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すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第5章 魔闘技会開幕
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#13 魔法の作り方

今回は説明回でほぼ会話です。

「……なるほど、そんなことがあったのか」

お、ティアの説明が終わったか。


「説明終わったんなら、エルザの質問に答えるがいいか?」

ティアとエルザにそう問うと、2人とも頷いた。

リーンとドミニクの2人は既に居住まいを正して俺の説明に耳を傾けている。


「じゃあ説明を始めるが、前提としてこの仮説は俺個人の見解から得たものだと言っておくぞ。

それでは、まず何故あの現象が起きたかの理由だが、あれは燃焼の原理がそのまま当てはまる。

『ウィンドウォール』の圧縮空気に『ブレイズスラスト』の高熱の炎が付き、大爆発。

これは間違いない。

皆もある程度は予想出来ていたんじゃないかな?」


「ええ、私もそう思ったんだけど…

私の経験上、『ウィンドウォール』で『火魔法』を防いだことはある。

でも、あんな現象起きたこと無いわ。

それどころか聞いたことすらないし…」


「リーン、その理由は今から説明するよ。

っと、それを説明する前に…

リーン、魔法の形状(・・)はどのように形成(・・)されるか判るか?」


「え?それは任意の形状をイメージしてだと思うけど…」


「ああ、間違ってはいない。

だけど、それだとちょっと足りないかな」


「足りないって…

他に何か作用してるってこと?」


「そう。それが今回の現象を起こした根本的な原因だと俺は考えている。

ここで全員に確認だが、過去に調べた中にアイス系やアース系の魔法以外は物理ダメージが少ないとあった。

しかし、一部の魔法使いはそれをイメージが悪いと一蹴して全ての属性でダメージは同等と言っている。

この人による魔法の威力の違いを皆は知っているか?」


「ああ、知っておる。確かに物理ダメージは少ないと思っておったな」

「私も城で学んでいた時はそう感じていたな」

「え?そうなのですか!?(わたくし)は感じたことないのですが…」

「私もドミニクに同意するわ。

でもこの疑問はあまり問題にされなかったのよね。

各自で対策を立てられるから…」


「それが今、問題となっている。

正に、資料に載っていた矛盾が表に出て来たのがエルザの試合だな。

ちょっと遠回りしたが、俺の考えを単刀直入に言うぞ。

俺は『無魔法』と『魔力操作』の2つがこの問題に関係していると考えている。

これは何故魔法が特定の形を作るか(・・・・・・・・)という疑問から導き出した俺の答えだ」

俺は一度言葉を区切ると、皆を見渡した。


うーん、勘付いているのがドミニクとリーン、ほとんど判ってないのがティアとエルザか。

これ噛み砕いて説明するの難しいんだよな…質問は後で受け付けることにして続けるか。


「まずは『無魔法』との関係性についてだ。

これは結構単純。

属性付きの『ボール』や『ウォール』などは『無魔法』のそれを基準に作っていると俺は仮説を立てた。

つまり、属性を『無魔法』という容器で包み込んでると考えたわけだ。

そう考えると、何故それらの魔法が形成されるかが説明出来るんだ」


「ちょ、ちょっと待って!!

それだと何故『ファイヤーボール』などが燃え盛っているかが不思議でならないわ!!

トールの説明だと、属性を容器に入れているはずだから漏れは出ないはずよ!!」

流石、リーン。即座に俺の仮説から問題点を導き出すか。

だが…


「それはな、多分イメージの仕方の問題だよ。

大方皆こう思ってイメージしてるんじゃないかな。

『ファイヤーボール』か…火の球なら球の周りも燃えてて当然だよね!!って…」

俺の言葉を聞き、皆が驚きの表情を現して息を呑んだ。

心当たりがあるのだろう。


そして俺は球の周りが燃えていない(・・・・・・)『ファイヤーボール』を掌の上に作り出した。


「だからこんな風にイメージを変えてやれば、俺の仮説通りの魔法が出来るわけだ。

ここまではいいか?」

俺は全員に見えるように魔法を動かし、問いかけに皆が頷いたのを見て魔法を破壊して魔力を吸収した。


「で、でもそれじゃ容器の硬さ次第で対象が燃えたり、燃えなかったり…!!」

お、これに気付くのもリーンか。流石ランクSの探索者!!

