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ロギサスと“荷物持ち”

お久しぶりです。



「わったしはー、騎士団のにーもつもっち」


るんたるんたるんたった、リズムよく地面を蹴ってご機嫌なのは、私!!そう、私!!

どうも!イケメンに囲まれて毎日が幸せみんなの“荷物持ち”だよ!!もうこれで定着しちゃってるよ!悲しいねさっちゃん!!


大きな事といえばちょっと前に魔剣と精霊石の一時保管のためにばたついたくらいだしーここ最近の私の生活はなかなかに安定したものだ。給料日まであと数日、でもあれ以来街に出るとあの騒ぎの場にいた人に何かしら恵まれるという幸運が降りかかってくるのだ。

口にパンを突っ込まれ、飴を突っ込まれ、ついでに肉を突っ込まれるという口の中がファンタジーになりそうな勢いなのだが、きっとこれは善意だと思ってる。うん。

そして今日も今日とていろいろ突っ込まれるためにスキップしながら街を見て回っているのだが。


「んー?何だあれ」


昼になろうかという時、街にはいろいろな人がいる。

買い物をする人、立ち話をする人、その中に明らかな違和感がいた。

黒いローブでこそこそしてて、明らかにおかしい。

話しかける前にそいつらは路地裏の方へ走って行ってしまったが、あれはいったい何だろう。


「よう、騎士の兄ちゃん、何してんだ」

「ああ、肉屋のおっちゃん」


それは先日知り合いになった肉屋のおっちゃんだった。

もう大分手遅れな頭をしていて体つきは貴方からはきっと霜降りが取れますね?な感じだが腕がむっきむきなアンバランス。

たまにお肉をくれる。ちょっと腐りかけだけど一番上手い!!


「今さ、そこに黒いローブの」

「ちょ、こっち来な!」

「あ?え、ちょぅ」


何故かでかい手で腕をむんずと掴まれ店の中に連れ込まれた。

おっちゃんはご丁寧に開け放していて全面ガラス張りの扉まで閉めた。


「何ですか一体」

「あれはロギサスのやつらだ」

「ロギ・・・な?」

「知らねえのかよ!お前どこの田舎育ちだ!」

「まあ、もう二度と戻れないくらいには」

「・・・そりゃあ、すまん」


何か謝られてしまった。別に気にするようなことじゃないのに。


「で、ロギサスって何ですか」

「・・・司精教は知ってんな」


ここで、知らないって言っちゃだめな気がする!!まだ勉強してません!!


「その中でも精霊とともにあるべき生活をするべきって考えているのがフェア派なんだが、その中でもやばいやつらがいてな。全ては精霊王によって支配されるべきって考えから精霊王を手に入れようって考えに至ったやつらがロギサスだ。

あいつら、世界中で厄介な事件引き起こしてあげくにアイノコを攫ったり、人身売買なんかで手に入れて戦闘用として教育してるって話だ」

「え・・・?」


アイノコって、先輩もじゃない!?いや、先輩はもう立派に騎士だし、大丈夫か。

何だろうこんな似た話私の世界でも聞いたことがある。

少数派の過激な人たちのせいでその宗教自体が危ない考えみたいに思われてるんだよね。


「なんでそんな危ないやつらがこの街に」

「さあな、ここ最近騎士団のやつらも警戒してるみたいだが、捕まってねえみたいだ」

「おっちゃん勝てそうなのに」

「無茶言うな、あいつらの中には精霊師もいる。一般人は手が出せねえよ。出す気もないし」

「・・・」


と、とりあえずは関係ないかな!うん、部署違うし。

騎士団は全般の犯罪行為だけど竜騎士は幻獣が関わった事件だけだし。

それにしてもちゃんと勉強しないとまずいな、この街図書館ってあったっけ。


「ねえ、おっちゃん、この街って図書館ってあったっけ」

「あ?あるよ、ほれ、あの塔見えるか」


ガラス張りの店の中からおっちゃんが指差したのは教会のような鐘がついて高い塔。

あれ、図書館だったのか。

何度か通ったが「ああ、でっかい教会だな」ぐらいにしか思ってなかった。


「行くなら気ぃつけろ、あそこの司書こええから」

「この街こええもん多くない?」









図書館はやっぱり私の世界で言う古い教会に近かった。

そこまで豪奢な建物ではないしステンドグラスみたいな装飾品もないけれど、形はまんま教会、大きな観音開きの扉には通常口なのか小さな扉もついていて、一瞬入ってもいいもんかと悩んだけれど、えいやっと押してみた。


引き戸だった。



「おじゃましまーす」


声かけは大事だよね!!

