#5 ランドルフ公爵家へ
すみません。風邪ひいて更新が更に遅れました。
では、続きをどうぞ。
やってきましたランドルフ公爵家。
執事さんに客間へ通されて当主…メイナード・コールズ・ランドルフ公爵と只今面会中です。
この人凄く優しそう。もう少し歳を重ねると好好爺って言われそうな人だな。
「はじめまして、皆さん。ギルドマスターから聞いているでしょうが、私はメイナードと言います。どうぞ私のことはメイナードとお呼び下さい」
メイナードさんが律儀に頭を下げてきたので、俺たちも慌てて頭を下げた。
「ど、どうもご丁寧に…私たちは「日月」のトール、こちらがセレスティア、そしてエルザです。
えー、この度アルラミシア草の採取が完了しましたので、納品をしに伺いました」
「おお!!ありがとうございます!!それで品は何処に?」
「はい…っと、すみません、何か薬草を入れる籠のような物はございませんか?このまま出すとテーブルが汚れてしまうので…」
「ああ、その通りですね。すまないが、籠を…それとジュディス君をここへ」
メイナードさんが執事さんに指示を出すと、
「かしこまりました」
執事さんは一礼して静かに部屋を退出した。
「・・・さて、待っている間に今回の依頼についての説明をしておきましょう。ギルドマスターより襲撃の報告は受けてますので…」
メイナードさんはそう言うと、今回の依頼の裏事情を説明してくれた。
聴いた話をまとめると、ティアルミ聖国第1王子の婚約者候補争いが今回の原因だ。
第1候補がメイナードさんの娘…クラリス嬢で、第2候補がブレーリー侯爵の娘なんだと。
あと半月ほどで王子が15歳となり、成人となるので同時に婚約の儀も執り行うことに決定したらしい。
しかし、運悪くクラリス嬢が病気になり、第1王妃の権利…つまり聖国での発言力がブレーリー侯爵の目の前に転がって来たわけだ。
ただし、クラリス嬢の病気は不治という訳ではないので、薬や薬草を買い占め、さらに採取する探索者を始末する行動に出たらしい。
「それが私たちを襲った理由ですか…」
「王子を巡る争いとはのう…」
「いや、これはブレーリー侯爵の見栄の為に起こったことではないか?」
俺たちが様々な反応を示していると、部屋のドアがノックされた。
「入りなさい」
「失礼致します。納品用の籠とジュディス様をお連れ致しました」
「失礼する。メイナード公、薬草が届いたと聞いたが…」
ドアが開くと、執事さんに連れられて水色の髪をしたエルフの女性が姿を現した。
「ああ、まずは紹介しよう。彼らは今回薬草を採取してきてくれた探索者のトール君、セレスティア君、エルザ君だ。そしてこちらは薬師のジュディス君だ」
メイナードさんの紹介と共に一礼をすると、ジュディスさんも目礼を返してくれた。
「この度は助力を感謝する。ついては早速、薬を作成したいのだが…」
「ふむ、ではトール君、薬草を出して貰えないかね?ジュディス君は随時鑑定を頼むよ」
「はい」
「了解した」
俺とジュディスさんはメイナードさんの言葉通りに行動を始めた。
「ほう…メイナード公、これは凄いぞ。30株全てが高品質以上だ」
全てのアルラミシア草を鑑定し終えたジュディスさんが感嘆の声を上げた。
「ほう、それは凄い!!ジュディス君、報酬額を考えないといけないので、詳細を教えて下さい」
「14株が最高品質、16株が高品質だな。トール君と言ったか…君たちは時間を掛けて丁寧に採取したみたいだね。近ごろの探索者は品質を無視する奴が多いが、君たちは違うみたいだ。感謝するよ」
ジュディスさんは偏見の眼を向けていたことを謝罪してきた。
「いえ、探索者という括りで見れば仕方の無いことでしょう。ですが、その感謝は受け取っておきます」
こういうことを素直に言えるとは…人間が出来てるな。
