表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第5章 魔闘技会開幕
157/329

#17 2人のランクS

鼻炎が治りません…つらい

 闘技場が鳴りやまない喝采に包まれている。

その中に微かに実況者の声が聞こえてきた。


「凄い…ものスゴイ試合だったー!!

だがしかし!!申し訳ありません!!

私の眼で追ない所が多く、実況出来ませんでした!!

でもこれだけは言えます!!

今大会で最も拮抗した、素晴らしい試合だったと!!

…2人ともカッコいい~!!」

おい、最後心の声が漏れてるぞ実況っ!!


まあいい。

それよりも闘技場の熱狂で判る通り、この試合はかなり見応えがあった。

何せ、20分で決着がつかず、双方の技の打ち合いになったからな。


序盤は『斧鉞乱舞』を開始直後に放ったシビーユが優勢の様に見えた。

逃げ場が無いほどに斧が展開されたからな。

だが、眼前に展開された大量の斧に傷を負わされていたにも関わらず、魔導剣の能力を最大限に駆使して何とか切り抜けていたジゼルも見事だった。

そして、『斧鉞乱舞』を切り抜けた直後、ジゼルが取った行動に会場はビックリさせられることになる。


自分に『風魔法』をぶつけて身体を加速させたのだ。

因みに俺はクリフとの模擬戦の時に同じようなことをやったが、きちんと身体の防護はやっている。

だが、ジゼルは身体強化のみ。

正直、よく気絶しなかったなと言いたい。


先ほどのジゼルの機転の結果、そこからは終始近接戦が展開されることになった。

そこから終盤まで拮抗状態が続く。

斧と大剣という大物武器の為、動きや音が派手だったのは面白かったが互いに決め手が出せず決着がつかぬまま、試合時間が20分を迎えた。

そこで審判が止めに入り、一旦戦いは終了。


決着は互いの一撃勝負に持ち込まれた。


この一撃、ジゼルは【一断ち】が示す様に、シビーユを真っ二つに断ち斬る為、大剣を上段に構えていた。

対して、シビーユは斧を上段よりやや斜め置き、袈裟懸けの軌道で斧を振る構えを取る。


そして審判のカウントダウンが始まる。

3の時点で互いに身体を強化し、2でさらに魔力で強化を強めて行く。

1の時、シビーユのみが魔法を発動。斧の刃が一回り大きくなる。俺は魔力の刃が形成されたのを確認した。

そして0で両者同時に己が武器を振るう。


ジゼルは大剣を風で最大加速させる。

対して、シビーユは『斧鉞乱舞』の応用で斧に複製した斧をぶつけて振り抜く速度を上昇させる。

確かに決まれば一撃必殺の威力はあるな。


次の瞬間、闘技場中に撃音が響き渡った。


その結果…

両者の肉体を酷使した一撃は互いの武器が吹き飛ばされるという結末を迎えた。

つまり、引き分け。


この結果を受け、更に会場は加熱する。

そして決着は再度一撃勝負へ…


そう思われた矢先、ジゼルが突然倒れた。

駆け寄る審判に、息を呑む観客。

誰もがジゼルに起き上がってほしいと願っただろう。


だが、ジゼルが再び起き上がることは無かった。


そこで試合終了。

あとで聞いた話だと、試合中に自分を加速させた魔法のダメージが予想以上に大きく、最後の衝撃で背骨や筋肉がボロボロになったらしい。


久々にもっと観戦していたい試合だったのは言うまでもない。

負けはしたが死力を尽くした戦いで格上に立ち向かったジゼル。

彼が今大会、初めて会場を盛り上げた立役者になったのは間違いないだろう。


しかし、シビーユの次の相手はドミニクか。

ドミニクは確実にアレ(・・)使うだろうな。

それをランクSがどう対応してくるのか…


ああ!!楽しみだ!!