中に入ると、本棚と椅子が並ぶクラシカルな空間が広がっていた。

思わず声が漏れそうになったけれど、なんでか一言も喋っちゃいけない雰囲気に飲まれて「おぶ」と変な声だけが出た。

どうしよう、文字は読めるんだけどこれだけの本の中から目的のものを見つけ出すのって困難じゃなかろうか。

そうやってぼーっとしていると、「何かお探しですにゃ?」と話しかけられた。


「・・・猫だ」

「猫ですにゃ。ケットシーですにゃ。珍しいですかにゃ?」


何故か猫が直立してこちらを見ていた。

背丈は私の太ももあたりまでで薄いピンク色をしたファンシーなにゃんこ、というかにゃんこのぬいぐるみを立たせたらこんなんじゃないだろうか。

装飾されたケープのようなものを羽織り目にはモノクルをかけていた。


「は、初めて見ました」

「そうですかにゃ、こんな大きい街には一人は派遣されてるのですにゃ。仲間にあったらよろしくにゃ」

「あ、どうも」

「さて、なんの本をお探しかにゃ?」

「あ、えっと、この世界のことを書いた本?」

「ざっくりしすぎにゃ。もしかしてお勉強かにゃ?」

「そう、です。あの、ド田舎から出てきて全然勉強とかしてなくて、もう本当基礎の基礎ができてなくて」

「そりゃあ、かわいそうなオツムですにゃ。哀れすぎて目もあてられにゃい」

「そこまで!?」


この猫さん随分口が悪い。

本当に哀れ見られているのがわかる。


「わかりましたにゃ。基礎の基礎であれば私にもお手伝いできますにゃ、そこの個室でお話するにゃ」

「個室?」


ささ、と柔らかい肉球に手が掴まれた。

おおう!ぷにぷに!!この弾力は全国の肉球ファンが憧れたあの感触の特大版!なんていう贅沢だ!!

手先に伝わる弾力を楽しみすぎたせいでどこに連れて行かれているかわからないけどこれがあればどこにでも行ける気がする。

意識を半分くらいすっとばしながら連れてこられたのは周りから見えないようにされた半個室のような場所だった。

細い木の格子のおかげで誰かがいるな、ぐらいは外からわかるだろうが何を読んでいるかわからない仕様、机が備え付けられているので勉強用の部屋なのだろう。

猫は私の手を離すとまさに猫の俊敏さで机の上に乗り、大きく胸を張った。


「ささ、座るにゃ」

「あ、どうも」


備え付けの椅子に座り、後ろに引いて距離を取った、あまりに近すぎるからだ。


「ではなんの話からにするかにゃあ」

「もう本当基礎で」

「わかりましたにゃ」


ここからはすごく長くなるしにゃあにゃあ言ってるのでちょっと割愛すると、この世界の名はラ・ファーガ、今いる国の名はルアーナ、国王がいる君主制をしいている国で国土は世界で一番大きい。

ただし、派閥をきかせている竜狩人協会があってそこの同盟の街や村が多いため実質国土の半分は彼等がしきっている形となる。

彼等協会は政治に関わってくることはない。故に国も協力体制をとっておいたほうが争うよりも楽というスタンスでずっとやってきているらしい。

ただ、前も聞いたとおり竜騎士と竜狩人は根本的な考えの違いから仲が悪い。

竜騎士は討伐隊、竜狩人はレンジャーみたいな役割をしているからなんだろうけど。

この世界には幻獣という獣ではない存在がいる。幻獣が獣を襲うことはないが人間を襲うことはあるため危険視され、もう何百年下手すれば数千年敵対かつ共棲という形がとられている。

まあ、ここは私達の世界の動物とさして変わらない。

それと、幻獣であるケットシーが何故ここにいるかというと、彼等は誓約者といって召喚師と言われる職業の人たちのパートナーだから特別扱いなんだそうだ。

ずっと西にだけそういう素質を持つ人が生まれて、学校に行って召喚師となる。なった後は公務員扱いで自分の国で働くか他の国に派遣という形で送り出されるらしい。

概ねはこのルアーナに来て働いていて、メスだったらしい彼女レイレの召喚師は本の虫みたいな人でルアーナの図書館で働くことを希望しここに来たそう。将来は王立図書館で働きたいんだそうだ。

