#17 決意…そして歩き出す
すみません。お待たせしました。
今日は更新したかった!!
出来て良かった!!
17話、17日…そして1周年!!
これからもよろしくお願いします!!
「「トール!!」」
「旦那様!!」
トールとトリスタンが倒れると同時にセレスティア、エルザ、ドミニクの3人は倒れている2人の下へ駆け出した。
3人があと少しで2人の下へ到着するという所で、倒れている2人の内1人が崩れそうになりながらも立ち上がった。
それを見た3人は更に足を早め、目的地へ到着すると2人は立ち上がった者の肩を支え、1人は倒れている者の様子を見て大声で泣いていた。
そう…
辛勝ながらも勝者は、最後の攻撃で相手の心臓に小太刀を突き刺したトールであった。
・・・
本当にギリギリだった…
最後の攻撃で心臓に刺すのが少しでも遅れていたら死んでいたのは俺だったな。
心臓を刺したと同時にトリスタンの魔力が乱れたお陰で、左頬に火傷は負ったが俺を殺す程の威力ではなかったのが幸いした。
「2人とも…俺をトリスタンの近くへ連れていってくれ」
俺の願いに了承の意を示した2人は、俺を支えてゆっくりとトリスタンへ近付いていく。
「トリスタン・ヒューイット…最後に言い残す言葉はあるか?」
立ち上がった時に少し離れた程度だったので、トリスタンの下へはすぐに着いた。
立っているのに疲れた為、トリスタンのそばに座り、泣いているドミニクに断りを入れて言葉を掛けた。
「・・・フフ、僕がまだ息があることに気付いていたのかい?」
「旦那様!!」
ドミニクはトリスタンが生きていたことに驚愕し、再度トリスタンにすがり寄った。
しかし、トリスタンに手で黙るように制され、暗い顔をして口を閉ざした。
「…そうだな。それより時間がないだろう。返答は?」
「そうだね。なら、まず1つ。この刀を僕の亡骸と一緒に葬ってくれないかい?最後の餞別として…」
トリスタンは震える手で、心臓にある小太刀を指差しながらそう言った。
「…心情的にはそうしたいが、それはオリハルコン製で滅多に手に入らない代物だ。代替品が無ければ譲ることは出来ない」
俺は渋い顔で返答した。
「それなら大丈夫だよ。トール君に渡す報酬にオリハルコンが含まれているからね。詳しくは遺言書を確認してほしい」
「ならばその件は了承しよう。他にあるか?」
俺はトリスタンを急かした…気配が薄くなり始めていたのだ。
「じゃあ、最後に…この娘を君に託すよ」
トリスタンがドミニクの頭に手を置いてそう言った。
「…どういうことだ?」
「これも遺言書に書いたけど、ドミニクは僕の奴隷でね…そして僕が育て上げた一種の後継者でもある。君が引き取らなければ、金の亡者たちが善からぬことを考えるだろう…ドミニクの力を使ってね。僕に勝った君になら任せられる」
それは…確かにそうだが・・・
「承けてもいいが、それだけの力やメイドとしての技術があるなら、奴隷から解放しても1人でやっていけるだろう。俺に引き取らせる別の理由があるのか?」
「ククッ…かなわないな。そう…僕はドミニクに君の行く末を見てもらいたいんだよ。僕のように狂わない為にね。ドミニクにはちゃんと了承は貰っているよ」
俺はドミニクを見て、本当かどうか尋ねると首を縦に振り、肯定の意を示してきた。
「はぁ~何だよ…人を信用出来ないと言いながら、ドミニクさんを信頼してるじゃないか!!どうして死に急いだ!!共に歩む道もあっただろうに…」
しかも、殺した相手の心配もしている。優しい奴…
俺をこれ以上苦しめるなよ…殺した罪悪感で潰れそうだ。
「それでも僕より早く死ぬんだ…
もう耐えれないよ…大切な人が死ぬのを目にするのは。
でも自分で死ぬことも怖い…だから、頼むしかなかった」
『読心術』も完璧ではないんだな。トリスタンの表層心理しか読めてなかったらしい。
深層心理を聞けば、誰にでもある恐怖…それが今回の原因だったみたいだ。
「私も…私も旦那様を信頼しておりました!!本当の父のように!!
