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ここへ来て始めての体験が増えました。

1、美少年に足蹴にされる。ええ、まだ根に持ってますよ。貴重な体験本当にありがとうございましたーーー!!という私は実はMなのかもしれない。

2、私に一生生えることないものが生えました。




と思っていたのも束の間、我ながら己の順応能力の高さを褒めてやりたい。

そりゃ驚きましたともさ、大変でしたともさ、一日目はね。

けど実際そんなことにかまってられないほど仕事が忙しいっていうのがあった。何しろあの美少年、あ、名前聞いてないや。

彼に言いつけられた二日間の期間も迫っていたし、ここを追い出されたら私行くあてなんてないし意地でもしがみつくしかないわけですよ。

言葉も話せるし文字も何故か読める。それはいいけど私はこの世界の常識というものを知らない。

今のところ私の世界は倉庫とその周辺の広場しかないわけで、それより外が一体どうなっているのか、この施設が一体どんな状態なのかさっぱりわからない。

とりあえず道具からして・・・何だろう、草とか多い。後薬品っぽいのとか武器も多い、矢とかあった。あとは刀剣の類。これからして剣と魔法の、の剣はクリアしてると思うんだ。

魔法は道具の中から発見した。

それはえらく巨大な木箱の中に入っていて気になって開けてみたら説明書と赤い長方形の機体、そして太く長いノズルとヘッド、まさしく巨大掃除機のような物体。一緒に入っていた説明書によると『風の精霊石を使用した楽楽掃除機!あっという間に埃とおさらば!』と書いてあった。

説明書には床はもちろん天井に向ければ驚異的な吸引力で空気中の塵やゴミ、埃を吸い取ると書いてあり、さらには注意書きとして『一緒に人を吸い込む可能性があるので人のいない場所で使いましょう。ノズル大の物体も吸い込む可能性があります。何も無い空間でお使いください』とあった。

結構使う場所が限定されそうだ。ホールとか、こういう倉庫向けってことなんだろうか。あの人絶対通販とかハマるタイプだ。


「おし、後はこれのスイッチを押して」


押し下げるタイプのスイッチをガチンと入れると途端に赤い物体からフォオオオと機械音がしてきた。これ掃除機っていうより集塵機じゃないだろうか。

大きな音が何もなくなった倉庫に鳴り響いてより反響していく。

まさに元気いっぱい仕事しまっせ!と張り切っている掃除機のノズルは右へ左へとのたうちまわる蛇のごとく振り回され、って駄目じゃん!何でこんな荒ぶってらっしゃるの!?


「ちょっちょっ!!鎮まりたまへええええ!!」


急いでスイッチに手を伸ばしたところ時既に遅し、ノズルが私の髪を掴んだ。そして


「ふぉおおおお!!」


頭まるごと吸われております!何かくっさいし!でも助けてこれ本当にやばい!息できないっ!!

なんとか先端をもってこれ以上吸い込まれないようにしてるけどそれも持ちそうにないし、このままゴミ袋へINしちゃったほうが楽なんじゃないだろうか!?


「おーい・・・って何やってんだお前は!!」


その声はおっさん!!いいところへ!助けて!いいから助けて!


どうやらスイッチを切ってくれたらしく、無事ノズルからは助けられました。


「・・・数十分の間に何をしとるんだお前は・・・おぅ、まだマシな顔になったんじゃねーの」

「掃除機に吸われてマシになる顔って何ですか!!」


髪が逆だってどこかの最強戦闘民族みたいになってんじゃないのさ、髪紫なんだけど。


「これ人がいないところで使えってなかったか?お前何でいんだよ」

「いや、ちょっと見てたら一気に吸い込まれました」

「どうしてそうなる」

「わかりません!!」


はっきりというとおっさんは気だるそうな表情に少しだけ呆れと変なものを見るような色を混ぜてこちらを見てくる。何だよう。

そしてぐるりと顔を上から下へとアーチ状に動かすと感慨深げにつぶやいた。


「この倉庫こんな大きかったんだな」

「木箱に支配されて手狭でしたからね」


この倉庫、積み上がった木箱のせいで視界が悪くなっていたので狭く思えたのだが、全部外に出してみると思ったよりも広さがあったのだ。小さめの体育館ぐらいはあるんじゃないだろうか。うん、バスケは余裕でできる。サッカーは無理かもしんない。でもフットサルならできそうだ。


「おらよ」


髪の毛にえらくガサッとしたものが押し付けられた。

何だ?と思いながらも受け取ってみるとそれはわら半紙のようなもので作られた紙袋、中を開くと香ばしい匂いが広がる。

それはカリッカリのフランスパンに挟まれたチーズとレタスとベーコンのサンドイッチだった。これカスクートっていうんだよ!

