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将棋

十四







 最近おじいちゃんがボードゲームでイライラするようになってきた。原因は俺と対戦して負けるのが多くなってきたからである。おじいちゃんもおばあちゃんも揃いも揃って負けず嫌いな性格で、俺はこの老夫婦がどこで折り合いを上手くつけながら生活できているのか不思議で仕方がない。おばあちゃんはパチンコ台をバンバン叩いたりするので店側にとってのモンスターカスタマー略してモンカスに他ならないが、おじいちゃんは負けが続くとふてくされて待ったをかけたり勝負をなかったことにしようとするモンスターゲーマー略してモンゲーなのである。両者のモンスターぶりは似て非なるものであるが、どちらかと言えばおじいちゃんのほうが俺にとってはタチが悪い。四十万さんもそうだが、どうも俺の周りの人間は勝負に熱くなりすぎてゲスに成り下がる傾向がある。


「おい、久々に将棋で勝負をしよう。負けたらソフトクリームをおごるんだ、お前は」


 おじいちゃんにとっては3日ほど前の勝負も「久々」になってしまう。しかも自分の好物を賭けの対象にするのだから手に負えない。俺はもったりとしたソフトクリームよりシュークリームのほうが好きなのだが、おじいちゃんは頑としてソフトクリームしか賭けの対象にしようとしない。もったりソフトクリームを賭けるメリットはおじいちゃんのモチベーションの上昇しかない。


「この前は負けちまったからな。手加減したのがまずかったみたいだ」


 この上なく分かりやすい負け惜しみを存分に吐き出しておじいちゃんが先手を打った。俺がオーソドックスに金矢倉を組んでいるとおじいちゃんは角や飛車を出したり引っ込めたりしてこちらの歩を取りに来るケチくさい戦法で攻撃してきた。昔は何度もおじいちゃんに負けたので悔しかったのだが、最近おじいちゃんは棒銀スタイルしかやってこないことが判明した。なのでおじいちゃんの動きは読みやすく、今回も棒銀で攻めまくってきたおじいちゃんの陣地を竜王で荒らしてやった。だんだん劣勢になってきたおじいちゃんは長考するようになってきた。


「待て待てそう慌てるな。必ず勝ちの道筋があるはずだ」


 結局、おじいちゃんはオセロでも将棋でもそればかりである。王の守りもロクに固めず歩をケチケチ取りに来るから1手も2手も損をしている。


「ありがとうございまし、た!」


 おじいちゃんは「た!」の瞬間に将棋盤をバチッと弾き飛ばした。強烈なビンタと共に将棋の駒が宙を舞った。おじいちゃんがこんな風に荒々しく扱うので、実家でおじいちゃんと勝負をしていた時は駒が足りなくてよく困っていた。俺がソフトクリームはと聞くと、「オレは負けたらソフトクリームをおごるんだ、お前はと言っただけで別にオレが負けたらおごるとは一言も言ってない」という屁理屈をこねてきたので、もう将棋はしないからと通告してやった。するとおじいちゃんはいそいそと出かける仕度を始めて、「ソフトクリーム買ってくる」と出て行った。


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