表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/15

ドライバー玉子







 おばあちゃんがレンタカーを借りて3人でどこかへ行こうと言い出した。あいにく俺はペーパードライバーだし、おじいちゃんは運転の免許を持っていないので頼みはおばあちゃんだけということになるが、おばあちゃんの運転は少し不安なのである。


「大丈夫よ。いざとなったらタクシー使えばイイんだから」


 おばあちゃんは冗談で言ったつもりだろうが、あながち間違いではない。おばあちゃんの「いざとなったら」は結構確率が高いので今まで車を使ってどこかへ行くという選択肢をハズしてきたのはそのためであった。しかしおばあちゃんはどこかに行かなきゃ損だという頭が働いてとうとう我慢しきれなくなったらしく、おじいちゃんに相談し始めた。おじいちゃんはおばあちゃんの運転の程度を知っているのでドミノ倒しの手を休めて考え込んでいた。


「事故らなければ行ってもイイんだがなあ」


 おばあちゃんは過去に3回事故に遭っている。1回目は一時停止のところを止まらずに徐行していたら横から車が来て軽く衝突し、2回目はネコが横切ったので慌てて急ブレーキをかけたところを後ろから追突されて、3回目は正確には事故ではないが、高速道路で逆走してしまって同乗していた俺も死にかけた。


「大丈夫。今度はちゃんと運転するから」


 まるで前の運転は準備運動でしたと言わんばかりの自信過剰な言葉に俺は信用出来なかったが、おじいちゃんが思いのほか信用してしまったのでとうとうレンタカーを借りてどこかへ出かけることになってしまった。


 次の日と次の次の日がちょうど休みだったのでレンタカーを借りて千葉まで向かうことになった。しかしおばあちゃんは相変わらずのマイペースで走るので後ろのトラックが何度もあおっていた。俺はサイドミラーから後ろのトラックのあおりに気が付いて振り向くとおばあちゃんの運転するレンタカーとそのトラックは目と鼻の差ほどの距離しか開いていなかった。俺は危機を感じておばあちゃんに左レーンへ入ったほうがイイと言ったがおばあちゃんは自分の運転を崩さなかった。


「こっちは法定速度も守ってるし、何も悪いことしてないんだから。後ろからあおってくるトラックが悪いのよ」


 おばあちゃんは頑として速度を上げずトラックが何度あおってもマイペースに走っていた。やがて左レーンが空いてくるとトラックは一気に加速して俺達を追い越していった。俺はホッと一息ついたが、見ると先ほど俺達を追い越したトラックがすぐ先の信号で止まっていた。


「あれだけ加速した挙句が赤信号で待ちぼうけだって。ぶふっふふぉ」


 確かにこれには俺も少し笑ってしまった。「急いでんだよ!」という風な速度で飛ばしていったくせに結果が赤信号でつかまっていてはこの運転手の乗っているトラックも雑な扱いをされてさぞかし無念だろう。持ち主がマヌケだとガソリンもマヌケな使われ方しかされないのでこの運転手を雇っている会社もそんなヘタな運転をしている運転手を雇っているということでマヌケなのである。それを考えれば、車の流れを無視してマイペースに走っているおばあちゃんのほうがまだマシな気がする。ただおばあちゃんの場合、マイペースの度が過ぎて法定速度以下でノロノロ走ることもあるので、間接的に後ろの車を挑発しているような気もするが。


 おじいちゃんは先ほどから居眠りにふけっていた。つい先ほどまでトラックに追突されそうで、一番の犠牲者はおじいちゃんになりそうなところだったのにのんきなもんだと思った。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