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殺戮機械が思い出に浸るとき 38

 人型機動兵器が焦土の上に立つか細い少年を見下ろしている。

『少年……貴様は生きたいか』 

 人型機械の声が響いた。額から血を流しながらも冷静を装うような少年は静かにうなづく。

「もう他に機械はない。この星には……この星は君の意思を受け入れた。すべては破壊された僕達は文明を捨てた」 

 少年と呼ぶにははっきりとした意志の強そうな言葉が響いた。彼の背後の岩肌の周りには機動兵器から身を隠すように多くの人々が様子を伺っているのがわかった。

『文明を捨てる……人間の生き方かそれは?』

 機動兵器はそう言う言葉を発するとそのまま右手にした剣を振り上げる。少年はそれに怖気付く様子もなくただ丸い目で機動兵器を見つめていた。

「この文明は進みすぎた。……人の遺伝子を弄り、人を模したシステムを作り、宇宙を制覇した。その結果がこの有様だ……」 

 皮肉めいた瞳で周りの焦土を眺める少年。機動兵器は剣を振り上げたまま沈黙を守っていた。

『文明を捨ててどうする』 

「国を作る……文明の無い国を」 

 機動兵器の問いに即座に少年は言葉を続けた。

『それでどうする』

「文明の無い世界でただ人が生きるべくして生きるように生きる。人は文明を持たなくても生きていける……」 

 強い調子で少年は言葉を続けた。

「こんな文明が人類を縛る世界を再び受け入れない……そんな世界を作る……」 

『できるのか?』 

 ゆっくりと剣を下ろしながら機動兵器がつぶやく。少年はようやく感情らしいもの、少しばかりの笑みを浮かべて手を差し出した。

「君もこちらに来たらどうだい?きっと楽だよ……」

 少年の手が機動兵器に向けて掲げられた時、機動兵器の胸のハッチが開いた。

「文明のない世界……」

 そこには一人の少女が座っていた。体に張り付くようなパイロットスーツを着た少女は静かにヘルメットを脱ぐ。

「そう、文明の無い誰も苦しまない世界……こんな焼け野原と無縁な世界……」 

 少女はそのまま機体の差し出した右手に飛び乗るとそのまま少年に駆け寄る。少年の背後の人々は恐れの声を殺した叫びをあげた。

「怖がることは無いよ。もう彼女も仲間なんだから……」 

 少年は恐れる民に呟いた。幼く見える少女は無表情のまま少年の手を握り締めた。

「これで君も仲間だ……さあ、国を作ろう……」 

 二人に笑みが浮かぶ。化学物質が焼けるような匂いの中、人々は二人が焼け野原の中に向けて歩いていく様をただじっと眺めていた。

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