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すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第3章 王国の戦友
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#31 これはないわ…

ついに奴隷商へ

王都に戻って来た俺たちは、早速奴隷商に向かった。

王様の口利きで紹介してもらった所は、偶然にも王都で初めて行った奴隷商だった。


「いらっしゃいませ、トール様。ご用件は一昨日伺っていた戦闘奴隷の買付でよろしいでしょうか?

あれ?テリーサさん何か疲れてね?たった数日でどうしたんだ?


「ええ、そうですけど…どうしたんですか?何か疲れてるみたいですけど…」


「・・・ええ、まあ。それよりも奴隷の方ですが、戦闘が出来るという条件以外に何かありますか?」

苦笑いを浮かべながらも接客を忘れない…商売人ですなー。


「えーと、出来ればうちのティアと同レベル…探索者でいうとランクCくらいの強さで前衛、特に盾職の人が欲しいですね。ああ、でも後衛を守れるなら盾職でなくても構いません」


「男性と女性の指定はありませんか?」


「ああ、出来れば女性の方が好ましいですね」


「そうですかそうですか…少々お待ちを」

テリーサさんが「分かってましたよ」的な顔をして退出していった。何か気に食わんが、仕方ないか…



数分後、テリーサさんはローブを着てフードを目深に被った人を1人連れて戻って来た。


「お待たせ致しました。こちらが条件に合うど、奴隷となります…」

何か焦ってる?


「?…テリーサさん、1人しか条件に合う人が居ないんですか?こういう所って条件より一段階良いものと悪いものを加えて、3人以上連れてくると思ったんですけど・・・」

テレビで物件探してる芸能人が色々紹介されてたのを思い出し、テリーサさんに問うてみた。


「えっ!ええ、トール様の条件に一致した奴隷でしたので…しかも陛下のご紹介とあらば下手な商売は出来ません!」

何かテリーサさんがおかしい…商売人にしては焦り過ぎじゃないか?


「・・・まあ、いいですけど…じゃあ、パーティーメンバーだけで本人と話をしてみたいんですが、よろしいですか?」


「あ…う…はい…」

何か言いたそうだったが、テリーサさんはこちらをチラチラ見ながら退出していった。

さっきのから一体何なんだ?


「まあ、いいか。あ、この人の名前教えてもらってない…

えーと、ごめん、君の名前とフードを取って顔を見せてくれないかな?」


「ああ、分かった」

ん?この声、何処かで聴いたことあるような…


声の主がフードを脱いだ。


「私の名前はエルザ・コリント。久しぶりだな、トール殿、セレスティア殿」


「エルザ王女!!」

何でこの国の第4王女がここに居るんだ?しかも奴隷!?何故!?


「やはりのう…」


「ティア、やはりって判ってたの?」

俺、判んなかったんだけど…


「うむ、俯いていたがちらりと見えた金色の髪と顔立ち、そして対戦した時の雰囲気と似ていたので、もしやとな…当たっていてビックリはしたがのう」


「よく視てたな…てか、何で居るんですかエルザ王女!!

そう言えば…店長!テリーサ店長!!居るんでしょう!!出てきてください!!」

あの慌てように、エルザ王女の存在…絶対知ってて仕組んでる。

しかも相手は王女様だ。心配でこちらを伺っているはずだ!!


「はい!!」

先生に注意された生徒のようにはっきりとした返事をして、テリーサさんが部屋に入ってきた。

やっぱり、あの人扉の前に居たな…


「説明をお願いします」

ちょこっと『威圧』を使って説明を求めた。


「はっはい…ええとですね・・・」

「私が説明しよう」

どもるテリーサさんの言葉を奪い、エルザ王女が説明をし始めた。


「事は私がトール殿に好意を抱いた事が始まりだ」


「はっ!?」

「トール、疑問はあると思うが質問は全てを聴いたあとにするのじゃ。いちいち質問しておっては話が進まんからのう」

「・・・そうだな。エルザ王女続けて下さい」

俺は突然の発言に大声を上げたが、ティアに注意されて大人しくエルザ王女の話を聴くことにした。


「では簡潔に説明する。

まず王城での模擬戦だ。この時、私はトール殿が兄を助けた事に疑問を持っていた。どうしてもトール殿が兄より強いと感じられなかったからだ」

『隠蔽』で強さは隠してるからな…こういう誤解もされるか。


「でも結果はトール殿の圧勝だった。あの兄が翻弄されているのは初めて見たよ。戦いが終わって少し経つと、私がトール殿に興味を持ち始めている事を自覚した。元々、結婚するならば私より強い人と考えていたのだ。この時点で私がトール殿に惹かれていたのは当たり前だとも言えよう」

うーん…ここまではよくある恋愛話に聞こえるが、奴隷商に居ることと直結しないな・・・


「そして極め付きはリッチ討伐だ。トール殿がリッチを討伐したことは、ランクDとしてあり得ないと思いつつも、納得している自分もいた。そんな自分に驚きもしたよ。

さらに、報告をしていた兄がトール殿を信頼して背中を任せたと聞き、それにも驚いた。兄は騎士を信頼はしていても背中を任せるほど、戦いにおいて人を頼ることは無かったのだから。

それを聞いたとき私はトール殿に惚れた。兄に背中を任せられる程の貴方の強さ、そして自分を預けられるという安心感に…」

いやー、美化し過ぎでは?


「トール殿がその渋い顔をするのも判る。安直過ぎると言いたいのだろう?だが、生まれてから今まで兄を見てきたのだ、その兄が初めて認めた人…それ以上の理由は私には必要ない」

まあ、それだけクリフを信頼してるってことなんだろう…てか俺、心配事が顔に出てた?


「それで…だ、トール殿に惚れたことを母上や父上に相談したのだ。そうしたら「任せろ」と言ってきたので任せてみたら、トール殿への恩賞を与える時に私を降嫁させようという話になった訳だ」

あれはそういう理由で言ってきたんかい!!


「だが、トール殿は恩賞として受け取るのは拒否した。これだけは覚えておいて欲しい。私はあの時泣きそうな程悲しかった」

だから眉間にシワを寄せていたのか…


「まあ、それはいい。それで父上が機転を利かせて、トール殿が行く奴隷商に入り込み、トール殿が来たら仮戦闘奴隷として出してもらおうという話になったのだ。以上がこれまでの流れだな」


「マジかよ…というか、テリーサ店長怒ってすみません。これは貴女が悪い訳ではない。心中お察しします」

そりゃ、王様の命令で王女を置くことになったら心が休まらんわ。


「判ってくれたんですね…グスッ…本当にありがとうございます・・・」

アララ…安心して泣いちゃったよ。いくら歳を重ねても、奴隷でもない重要人物を守らなきゃいけないのは、プレッシャーだよな。


「とりあえず、テリーサ店長の心が休まらないと思うので、エルザ王女はこちらで引き取ります。えーと、お金は…」


「グスッ…ありがとう…お、お金は陛下から頂いているので結構です」


「そうですか…ゆっくり休んでください。それでは失礼しますね。ティア、エルザ王女行こう」

「そうじゃな。失礼したテリーサ殿」

「う…え…私が悪いのか?す、すまなかったテリーサ殿。お世話になりました」

俺とティアは挨拶を、エルザ王女は困惑しながらもお世話になったお礼を言った。


「い、いえ、今度はちゃんとした取引が出来ると思いますので、またのご利用お待ちしております」

店長、あんたスゲーよ!!商売人の鏡だ!!こんなことでめげずに頑張って!!


その後、俺たちは一旦奴隷商を出ると宿屋へと戻った。


色々話さなきゃな。


次回王城へ

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