あ、でも皆ももう気付いたみたいだ。


「そう、それが今回の問題となっている現象。

そして仮説のもう一つの答え…『魔力操作』の良し悪しに繋がってくる」


「では、『魔力操作』は魔力を体内から抽出する効率を示すだけのスキルでは無いということかのう?」


「ああ、その通りだティア。

気付いていないかもしれないが、皆はその別の使い方を結構自由に使っているぞ」


「「「「えっ!?」」」」


「やっぱり気付いてなかったか。

例えばさっきのエルザの試合でだが、盾で突進したよな。

その直前にエルザは『身体強化』と『アクセル』への魔力供給を操って魔法の強度を上げていたぞ」


「あっ!!そう言えばその通りだ!!」


「お、エルザのその反応を見ると、意図的には使っていたみたいだな。

それが『魔力操作』を使用してるかどうか知らなかっただけで…


…話を戻すぞ。

つまり、俺は『魔力操作』が示すのは魔力抽出効率だけでなく、魔法強度変換と魔法へのイメージ伝達のし易さも示していると考えたわけだ。

そう考えると調査の中にあった魔法使いの魔法使用感覚の矛盾が説明出来るからな。

で、それらを踏まえて今回の現象を考えるとだ…

相手さんは『ウィンドウォール』の強度を考える時に空気圧縮の方に重きをおいて、『ウォール』…容器の強度は弱かったと思われる。

無意識のイメージだろうけど。

それで、例えばそこに当たったのが『ファイヤーランス』くらいまでの単純な魔法であったなら防げたのかもしれない。

しかし、エルザが放ったのは貫通力のある『火魔法』だ。

結果はあの通り。

簡単に『ウォール』を貫き、空気の層に達し、大爆発。

因みに、相手の『無魔法』や『魔力操作』のレベルがエルザよりも極端に低ければ同じ現象が結果的に起こるとは思うぞ」


「うむ、これを聞くと『魔力操作』のレベルは早急に上げた方が良いと感じるのう」

「なるほどな。魔法も使い方を知らず、誤れば自分に被害が及ぶ…戒めにせねばな」

「言われてみればってとこね。今度から『火魔法』を『風魔法』で防ぐのは止めた方がよさそうね」


「だな。ただ、あのベンって奴は魔法を防ぐという選択をしたのが、そもそもの敗因だと思うぞ。

あの不利な状況で放たれた強力な魔法を壁一枚で防げると思うのは慢心だろう。

俺なら自傷になってもいいから魔法で自分を吹き飛ばして回避を狙ったかな。

若しくは風で足場を作って回避…だな」


「「「「確かに」」」」


「…あっ、すみません。

別件で疑問を持ちましたので質問をお許し下さい。

今回の件については先ほどの説明で理解出来ました。

しかし、トール様の説明だと『ウィンドウォール』などは『風魔法』と『無魔法』の2種類を使用していることになります。

これは合成魔法ということになりませんか?

世間一般では各属性の『ボール』などはスキルLv.2くらいで使えるはずです。

合成魔法を魔法スキルのレベルが低い時に使えるとは思えないのですが…」


「あー、ドミニクの疑問はもっともだな。

これも俺の仮説になるが、使える理由としては2つ。

1つは詠唱だな。『無魔法』を使う時の『理』という言葉が入っているかどうかは知らない。

だが、何か形状を形作るような文句が入っていれば『無魔法』が多少の補助をしていると思う。

2つ目は『並列思考』だ。と言っても、別にそれがスキル欄に無くてもいい。

その理由としては物事を2つ同時に行うことくらい出来ると俺は思っているからだ。

ドミニクはスキルが無ければそんなこと出来ないと思うか?」


「いいえ、出来ます。訓練や戦いを経験すればスキルを取得出来ずとも出来る内容です」


「そう。ドミニクの言った通り、たとえスキルとして所持してなくても魔法や剣術を訓練していれば、自然と『並列思考』は出来ると思う。

と言うことは、詠唱の補助と『並列思考』があれば各属性の『ボール』などは理論的に使えるようになるはずだ。

それに、俺がこの世界に来る時に教えて貰った中に疑似合成魔法というものがある。

それは『並列思考』と『魔力操作』があれば完全ではないにせよ、合成魔法を使えるらしい。

あの時は疑似合成魔法を放つには両方Lv.5は欲しいと言っていたが…

多分、複雑な魔法を放つ場合はそれくらい欲しいというだけであって、単純な魔法であれば低レベルでも使えるはずだ。

まあ、『並列思考』に関しては魔法が使えるのが先か、取得出来るのが先かのわずかな違いになるだろうがな」


「なるほど。今の(わたくし)たちのレベルでは検証は出来ませんが、(わたくし)の修行時代に思い当たる節は多々ありますね。

お時間を取らせてしまい申し訳ありません。私の疑問にお答え頂き、ありがとうございました」


「いいよ、そんなに畏まらなくて。

若輩の俺が言うのも何だが、疑問を持つことは良いことだと思うよ。

疑問を分からないままにしなければね。

…さて、ここまで長々と説明したけど他に何かある?」

そう問うと、全員が首を横に振った。


「よし。じゃ、そろそろ次が始まるみたいだし、観戦の続きといきますか」

次はトールの試合までのまとめになると思います。

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