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すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第5章 魔闘技会開幕
155/329

#15 【破壊の穿孔】vs【破壊の穿孔】

作者は武道の経験はほぼ0です。

戦いの描写は難しい!!


では、続きをどうぞ。

「それでは、トーナメント第1回戦第16試合、トール対グレゴワール!!試合開始!!」

開始直後、俺たちは互いに身体を強化して間合いを詰めた。


初手はグレゴワールの戟での突き。

俺も相手に合わせるように真似(・・)をして、突きを放つ。

その結果、穂先の先端同士が激突し、甲高い音を闘技場に響かせて互いの武器が弾けた。

うん、狙い通り。上々だな。


グレゴワールは驚愕の為か、一瞬動きが止まったが、弾かれた勢いをそのままに1対の月牙で薙いできた。

俺も同様に十字槍で薙ぎ、意図的に十字の先端を月牙の刃に当て、再度武器を弾く。


よし!!

初手よりも対応速度のズレが減ってきたな。

身体が慣れてきたってことだろう。

この調子で行ってみようか!!


この状態では埒が明かないと思ったのか、グレゴワールは早々に一撃の重みを捨てた。

転じて突きや斬り付けなどを用いた連撃で手数勝負に移行する。


左肩への突き、太ももへの斬り付け、戟を回転させて石突で鳩尾への打突、最後に顔面への振り下ろし。

『未来視』で視ると、この形が一番可能性の高い攻撃の流れだな。

では未来が変わらない内に、誘導(・・)して全部同じ型で弾き飛ばしますか!!


因みに、『未来視』を行うのに何故誘導と言ったかだが、簡潔に言うと『未来視』も万能では無いということだ。

1秒先には攻撃の候補が数個だったものが2秒後には倍以上に増えることもある。

だから、俺が動いて未来への道筋を絞らせなくてはいけない。俺としては出来れば確定まで持っていきたいがな。


さて、まずは穂先を少し下げて左肩を狙ってもらおうか。





 「…一体何が起こっているんだー!?

いえ、やっていることは分かります!!だが、どうやっているのかがさっぱりだー!?

何故、同じことを同時(・・・・・・・)に出来るのでしょうか!?」


「ありえん…ありえんぞ!!

明らかにグレゴワールと同じ動作をほぼ同時(・・・・・・・・・)に行っておる!!

ランクSとかそのような領域ではない!!レベル差は歴然じゃぞ!!

あ奴は一体なんなのだ!!」


実況者と解説者は驚愕し、観客は息を呑み静まりかえっている。

闘技場に響き渡るは絶え間なく武器が弾ける音。


勝負という名の稽古は数分経った今でも続いている。


しかし…


「おーっと、グレゴワールが大きく後ろに跳んだ!!

一体どうしたんだ!!」


「体勢を立て直すつもりじゃろう。

今の流れは確実にトールが持っておる。

流れを引き戻す次の一手を打つつもりじゃな」

だろうな。

ここから【破壊の穿孔】の本領が発揮されるはずだ。


『未来視』でも先の展開がイマイチ読めない。

可能性が多過ぎるっていうのも頭が痛いな。


「次は本気を出してもらおうか…

行くぞ!!」

おお!!初めてグレゴワールの言葉を聞いたぞ。

無口な人が突然話すと、何故かちょっと感動するのは俺だけだろうか…


おっと、周囲の風がグレゴワールの戟に集まっているな。

予選で観たアレが来るか!!


「『スパイラルチャージ』!!」

グレゴワールがキーワードを唱えると戟に風の渦巻きが生成され始め、その渦はグレゴワールを覆うまでに拡大した。


ふむ、渦のせいでちょっと遠近感が狂うな。

予選を観るに、これから来るのは突進だろう。

遠近感が狂うとスピードが分かり難くなるから厄介だ。


「『疾風螺旋槍』!!」

だからこれも真似てみた。

独自のキーワードにしたのはちょっとした反抗だ。


グレゴワールは俺の状態を意に介さないまま、突進を敢行。

それを『神眼』で確認すると、俺も同様に突進した。

ただし、今度は攻勢に出る為に相手以上(・・・・)のスピードで、だがな。


そして技の間合いに入ると、グレゴワールは全身のバネを使い、さらに戟を加速させた。

あのスピードの中で正拳突きを行う様に片手で戟を突き出して来るとは…流石だな。


俺もそれに応えるように同じ動作を行い、十字槍を突き出す。

瞬間、渦の中心と中心が激突し、ドンッという大きな音と暴風が闘技場全体を襲った。


グレゴワールがどうなったかは舞い上がった砂により、目視では分からない。

スピードを増加させていた為、今回の接触では俺が勝ちだ。

吹き飛ばした感触は今もこの手に残っている。

よく見ると、俺の前方には風で蛇がのたうちまわった様な深い窪みが風により形成されているのが判る。

この窪みがグレゴワール側にあるということは、相当なダメージを負っているはずだ。


…砂煙が晴れるのを待つのは面倒だ。吹き飛ばそう。


俺が魔法で砂煙を吹き飛ばすと、グレゴワールは膝を突いた状態で立ち上がろうと試みているところだった。

直ぐに立ち上がれない程のダメージは入れることは出来たみたいだ。

しかし、武器が見当たらないな。


戟は…あった。グレゴワールの後方、闘技場の壁際に落ちているな。

ふむ…


今回の戦い、短い間だったが基本的なことを学ぶことは出来ている。

あとは俺の戦闘スタイルに合わせて型を詰めていく方がいいだろう。

となると、もう決着を付けるか?