 そして次の試合。プリシラとクライドの試合だ。

これも盛り上がった。勝敗が着くのは早かったがな。


初手はクライドが取った。十全の力でではないが、素早く矢を放ったのだ。

しかし、相手はここまで勝ち上がってきた猛者であり、ランクSだ。

プリシラは動揺せずに杖で矢の側面を打ち、危なげなく防御を成功させる。


次いでクライドは相手に主導権を握られるのを嫌がったのか、接近しつつ細かな単発魔法を連発して牽制を行う。

だが、これも冷静に対処される。

プリシラは即座に1回戦で見せた多重シールドを展開して全てを防ぎ、後方に下がって反撃の機を狙う。



そして次の瞬間、いきなり空から閃光が落ちてきた。



一瞬にしてクライドはその閃光に貫かれ、光に飲み込まれるように消えていく。

時間にして数秒。

光が消えるとそこには黒焦げのクライドが気絶して倒れていた。

それにて試合終了。


突然のことに誰もが驚き、会場が静寂に包まれる。

しかしそれも束の間、堰を切ったように拍手と称賛の嵐が会場中に吹き荒れ始めた。

その嵐はプリシラが退場するまで止むことは無く、その熱狂は次の試合が始まろうとしている今でも続いている。


【魔法の書】プリシラ…

注意して観ていなかった俺も悪いが、魔法の発動タイミングが分からなかったことには驚いた。

保持者(ホルダー)になった俺でも分からなかったのならば、クライドは何故負けたのかさえ分からないはずだ。

恐怖だな…


知っておくべきだろう。


俺は即座に『過去視』を発動。

魔力消費は大きいが、時間が経つと更に多くの魔力が必要になる。

今の内に視ておいて損はないだろう。




…視えた…判った…だが…

これはとんでもない魔法だな。


クライドを貫いた閃光。

これ自体はそこまで難しいとは思えない魔法だ。

上空に透明度の高い氷の集光レンズを数十個並べて、レンズに集まった光を更に大きな集光レンズ1点に収束させ射出。

『融合』、『算術』、『水魔法』、『光魔法』、『時空間魔法』が一流程度で使える技をプリシラは使っていた。

正直ランクAでも詠唱があればどうにか使えるだろう。


だが、それの発動を隠蔽した方法が問題だ。

これを発動する前、後方に下がる寸前にプリシラはこう呟いていた。

「『スタンドバイスペル・『サンピラー』リリース』」…と。


待機呪文…

『時空間魔法』を使用した魔法だが、難易度は最高難度と言ってもいいだろう。

前提条件として、待機させる呪文は発動出来る魔法(もの)でないといけない。

まあ、当たり前と言えば当たり前だな。


そしてこの魔法、解き放つのは簡単だが、待機させる条件付けがとんでもなくややこしい。

まず『スタンドバイスペル・『(魔法名)』チャージスタート』とキーワードを唱え、魔法のイメージを開始する。

この時、魔法が無詠唱で発動出来る魔法であればイメージのみで問題は無い。

しかし、詠唱が必要な魔法であれば『並列思考』の容量を1つ潰して唱え続ける(・・・・・)ことが必要になってくる。


次に、待機させる魔法のイメージは詳細に条件付けしなければならない。

発動の位置、発動時間、威力、消費魔力、効果範囲等々…

まあ、決める条件が多ければ多い程、素早く威力のある魔法が発動出来ると思ってくれればいい。


今回の魔法はさっき挙げた5つの条件は確実に入っていると思うが、特に発動位置の設定が難しかったはずだ。

手から前へ一直線に発動するのであれば設定は簡単だが、今回は上空から真下へ点の攻撃。

どう考えても相手を照準にするのは難しい。

そこでプリシラは一番簡単な自分(・・)を目標として魔法を設定した。

だから後方に下がる前にキーワードを唱えたのだ。

自分が下がれば相手は前に、自分が止まれば相手も止まる。

試合中の駆け引きを利用して相手を元居た自分の位置まで誘導する技術と度胸…俺はこれに驚愕した。

戦いの中で光るセンス…それが判ったときのこのゾクゾク感…最高だね!!


待機魔法の最後の仕上げとしては、『スタンドバイスペル・『(魔法名)』チャージエンド』と唱えれば準備は完了だ。

プリシラが魅せたのは『サンピラー』のみだったが、駆け引き次第では色々な待機呪文があったはずだ。

様々な種類の魔法を瞬時に発動出来る者…【魔法の書】か。

結構ピッタリな二つ名ではあるな。


次にプリシラに当たるのは次の試合の勝者、カミラかティアだ。

ティアが当たるのならば…いや早計かな。

ティア…いや皆にこの事を教えるかは全員が揃ってから聞くか。

自分の力のみで戦いたいのであれば今教えるのは不味いかもしれないからな。



さて、そろそろティアの試合が始まりそうだ。

1回戦のような変な試合にはならないはずだが、どうなることやら。

次こそはティアの2回戦入れると思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