そういえばお腹すいた。何だかんだ昨日から何も食べていなかったんだ。


「わーわー!おいしそう!これどうしたんですか!?」

「お前に外に放り出されたからなー、暇だったんで買ってきた。ついでに数ヵ月ぶりに家に帰った」

「あんたどんだけ家に帰ってないんだよ・・・」

「ついでにスープと果実水も作ってもらった」


そういうおっさんの手にあるのは金属で作られた水筒と瓶とコップとマグカップ、えらくいっぱい持ってきたなピクニックか。

せっかくだし外に放り出した木箱に座って食べようということになって、日が穏やかにさす広場へと出た。

そこには今まで倉庫の障害物となっていた木箱の数々、こうしてみるとよく私一人でこんなに出すことができたなと感心する。

不思議とそこまで疲労感はないし結構大きい木箱でも軽々持てたような気がする。最初は男の子の力ってこんなもん?って思ったんだけどこの体、そこまで筋肉ついてるように見えないんだよね。だからもしかしたら自動翻訳と一緒についてきたチートの一つなのかもしれない。

木箱の側面には全て数字とそして私の世界の言葉で内容物の名前が書いてある。これなら他の人間にここに何が入っているのかわからないし、私には一発で何かわかる。おっさんにはそのうち内容物の文字を教えておくとして、そのうちの一つに腰をかける。

おっさんはちょっと離れた斜め横の木箱に腰掛け、瓶を開けてコップに水をなみなみと注ぐと片手でこちらに渡してきた。それを受け取って、そして水筒に入ったスープも受け取り隣の木箱においてから意気揚々と紙袋を開け中のサンドイッチを頬張る。

ザクッといい音がしたと同時に口から鼻へと香ばしい香りが突き抜け、咀嚼するとチーズとベーコンそしてレタスのしゃくしゃくした感触が伝わってくる。


「おういー!!」

「そらよかったな」


久しぶりのご飯すっごく美味しい!

っていうかこっちの料理が向こうと同じようなもので良かった・・・っていうか同じ?野菜とか加工商品とか同じなのかな?だとしたら嬉しい。

外国にいったとしても問題になってくるのは食べ物だ。それが解決できているなら少しは安心する。

隣に置いたスープはコーンスープだった。これもまた慣れ親しんだものでありがたい。

熱いので息で冷ましてからゆっくりと口に含むとコーンの香りと甘味が広がっていく。


「ん!これも美味しいです!レットさんのお母さん料理上手ですね!」

「はあ?」


何で「はあ?」褒めたんですよ!そこは素直に「ありがとう」ぐらい言いなさい!!

が、おっさんは本当に「何言ってんだこいつ阿保か」みたいな顔をしているのでちょっとむっとする。


「何ですか、褒めたんですよ」

「つかな、この歳になって母親とかねーだろ。女房だよ女房!」

「・・・奥さんいたんですか!?」

「ふっ独身に見えるか」


ちょっとカッコつけやがったな。


「寧ろうだつの上がらなさに呆れられて離婚されてそうです」

「うちはいつでも新婚だっつの。娘もいんだぞ」

「えー!嘘―!!娘さんかわいそー」

「どういう意味だこのやろう」


ゲシッと無駄に長い足で蹴り飛ばされる。

なんだこの世界の人達は!みんな私のこと足蹴にしやがって!私だからって蹴っていいと思うなよ!!


「暴力上司!どうせろくに家にも帰ってなくて久々に帰ったら、え?何でお父さんいんの?みたいな目で見られてへこめ!」

「ぐふっお前、どこで見ていた」

「マジかよ」


何か知らんけど適当に言ったことは大当たりしてしまったらしい。ごめん、本当にへこむとは思ってなかったです。

まあ、どうでもいいので美味しいご飯を堪能しました。

落ち込んでサンドイッチを口にできなさそうだったので食べてあげようかと思ったら思いっきりどつかれた。





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