「やっと確認が取れたぞー!!

トール選手、煙吹き飛ばしてくれてありがとう!!

さあ観客の皆さん、ご覧ください!!

優勢なのはトール選手です!!

グレゴワール選手は膝を突き、相当なダメージを負っている模様です!!

武器も吹き飛ばされたのか持っていない状況!!

グレゴワール選手、この状況で試合続行可能なのか!?」

おっ!?俺が悩んでいる内に、グレゴワールが動き出したな。

仁王立ちになった。何をするつもりだ?


「トールと言ったな。お前に問おう。

何故私の真似ばかりしていたのだ。

お前程の力があれば私など最初の数手で倒せていたはず。

何故だ!!」

あ~やっぱり来たか、この質問。

あんな戦い方していたら、そりゃ侮っているとか遊んでいるとか思われても仕方ないよな。

きちんと答えますか。


「貴方を侮っているように見えていたのならば謝ります。

すみませんでした」

俺は頭を下げて謝罪をし、話を続けた。


「何故真似をしていたか…

それは今回の戦いで貴方の戟使いを学ぶ為です。

貴方はこの武器でランクSまで昇ってきた実力者。

槍、戟を習熟する為には打って付けの相手でした」


「今である必要があったのか?」


「はい。本気の貴方と戦い、応用も学びたかったので…

最高の使い手と本気で戦えるこの場を糧にしよう、そう思いました」


「確かに模倣は訓練の手始めではあるからな。

しかし、この様な場で行うとは…

傲慢なのか、頭がおかしいのか」


「ハハハ、若干自分でもそう思っています。

でも、やらなければ強くなれなかったのも事実です」

的確なツッコミに俺は乾いた笑いを返した。

実際、今回初めて行った誘導も『詐術』スキルのおかげで効率よく出来ることが証明出来ている。

それに、感情のコントロールも『無表情』が有用であるとも判った。

今回の戦いは十字槍の扱い以外にも学ぶことは多かったように思う。


「…空気が緩んでもスキは出来んか。

それに今なら判るが、先ほどの打ち合いも私を誘導していたな。

…撤回しよう。お前は傲慢なのではない。

己の力に自信があると見た。

私相手にその自信…どうやって身に着けた?」


「それは…

貴方よりも強い人と死合って勝ったんですよ。

そのことがなければ、こんな真似出来なかったでしょうね」


「私より強い奴か…

聞いてみたい気もするが、お前が辛そうなので聞かないでおこう。

しかし、そうであるならば私が勝てそうにないと思うのも仕方がないことか…

正直、何をやっても返されそうで決め手が見つからん。

……そうだな。

次の一撃で決着、としようではないか。

その時に『スパイラルチャージ』を昇華させた技を出してはくれんか?」


「昇華?どういうことですか?」


「なに、お前…トールなら先ほど『スパイラルチャージ』を瞬時に模倣したように即興で出来ると思ってな。

トールは今回私から戟の使い方を盗んだ。

私にも価値のあるものを盗ませてはくれんか?」

グレゴワールはフルフェイスの兜を取ると笑いながらそう言った。

赤黒い肌に輝く緑髪の爽やかイケメン魔人さん…

勝負には勝てそうなのに、心が沈みそうです。


「くっ…分かりました。

それでは武器を拾って来て下さい。

決着を付けましょう!!」


「?…ああ分かった」

俺の悔しがる顔を疑問に思ったみたいだが、グレゴワールは返事をすると戟を取り、位置に付いた。


「合図は…要りませんね」


「ああ」


お互いが相手を敵として認識した数秒後、俺たちは同時に技を繰り出した。


「『スパイラルチャージ』!!」


「『風爪雷牙(ふうそうらいが)』!!」


そして激突!!


まず起こったのは『風爪雷牙』による『スパイラルチャージ』の打消しだった。

先ほどの現象とは違い、俺の渦がグレゴワールの渦を一気に食い破る。

そのまま風の渦はグレゴワールに纏わり付くように襲い、風の爪痕を刻み付け始めた。

そして風に囚われているグレゴワールを十字槍の両端から放たれた双雷が食い千切る。

双雷を受けたグレゴワールは衝撃により数回跳ねて闘技場の壁に激突した。


「ひゃっふー!!

やっちゃいましたね、トール選手!!

グレゴワール選手をぶっ飛ばしましたよー!!

どう考えても気絶していると思いますが、審判さん確認お願いしまーす!!


…………審判さん?」

ん?そういえば審判居ないな。

何処に行った?


…あ、あああ、審判さ~ん!!


「ちょっ、ヤバいですよ!!

審判さん、倒れちゃってるじゃないですか!!

関係者の人、早急に状態を確認してください!!」

いつ巻き込まれたんだ?

