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すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第5章 魔闘技会開幕
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#27 5色目、そして準決勝第1試合

 エルザと共に皆の下へ戻ってきた俺は現在闘技場内にある選手及び関係者用の食堂に皆と居る。

戻ってきてからの流れを言うと…


お姫様抱っこからかわれる→エルザ慌て、俺無心→からかい終了、エルザ撃沈→試合まで時間が空くよ→よし飯だ→食堂へ(今ココ)


「へえ、最後の防御はそんな魔法だったのね」

料理を待つ間、エルザと俺の試合の説明をしていた。

今丁度、『リフレクション』の説明を終えた所だ。

エルザの試合の説明は既に終えている。


「いやいや、落ち着き過ぎじゃろ!!

『思考加速』に『並列思考』、『時空間魔法』、『心眼』、『異界学』そして『完全解析』…

最後に放った『風魔法』が霞む程、高度な技じゃぞ!?

「日月」の中でトールの次に魔法に習熟しているリーンでも無理難題な魔法ではないか!!」

ティアが小声で叫ぶという高度な技で皆に訴えかけている。

うんうん、周りには話せない内容だからな。上手いぞ、ティア。


「ですがティアさん、トール様ですよ…ありのままを受け入れた方が心の安寧に繋がると思います」


「ティア、ドミニクの言う通りだ。

トールの異常性は今に始まったことではないだろう。

こういうスキルの組み合わせを学んでいるんだと思った方が堅実的だ。

それに話の内容を聞いて、ある程度のことが分かる私たちも、客観的に見ると十分おかしいからな」


「う~む…それもそうじゃな。騒いですまなかったのじゃ」


この頃、扱いがヒドイです。

なるべく自重しているのにこの扱い…


え、自重してないから当然だって?

そ、そんなわけない……

とも言えない状態ですね、皆の話を聞く限り。

すみません。大人しく皆の愚痴を聞き流しておきます。

ええ、直す気はありません。尻に敷かれることを受け入れる所存です。…Mじゃないよ!!


そんなこんなで話している内に料理が運ばれてきました。

メニューはシーザーサラダにシチュー、パンが2切れ…ここまでは良かった。

メインに出て来たのが問題だった。真っ黄色だったんだ。

平皿の上に黄色のソースがこれでもかと広がり、中央部分は横10cm×縦5cm程の歪な長方形が僅かに浮き浮き上がっていた状態だった。


来たよ、コレ…レインボーソースの1つだ。

今まで青、黄緑、紫、赤と食べてきてとうとう5色目か。

何かもうこのソースに呪われているんじゃねーかな、俺!?


まあそれはいいとして兎に角、この料理だ。

中央に何かあるのでフォークとナイフで触ってみると若干の弾力を確認出来た。

多分メインだし、肉か魚だろうと当たりを付け、ナイフ入刀。

問題なく切れて断面を見ると、ミディアムに焼けた肉と判明。俺はとりあえず安堵した。


はい、そこ!!もう食えよ…とか言わない!!

前回の赤で警戒心が上がってんの!!素直に食えるわけねーだろ!!


俺は意を決して切り取った肉を口に運ぶ。

一瞬躊躇(ちゅうちょ)するも、一気に口へ入れて肉に噛みついた。

………うっ………めぇ!!


懐かしい味がして一瞬泣きそうになったぜ。

これテリヤキソースだ。日本が生んだソースだよ!!

いやマジでこの世界で食べられるとはあまり思っていなかったから結構感動しているよ、俺!!


しかし!!美味いのだが言わせてほしい。

ソースが真っ黄色で「照り」焼きじゃねーーーーーー!!

テリヤキってあれだろ、タレを塗って焼いた時に表面に艶が出たから「照り」焼きなんだろ!?

これもう浸ってんじゃん!!

これだけが日本人としてゆる…ゆる…


許す!!


美味いから許す!!美味いは正義!!食えるだけ幸せ!!

…もうこのソースたちについてはそう思うことにしよう。

実際美味しいし。そうじゃないのもあるけど…


俺は心の中での色々な葛藤の末、料理の美味しさで常識を上書きすることを選んだ。

つまり、流します。

ええ、おかわりまでして全部食べ切りましたよ。

は~美味かった。



食休みのついでに、この後の試合について皆と会話を始めた。


「ところでトール、この後の試合だけど貴方はどっちが勝ち上がると思う?」

リーンの質問に対し、皆も興味津々といった感じで俺を見てきた。


「うーん…難しいな~。

…多分、プリシラが勝つ…と思う」


「ほう、なぜじゃ?」


「簡単に言うと手数の多さ。

更に言うなら、シビーユの奥の手はあったとしてもあと1つ2つくらいだから…かな」


「どういうことですか?

試合の後、説明して頂いた通りならば魔法と武術を合わせた技がいくつかあってもおかしくはないと思いますが?」


「そう、多分あるぞ。技はいくつかな。

ただここで訂正しておきたいんだが、俺はドミニクにシビーユは魔法戦士と説明したよな。

だが、もう少し細分して言うならシビーユは魔法使いの戦士(・・・・・・・)になるんだよ。

つまり、魔法と武術がまだ一体化していないということだ。

魔法戦士になるには、まだ『並列思考』とか必要なスキルのレベルが追い付いてないんだと思う。

だってドミニクに放った魔法であれだけ時間を要していたからな。

練習はしているはずだが、色々手を広げた弊害で時間が足りていないんだろう」


「そうか!!

