表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
すきと~る -えっ!視えるの?-  作者: 守りの神殿
第3章 王国の戦友
105/329

#22 王子として…戦士として…友として…

クリフ視点です。

~side クリフ~



 俺はトールを見送ると、騎士たちに指示を出し、目標へ向かった。


ったく…リッチとか洒落にならん。ランクSなんて俺でも戦ったことねーぞ…

まあ、それよりもまずこのトロールだ。


「我が隊に告ぐ!!トロールの攻撃は基本回避、もしくは受け流せ!!真正面から受けると死ぬぞ!!魔法を使える奴は手足や顔などを狙い、相手の動きを阻害しろ!!」

号令の下、騎士たちが動き出した。


攻撃は順調に行えていた。だが、有効打が無い。

剣撃は当たってもアンデットなので痛みが無く、近付く分危険度が増し、攻撃を受けてしまう者がいた。魔法はあの闇色のもやが邪魔をして『光魔法』すらほとんど効果が無く、魔力を消費するばかりだ。


攻めあぐねて数分すると、突然騎士たちの雄叫びが聞こえてきた。


理由は簡単だった。

騎士たちが相手をしていたトロールが討伐され、残り4体になっていたのだ。

雄叫びの中にトールを称賛する声があったので、倒したのはあいつだろう。

トールの奴、この数分で2体とか討伐速度速すぎだろ…


こっちはまだ1体も倒してねーってのに…



そういや最初に会った時からおかしかった。

あん時は一瞬でアンデットを何百体も殲滅してたよな…ちょっと疲れてたみたいだったが。

あのあと、王都にバカ伯爵たちの潜伏先を伝える為に急いで帰ったので、ゆっくり話出来なかったのは勿体無かったな。父上たちにあいつのこと話す時、めっちゃ興奮してて「うるさい」って怒られたっけ。


それだけ凄いなら城に喚べって言われてすぐに使いを出した。

あいつ父上の前に来た時は大人しかったのに、だんだん遠慮が無くなって終いには俺をバカと言い出しやがった。父上も父上でそれを許すし…模擬戦でボコボコにしてやろうと思ったね!


結果、ボコボコにされたのは俺だった。

説教され、本気を出し、奥の手も使った。それでも届かなかった。あいつは全ての攻撃を避け、剣撃や拳は俺を吹き飛ばし、無詠唱のオリジナル魔法を使って俺を翻弄した。

そして最後の攻撃…気付いたら俺は負けていた。あの時は悔しさなんかは無かった。ただ、嬉しかった。俺と同じ歳の奴が俺よりも圧倒的に強かったんだから…目指す奴が出来て嬉しかった。


でも、全てが終わった夜…俺は泣いた。

悔しかった…悔しかったんだ。憎いんじゃない、王族一ということに胡座をかいて負けた俺の愚かさを許せなかった。強い奴を探すだけで、強くなろうとしなかった俺に腹が立った。


あの日から俺は変わった。

1つ1つの動きを疎かにしないように訓練をした。戦いの中で自棄にならないように心の訓練もした。するとどうだ、あらゆる武術のレベルが1つ上がったのだ…たった2、3日で。俺はもっと上に行ける事が分かり、嬉しかった。トールに感謝だな。素晴らしい友だ…だが次は勝つ!!



と思っていたんだがな…

あいつの強さはレベルが違うな。今なら分かる。あいつは保持者(ホルダー)だ。少なくとも『武人』を持っているだろう。


ニヤッ


いいじゃねーか!!目標は高い方がやりがいがあるってもんだ。


さあ、あいつに負けないようにこっちも早く倒さねーとな!!