さっきのは一方的にグレゴワールを襲ったから、その前の撃ち合いか?

あの暴風に吹き飛ばされたのか…

お気の毒に…ご愁傷様です。心の中で手を合わせておこう。


「審判さんは無事のようです!!戦いの余波で気絶しただけみたいですね!!

そして肝心のグレゴワール選手ですが…

やはり気絶していました!!

ここでトール選手の勝利が決定!!

ランクS【破壊の穿孔】を破り勝ち上がったのは、新進気鋭のランクB「日月」のトールだー!!

優勝候補の一角を倒したその実力、今後の試合も期待して良さそうですね、獣王様!!」


「……そうじゃのう。今回の戦い…」

さて、戻るか。

何故か機嫌が悪そうな獣王の評価よりも、早く帰って休みたいわ。


あー…疲れた。





ここは俺たちが泊まっている宿屋。


「全員1回戦突破おめでとう!!

かんぱ~い!!」


「「「「乾杯!!」」」」

リーンの音頭でちょっとした祝勝会が始まった。


「いや~、流石に最後の戦いはビックリしたわ。

ギリギリの戦いになるかと思ったら、結果圧勝しちゃうんだもの」

リーンが頬に手を当てて首を若干傾げながら、憂いのある表情を浮かべて語る。


「そうじゃのう。じゃが、我はそれよりも真似の方が驚いたのう」

ティアは腕を組み、自分の言葉を噛み締めるように頷く。


「いやいや、最後の技を進化させたところ!!

あれの方が凄いだろう!!」

エルザはジョッキをダンッとテーブルに叩き付け、リーンとエルザに食い掛かる。


(わたくし)は全部まとめて当然だと思っております。

なにせトール様はお父さんを破っているのですから!!」

ドミニクはジョッキを両手で持ち、満面の笑みを浮かべている。


「あの~…皆の祝勝会だよな?

俺の話だけじゃなくて、皆の話をしない?」


「いいの(のじゃ・んです)!!」

俺の願いは声を揃えて否定され、俺を褒め称える話は1時間程続いた。

嘘。半分くらいは愚痴だった。

肩身が狭いのなんのって…


しかし、何故1時間程で女性陣の話が終わったのか…

それはヤツが突然俺たちを訪ねて来たからだ。


「トール!!エルザ!!1回戦突破おめでとう!!」

そうイキナリ、クリフが俺たちの宿に突撃してきたのだ。

しかも、俺たちと同じく2回戦に進出しているイーデンさんを連れて…


「クリフ!!」

「兄様!!」

「「どうしてここに!!」」


「マレノ王国の主賓としてアル兄が来ているんだよ。

俺はその付添…というのは建前で、無理を言って連れて来て貰った!!

何せ4年に1度の祭典だからな!!」

俺とエルザはクリフの言い訳にガクッと力が抜けて若干呆れた。


「それにお前、横の人は本選出場者のイーデンさんじゃないか。

明日も試合なのに連れ回すなよ」


「いやいや、俺も休んでいるように言ったんだぞ。

けど、「隊長を守るのも仕事です」って言って離れてくれないんだよ」

ハァと溜息を吐きながら、横のイーデンさんをチラッと見た。


「好き勝手に動く隊長を諌めるのも私の役目ですので」

と素知らぬ顔でイーデンさんは言い放った。


「ハァ。そんな訳で、用事が終わったら直ぐ帰ってこいつを休ませるわ」


「あ、ああ、そうしてやれ。

で、なんでここに来たんだ?」


「ああ、それはな、お祝いと激励をしに来たんだよ」


「態々か?まだ1回戦突破しただけだぞ」


「お前、大変なことをやったんだぞ!!

判っているのか!?

ランクSしかもあと数年でSSに上がるであろうという実力の持ち主を圧倒したんだぞ!!

これが祝わずにいられるか!!」


「お、おう。ありがとう」

俺はクリフの剣幕に押されながらも、何とかお礼を返した。


「隊長、そろそろ」


「ん?もうか?

ああもう、分かったよ。

じゃあなトール、エルザ、そして「日月」の皆。

明日からの試合も頑張れよ!!

トールはここまで来たなら優勝しろよ!!

目標が高ければ俺もやりがいがあるしな!!」


「ああ、頑張ってみるよ」

「兄様、ありがとうございました!!」


「じゃあな!!」

クリフはそういうと宿から去って行った。


「風のように去っていきましたね」


「付添って言っておったし、何かと忙しいのじゃろう」


「はーい、いい感じで区切れたし、ここでお開きにしましょう」

リーンはパンパンと平手を打つと、明日に備えて解散を提案してきた。


「そうだな。今日はもう休んで明日に備えるか。

んじゃ、最後にリーダーらしく掛け声でも。

皆、明日も勝つぞ!!」


「うむ!!」

「おう!!」

「はい!!」


「ふふ、皆頑張ってね」


これでこの日はそのまま休んで終了。

終了ったら終了。

本当になにも無かったからな!!



…おほん。

そして翌日、第2回戦が始まる。

トール強くしすぎたか?


次はドミニクの2回戦(予定)

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