でも、私では旦那様の心を救えなかった…知っていても救えなかったんです。
私ではどうしようもなかったのです…」
ドミニクも俺の言葉に反論し、泣いていた。
「それでも…大切な人を残して死を選ぶのは間違っている。刺した俺が言うのはおかしいとは思うが…
悩んで…悩んで…悩むべきだったんだ…共に生きる道を見つけるまで…トリスタンが幸せだったと生を全うできるように…」
俺も…大切な人を残して死んだのは一緒だ。
親孝行も出来ず、妹の結婚式も見れず、先に俺の死を見せてしまった。
後悔している…
だから、俺は生きて寿命で死んでやるんだ!!
失敗も成功もあらゆるものを糧にして必ず生き抜く!!
大切な人を悲しませない為に、皆との思い出を悲しいモノにしない為に!!
「残念だけど、ここまでみたいだ。今になって僕も後悔しているよ。
ドミニク…君は幸せになりなさい。僕のお願いはこの際気にしなくてもいいから…
そして、トール君…迷惑を掛けた…ね。ゴメン…ね」
その言葉を最後にトリスタンは息を引き取った。
その時の笑顔を俺は一生忘れることはないだろう。
だが、最後の言葉で謝るのは無しだろ…許すことも拒否することも出来ないじゃないか・・・
・・・
その後、俺の記憶は途切れている。
故トリスタン宅で目が覚めたのは死合から1日経ったあとだった。
俺も限界まで力を出しきって気絶したらしい。
1日で色々進捗があったみたいだ。
まず、ギルドへの報告だが、ティアとエルザの2人で行ってくれていた。
詳細を聞くと、ギルドマスターに報告して依頼は達成と認められたと判った。
ただし、ギルドマスターから土下座で謝罪があったらしい。特別報酬としてお金を渡すと言われたらしいが、死合を汚すことになるからと断ったらしい。…2人ともありがとう。
次にトリスタンからの報酬だが、トリスタンの屋敷含めてその中にあるもの全てが俺の物になった。
オリハルコン…確かにあったけど多すぎだよ。パーティー規定数の6人全員のフル装備を作れる量あるじゃんか…しかもミスリル等の希少金属もオリハルコン以上にあるしよ~。
何でこんなにあるかドミニクに聞いたら、トリスタンが若い頃から研究の為に迷宮で集めてたんだと。で、研究が終わってそのまま放置してたらしい。・・・これは俺が皆の装備、生産ラッシュか!?
その他に武術の解説書や生産の解説書、ヤバい研究の論文みたいなのもあった。
うん、これらは即有効活用しよう。俺の意思を貫く為に!!
有り難く頂くよ、トリスタン…ありがとう。
そして・・・
「ドミニク…本当にいいのか?」
俺は屋敷にあるトリスタンの墓の前でドミニクに問う。
墓は俺の身体を魔法で全快させたあと、1日掛けて完成させた。
「はい。私は旦那…いえ、お父さんの願いを叶えようと思います。その為に貴方…トール様に付いていきます」
ドミニクは墓の前で祈りながら、はっきりとそう宣言した。
彼女はトリスタンのことを父と呼ぶようにしたらしい。遠慮して言えなかったことを後悔したから、今からは後悔しない行動をすると言っていた。
強いな…いや、強くあろうとしているのかもな。
「判った。これからパーティーメンバーとしてよろしく!!」
「よろしくなのじゃ、ドミニク殿!!」
「よろしく頼む、ドミニク!!」
俺に続いてティアとエルザもドミニクを迎え入れた。
「はい…よろしくお願いします!!」
こんなに歓迎されるとは思ってなかったのか、少しビックリしていたドミニクだが、次の瞬間に笑顔を見せてお辞儀をしてきた。
そして俺たちは次なる目的地、ゴート獣王国へ向けて出発した。
娘をよろしくね…
俺は声のした方を振り向いたが、そこには誰も居らず、ただトリスタンの墓があるだけだった。
俺は気のせいだと思い、再度歩き出す…微笑みながら。
俺たちの背中をトリスタンの墓が見守っている。
そこには・・・
“強くも寂しがりで優しい父
ここに眠る”
そう刻まれていた。
次回は閑話です。
なるべく早く更新出来るように頑張ります!!
ステータス等は次章開始時にでも…