「ふふ、ではジュディス君は早速、薬の作成を。「日月」の皆さんはギルド宛へ依頼達成の書類を作成しますので、ここでしばらくお待ち下さい」
メイナードさんが指示を出し、ジュディスさんと執事さんが行動を始めようとしていた。
「すみません。メイナードさんとジュディスさん、実に勝手なお願いですが、薬の作成を後学の為に見学させて頂けないでしょうか?」
その行動を遮り、俺は薬師の仕事を見せてほしいとお願いしてみた。
「私は構わないよ。ジュディス君の好きなようにするといい。では、私は書類を作ってくるのでここで失礼するよ。「日月」の皆さん、あとのことは執事に任せているので、何か入り用のときは言い付けて下さい」
そう言うと、メイナードさんは部屋を退出した。
「ふう、人のことは言えないがメイナード公も大概自由だな。…トール君、付いてきなさい」
「はい、ありがとうございます!!ティア、エルザ、ちょっと行ってくるからここで待っててくれ」
「判ったのじゃ」
「ゆっくり休憩しておくよ」
こうして俺とジュディスさんも薬作成の為に部屋をあとにした。
・・・
ジュディスさんの作業部屋に到着です。…薬品臭い!!
「さて、私はアルラミシア草で薬を作成しようと思うが、君は私の作業を見ているかい?」
「はい。作業中は質問してもいいですか?」
「いいとも。じゃあ、始めるよ」
トゥルルッルッル、トゥルルッルッル、トゥルルッルッルッルッルッルッルッルッル・・・
ジュディスさんの調合が始まりますよ~
…っと、ふざけるのはここまでにしてきちんと見学させて頂きましょう。
「まず始めに薬草を『水魔法』の『ドライ』で乾燥させる。そのあと、乳鉢と乳棒で薬草を繊維まで細かく擂り潰す」
ジュディスさん俺のために丁寧に説明してくれてる…優しい人だな。聞き逃さないようにしないと!!
「質問です。薬を煎じる時は前提として薬草は全て乾燥させるんですか?」
「いや、薬草によって違う。煮立たせて薬効を抽出する方法もある。そうだな、君にはこの本をやろう」
そう言うと、ジュディスさんは一冊の本を俺に差し出してきた。
「これは?」
「私が書いた薬品作成の手順書だ」
「そんな貴重なものを私に!?」
ノウハウをタダで渡すなんて、特許を無償で与えるのと同じじゃないか!!
「構わんよ。私が書いた物だし、弟子はいないからね。それに君には感謝しているんだ。これくらいどうってことない」
「いや、でも…」
「それに君は純粋に薬のことを学ぼうとしている。努力をするものに協力は惜しまないよ」
ここまで言われて断るのは失礼だな。
「ありがとうございます。大切に使わせていただきます。…すみません、作業を中断させてしまって。続きをお願いします」
「おっと、そうだな。早く完成させるか」
さて、俺も集中集中!!
・・・
あのあと、薬は無事完成し、俺たちは屋敷をあとにするため玄関に向かった。
「「日月」の皆さん。今回は本当にありがとございました。そして、これが件の書類です」
差し出してきた書類を受けとると、
「はい、…確かに。それでは私たちはこれで失礼致します」
俺は内容を確認してメイナードさんに一礼し、屋敷をあとにしようとした。
「トール君、何か困ったことがあれば、私に相談して下さい。出来る限り力になります」
「トール君、メイナード公はこの国で多種族共存に積極的な貴族の筆頭だ。誰であれ偏見なく接してくれる。実際、私も助けられているんだ。そんな私が言うのもなんだが、遠慮はせずに頼りたい時は頼るといい。メイナード公は信頼できる人だ」
ふむ…王族もそんな人の娘を取り込もうとしてるということは、この国も変わろうとしているのかね。
「はい、その時はお世話になります」
そうして屋敷を辞した俺たちは、一連の報酬を受け取るため次なる目的地…探索ギルドへ向かった。
次回、あの人が動きます。
 




