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オリジナル時計

十五




 昼に3人で飯を食べていると宅配便がやってきた。出ようと思ったらおじいちゃんがそこをどけぇ!と言わんばかりの体当たりをかましてきたので何事かと思っているとどうやらおじいちゃん宛ての荷物だったらしい。


「まっちゃんに無理言って送ってきてもらったんだよ。ほらまっちゃん知ってるだろ?」


 実家の近くに松田時計店という時計を売ってる店がありそこはおじいちゃんの同級生のまっちゃんが経営している店だった。何事かと思っていると何とおじいちゃんは目覚まし時計を特注で作ったのだという。


「まっちゃんがなかなかの出来だって言っていたもんだから待ちきれなくなっちまった」


 見ると何やら末代まで呪われそうな時計が出てきた。一頭身ですらないほど顔のでかいおじいちゃんの時計である。昔ピエロの動く人形を持っていてその人形の鼻の部分が取れてしまったら急に不気味に思えてしまったことがあるが、この時計は鼻が取れていなくてもピエロより不気味である。目が死んだ魚の目をしていて、あごが異様にしゃくれていて、ばい菌の繁殖したようなおじいちゃんの「5時55分です」のボイスアラームに加えて、おデコの部分に主張の乏しいアナログタイプの時計が映っている。これをなかなかの出来だというまっちゃんは一体どういうセンスを持っているのだろうか。


「これがオレの声か? まっちゃんの声じゃないか、これは」


 何度聞いてもおじいちゃんの声なのだが、おじいちゃんは自分のばい菌繁殖声が気に入らなかったようで何度も、「まっちゃんの声だろ。まっちゃんの声だこれは」と口にしてた。聞けば聞くほど時計の声と同じである。


「大体なんだこのギョロ目は。オレはこんなに目が飛び出ていないぞ」


 怒れば怒るほどおじいちゃんは時計のおじいちゃんと同じような顔になっていった。おじいちゃんはすぐにまっちゃんに電話して、目は細長にしたほうがイイとか、声をオレの声にしろとか、顔がデカ過ぎるとかいちいち注文をつけていった。するとおじいちゃんはだんだん怒鳴り声になり始めてとうとう怒って電話を切ってしまった。


「まっちゃんもホント仕事がダメだよな。こんなモノを頼んだ覚えはないのに」


 そもそも自分の時計を作ること自体が無理難題なのである。まっちゃんはよくやったほうだと思っているとだんだんこの時計に愛着が生まれてきた。おじいちゃんに持たせておくと投げつけて壊しそうなので、俺が使うことにした。



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