「殿下!!危ない!!」

騎士の声が響く。


トロールの拳が右から迫っていた。俺は盾でそれを受け流し、トロールの左腕に斬撃を放つ。しかし、切り込めはするが、意味がない。


すると、トロールが振り抜いた左腕を振り戻してきた。俺は剣を振り抜いた直後だったので、回避が間に合わず、剣を手放して素早く盾を構えたが耐えきれずに吹き飛ばされてしまった。


着地は出来たが、まともに攻撃を受けたせいで盾が壊れてしまった。俺は盾を道具袋に戻し、魔導剣ツインズを取り出した。


「くっそ、なんつーバカ力だ。油断した…まだまだだな俺も」


そのあとも、あらゆる攻撃を繰り出し、やっとのことで右足を壊して動きを止めた。

トロールは動けないのが煩わしいのか、腕を振り回したり、棍棒を叩きつけたりしている。

あまりにも激しいので近寄れない。俺たちは攻撃の外で傍観するしかなかった。



その時、


ゴギィ!!


イヤな音が響き渡った。



トロールの腕の関節が外れたのだ。

それは最悪の状況を作り出す結果になってしまった。

関節が外れたことにより、攻撃の間合いが延びたのだ。


その攻撃は一部の騎士たちの場所に届いてしまう。傍観していた騎士たちは素早く動くことが出来ず、蹂躙されそうになった。


それを俺が許すはずもない。俺は振り下ろされる棍棒の下まで突っ込み、肉体と剣にほとんどの魔力を込めて剣を振り上げた。ぶつかった剣と棍棒は均衡。


「『ソードインパクト』!!!」

俺はなけなしの魔力を使い、剣技魔法を放った。


『ソードインパクト』は基本鍔迫り合いの際に相手の体制を崩す為の技だ。追撃で『無魔法』の衝撃を与え、棍棒を吹き飛ばそうと考えたのだ。


その思惑は成功し、棍棒を弾き飛ばし、急激に反対方向へ加えられた力はトロールの右手を壊して使用不能まで追い込んだ。


しかし、トロールは残った左腕で追撃してきた。アンデットに痛みはなく、右腕が壊れることでの怯みも無かったのだ。


俺は動けなかった…魔力を使いすぎからだ。

地に剣を突き立て、無理矢理身体を支えていた。


「ハハハ、こりゃ終わったか?」

俺は諦め気味にこう言った。


その時、爆発が起きた。


トロールの左腕が弾き飛ばされたのだ。


「まったく…危ない行動をとるんじゃないよ」

俺の横から声が聞こえた。


「ハハハ、悪いな。しかし、タイミング良すぎないか?トールよ」

やはり、あの爆発はトールが起こしたんだな。


「バカ野郎。危なそうだから急いだんだよ。…先に救援に行かせたティアを追い抜いてしまったじゃないか。また何か言われそうだ」


「ふん…文句くらい言われてろ。それより、早く終わらせてこい。悔しいが、俺は動けん」


「ん?そうか、魔力切れか。ホレ、魔力。それと、『ヒール』。さらに『幻浄』」

トールが俺の肩に手を置くと魔力と体力が戻り、次いで剣に手を置いて魔法を掛けると剣が光だした。


「なっ!?魔力が…それにこの剣はなんだ!!」

俺がビックリしてトールに訪ねると、


「そんなことより、決着つけたいんだろう?剣にアンデット特効の魔法を付与したから行ってこい。フォローはしてやる」

こう言われ、俺は思い直した。


「そうだな。んじゃ、行くか!!」

俺は剣を構え、強化を施し、トロールに向かって駆け出した。


俺が近付くとトロールは損傷の激しい左腕で俺に拳を振るってくる。しかし、それをトールが魔法で迎撃し、トロールの左腕は肘から先が無くなった。流石トールだ。


心配が無くなった俺は剣の間合いに入ると、トロールの頭まで飛び上がり、脳天から刃を振り下ろした。


剣を振り抜いた俺は後方へ跳び、経過を見守る。

すると、トロールは雄叫びを上げ、徐々に消滅していった。


・・・終わった。トロールに勝った!!


俺が振り返ると、騎士たちは剣を掲げ、勝鬨を上げていた。


トールは腕を上げ歩いて俺に近付いてくる。俺もトールに近付きながら腕を上げ、お互いが接近したとき、


パァーン!!


互いの掌を弾いた。


俺たちは笑い合った。


労いに言葉はいらない。


お互いの眼を見れば分かる。



友なのだから…


次回はリッチ登場

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