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殺戮機械が思い出に浸るとき 41

「結局なにも変わらなかったわけだ」 

 西園寺要はそう言うと机の上に足を上げた。明らかに不機嫌そうにカウラ・ベルガーがそれを睨みつける。

「でもまだましじゃないですか?遼北のイスラム過激派に対する支援が非合法化されたわけですし……両国の介入合戦も一息つくでしょ」

 そんな神前誠の言葉に要は大きくため息をついた。

「そんなのただのザルだろ?どうせ地下銀行経由で資金は流入するだろうし漁船とかに武器を隠して運ぶって手もあるしな。アタシならわかるよ。蛇の道は蛇だ」 

 要はそう吐き捨てるように言うと隣の机の島でぼんやりしているナンバルゲニア・シャムラードに目をやった。

「そう言や今日じゃないか?シャム。吉田のバカの義体が納品されるの」 

「納品って荷物じゃあるまいし」 

 カウラのつぶやきにも呆然と目の前の何も写っていないモニターを眺めているシャムには届かなかった。

「第三小隊は非番。第四小隊は大使館に呼び出しくらっている……静かな時にあんなめんどくさ……」 

 そう言いながら見つめた先の出来事にぼんやり口を開けた要。誠達もその二階のなんの変哲もない窓に目を向けた。

「よう」 

 よじ登ってきている吉田の顔に全員が呆れかえる。いつものようにそのまま体を持ち上げて部屋に入ると制服の前を叩いて自分の席に着いた。

「久しぶりだなこの部屋も……てどうしたんだ?」 

「進歩のない奴だな」 

「今日くらいはまともに入ってくると思ったが……」 

 要とカウラの言葉に満足げにうなづいた吉田は開けっ放しの口を閉じることも忘れているようなシャムに顔を向けた。

「おい、どうしたい?」 

「俊平……」

「だからなんだって言うんだよ」 

 邪険ないつもの通りの吉田にシャムの表情が驚きから喜びに変わるのが誠からも見て取れた。

「おかえり!」 

「別にここは俺の家じゃないぞ」 

「違うよ、帰る場所。アタシも帰ってきたし、俊平も帰ってきた」 

 嬉しそうなシャムの言葉に吉田は目をそらして頭を掻くとそのまま自分の机の上の端末を起動した。

「それより今日中にアンの訓練のメニューの練り直しをするぞ。お前さんのプランじゃアンが使い物になるには百年かかる」 

「うん!」 

 吉田の毒舌にいつものような底抜けに明るい笑みを浮かべたシャムは自分の端末を起動させて早速キーボードを叩き始めた。 

「結局ここも変わらずか……」 

「変わらないことが良いこともあるってことだ」 

 皮肉を言うつもりがカウラにまとめられて不機嫌そうに要は立ち上がる。

「どうしました?」 

「タバコだよ……神前も吸うか?」 

「僕は……」 

「無駄に喫煙者を増やすな」 

 いつものような詰所の雑談。こうして遼州司法局実働部隊の一日が始まった。



                                了

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