは吹き飛ばされた。


飛ばされたプリシラを追う『フラウ』と『ヴォルト』。

直ぐにプリシラと接敵した2体は槍を突き出し、戦鎚を叩き付ける。

プリシラはその行為を見ていなかったはずだが、攻撃が放たれる前にあの『虚無魔法』の防御膜―『ディナイフィールド』というらしい―を使用し、この攻撃を防いだ。


今大会破られたことのないその魔法…無敵にも思われるその障壁にも臆することなく精霊は即座に対応した。

『クロノス』の盾が急速に防御膜へ接近。

その盾が防御膜を覆う様に徐々に数を増やして結合。直ぐに収縮を始める。

『クロノス』は対消滅を狙い、防御を破ろうとしているみたいだな。

対消滅に関してだが、『虚無魔法』と『時空間魔法』のように魔法は『無魔法』を除いて対となっており、同量のエネルギーを衝突させると消滅するように出来ている。

その効果により虚無の膜は『クロノス』の盾と共に消滅。『時空間魔法』の膜だけが残る結果となった。

だが、それも『ヴァニタス』が虚無の膜が消えると同時に連打を叩き込むことで直ぐに消滅することとなる。


無防備な身を曝されたプリシラは一瞬で防御膜が破られて呆然としていた。

その気持ち分からなくもないが、精霊にスキを与えるのは得策ではなかったな。


最後に動くは『オリジン』。

いや、『オリジン』は初めから動いていた。それこそ俺が呼び出した時から…

『オリジン』が使っていたのは『リンク』…他の精霊の魔力を徐々に集める魔法だ。

この数分の攻防で全属性の魔力が溜まったのを証明するかのように、両手の杖にある計10個の水晶が各属性の色に輝いていた。

その『オリジン』が放つ全属性を集約した魔法…それは『ポッシビリティ・オブ・フォース』。

つまり魔法や物理攻撃に限らず、あらゆる力の可能性を引き出すことが出来るのがこの魔法だ。その為、この魔法に確定された形は無い。

金色の球体が『オリジン』の前に現れると、俺がギリギリ見える速度で光の線が扇状に放たれた。

あれだ…ナウ○カの巨○兵のビームを小型にしたような感じだな。

結果はそれと同様、着弾した所から炎の壁が爆発と同時に発生。

後で聞いた話だと、爆発とその時に出た音の衝撃で会場のみならず、周りの店や民家の窓ガラスや壁などにヒビが出来ていたらしい。


会場は爆音などで気絶者が出て騒然。闘技場内でも炎が消えず、審判がプリシラの安否を確認出来ずに慌てていた。

まあ、俺にはプリシラが爆発を浴びて壁に叩き付けられ、気絶したのを視ていたので勝ったのは判っているのだが…



うん…勝ったのは良いがやり過ぎたなぁ。

補足)

 武器は基本壊されても魔法なので、精霊が倒されない限り、何度でも生成可能。

 ・『イフリート』の大剣:フランベルジュの大剣版。

 ・『ウンディーネ』の鞭:伸縮自在。

 ・『シルフ』の飛剣:イメージはTOZ(テイルズ)の風の神依。

 ・『レム』の3つの光球:防御用。三角形を形成してシールドになる。


次回はエキシビジョンまでは行かないはず…


【募集】

トールの二つ名を#31で発表します。

案がある方は感想に書き込んで貰えるとうれしいです。

2/16の00:00までにお願いします。

理由も書いて頂けると、とても助かります。

2/17までには決めて、18日に次話投稿する予定です。


一応、自分の案はあるのですが…微妙にしっくりこないのです。

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