そう考えるとプリシラの方が魔法使いとして()があるから優勢。

シビーユが勝ちに行くなら確実に虚を衝いた武術の攻撃で決めるしかない。

トールが言いたかったのは武術としての奥の手があと1つ2つと言いたかったのだな!!」

エルザが判ったことを示すように手をポンと鳴らし、俺の言いたかったことを説明してくれた。


「その通り。だから勝率は6:4か7:3でプリシラが優勢だと俺は思っている。

一般の探索者は武術か魔法のどちらかを重点的に育て上げるからいいが、シビーユはある意味器用貧乏の道を歩いてきた奴だ。

同じランクSともなると経験値の分、特化型が有利に試合を運べるんじゃないかと思っている。

まあ、シビーユも試行錯誤してオールラウンダーの道を歩んでいるんだ。

俺の想像も出来ない技があるかもしれないし、魔法を防ぐ手立てを持っているかもしれない。

そうなると俺の予想も外れる可能性があるんだけどな」


「そうね。その困難な道の先を行っているトールが言うとその可能性も否定できないわね」

リーンは「フフフ」と笑いながら俺の顔をじっと見つめて来た。


俺は気恥ずかしくなり、バッと目を逸らす。

確かに、俺は器用貧乏を乗り越えた先にあるものを体現しているよな。

そう考えるとシビーユを応援したくなってきた…

さて、これから始まる試合はどっちに転ぶのかな。





もし物語のような展開ならここでシビーユが大逆転劇を起こすのだろうが…

大方の予想通り、プリシラが勝利を収めて決勝へと駒を進めた。


試合内容としては、シビーユが開幕早々『斧鉞乱舞』をプリシラの視界を覆う様に発動。

だがそれは予想済みだったようで、プリシラは無詠唱で巨大な岩壁を構築。難なく防御を成功させた。

同時にその壁はシビーユの接近も防いでおり、動けずに苦い顔をしているのが見て取れた。


と、そんな動けずにいるシビーユに石礫(いしつぶて)が突然襲い掛かる。

プリシラが壁を砕き、出来た石礫を風で飛ばしたようだった。

シビーユはそれに対し、三角柱で自分を覆う様に壁を作り、三角の角をプリシラに向けることで石礫を後方へ受け流す。

つまりは三角の辺に沿って石礫が流れたということだ。


だが、そこに追撃で天から雷が落ちる。

雷はシビーユの障壁に当たり一瞬止まるも、次の瞬間には突き破り雷がシビーユに当たろうとしていた。

その一瞬の間にシビーユは斧を頭上に掲げることで雷を防ぐことに成功。

しかし完全に受けることは出来ず、自分から後方へ跳ぶことで完全な回避を行っていた。


仕切り直し…かに思われていた。

その思惑はシビーユによって覆される。シビーユは着地と同時に『アクセル』に魔力を注ぎ込み、一足飛びでプリシラに接近したのだ。

いきなり目の前に現れたシビーユにプリシラは驚愕するも、即座に『ファイヤーランス』を放った。

振りかぶっていた斧が振られ、炎の槍に激突。両者の間で爆発が起こる。

爆風と共に弾き飛ばされる斧と杖、そして転がるシビーユとプリシラ。

お互いに数m飛ばされると、即座に起き上がり相手を見る。


この時点て有利なのはプリシラ。しかし、先に仕掛けたのはシビーユだった。

『斧鉞乱舞・一閃』…シビーユが手を横に振ると弧月が空間を切り裂いた。

それはプリシラに近付きつつ1つ2つと数を増やし、あと少しでプリシラに当たるという頃には斬撃の壁を構築。

そして接触へと至った。


誰もが決まったと思って魔法の通り過ぎた跡を見てみると、そこには悠然と立つプリシラが居た。

どうやらティアと戦った時に使った防御魔法を使ったようだ。


唖然としたシビーユに次はプリシラの反撃が襲い掛かる。

『スタンドバイスペル・『アトランダムイレイザー』リリース』…そうプリシラが唱えると、シビーユが『時空間魔法』のドームに覆われる。

次の瞬間、黒い線が高速でシビーユを襲った。シビーユはそれを回避。黒い線はドームへと当たり消える。

おそらくあれは『虚無魔法』のレーザー…当たったら無事では済まないだろう。

今度は別の場所から2本(・・)の黒レーザーが異なるタイミングで放たれる。シビーユはこれも回避。だがこの魔法はまだまだ続く。

4本、8本、16本…2の乗数毎に増えていく黒レーザーをシビーユは次々に回避するも、ついに2の6乗…64本になった時に捕まった。

最初の何本かは避けたが1本が足に当たると途端に崩れた。最後は胴体と頭を同時に貫かれダウン。

試合は俺の予想通りプリシラの勝利で幕を閉じた。


それにしてもえげつない魔法だ。

疲れさせる、魔法を使うスキを与えない、徐々に増えていく恐怖…体力や精神を苦しめて倒す魔法。

対人やある程度の思考能力がある魔物にも有効だな。

根本的にどうにか出来そうな俺には効かないが、ティアたちでは喰らえば勝てないだろうな。


さて、回想している内に俺の番が来たみたいだ。

不甲斐無い戦いだけはしないようにしよう!!


そして勝って決勝だ!!

次はトールの準決勝です。

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