さて、話を戻す。

その幻獣はいくつも種類があって、先日私達が倒したワイバーンは獣怪種、他にも妖精種、幽鬼種、妖怪種といて別枠でドラゴン種がいる。

何でドラゴンだけ別枠?って聞いたら。


「それは勿論我らが王がドラゴンだからにゃ」


と言われた。

王様がいるんだ。ドラゴンなんだ。


「エンシェントドラゴン、またの名を幻獣王、それが我らが王の名にゃ。幻獣は王には逆らえないのにゃ」

「へー」

「ついでに人間の王はこのルアーナの王で、精霊の王は別にいるのにゃ」

「う、うん?」

「君、本当に何も知らないのにゃ、残念なおつむでよくここまで生きてこれたにゃあ」

「本当に残念そうに言わないで!?」


全身で残念オーラを出しているレイレ。

気を取り直して、次、精霊について。

精霊とはこの世界の自然現象全てをになっている存在、時や時空も司る精霊がいるんだけどかなりレアなのでまずは会えない、というか彼等は基本的に自分達の世界にいるので精霊師じゃないと会えない。

精霊師って確か先輩のお父さんの友達、んでその友達の契約精霊が先輩のお母さんだっけね。

精霊師はこの世界の人間が15歳になると必ず受ける検査によってわかり、精霊師だとわかると強制的に施設に入れられ訓練を施される。

みんな精霊師協会に名を連ねている。

それでさっきこの街をうろちょろしていたローブのやつらの司精教はこの世界で一番信仰の熱い宗教で、精霊王を頂点とする精霊主義の集団、まあ、多くは自然に感謝し慎ましやかに生きましょう、悪いことをしちゃいけません、嘘をついてはいけません、それは自然に反する行為です、みたいな理念を持つごくごく一般的な宗教なんだけど、その中には自然に感謝する=近代の魔道具や生活を否定するっていう人たちもいて、そういう人たちは街から離れた村なんかで暮らしてる。

そういう人たちは無害なんだけどそういう中には過激派がいて精霊王のもとによりありのままの人間の姿がある。人間の王様なんてくそくらえ、精霊王こそ真の王、そうだ精霊王を自分たちの王様にしようぜ!みたいなブッ飛んだやつらがいるんだそうだ。

それがロギサス、彼等は各地で犯罪行為を行い、あげくに武力を持って国を攻撃したりする。

精霊と人間との間の子アイノコを攫ったり人身売買なんかで闇で買ったりして兵士として仕立て上げて、もう自分たちが精霊王気取りしてたりもするもんだから手に負えないそうで。

各国も彼等には手を焼いているみたいだ。

何か他人事とは思えない話だな、これ。


「ロギサスの人たちは自分達の国がほしいのかな」

「・・・そうかもしれないにゃ。ロギサスの創設メンバーは昔のアイノコにゃ。アイノコはつい100年くらいまで迫害の対象だったにゃ。ある人の活動によって緩和され今では普通に受け入れられているけど、彼等にとって生きにくい世であることには違いないのかもしれにゃい」

「それ、気になってたんだけど、アイノコってもしかして間の子、って意味なの?」

「んにゃ、確かにゃ、エウランドの言葉で愛する子供、という意味だったにゃ」


愛の子、アイノコ。どうにも漢字変換できないと思ったら、頭の中での翻訳がうまくいっていないようだった。

あれ、でもなんで翻訳がうまくいかないんだろう。

その時館内中を揺らすような音が聞こえてきてびくついた。

わんわんと響くそれはこの建物の上に設置された鐘の音で、正直腹の底から響いてびっくりする。


「な、何!?」

「お昼の合図にゃ。さて、ご飯にゃ」

「うん、ありがとうねレイレ」

「構わないにゃ、知識の探求は人間の欲求の一つにゃ。何か知りたくなったらいつでもくるがいいにゃ!」


ちっちゃな片手をあげてかわいい肉球をこっちに向けてくるので、これは誘われてると思ってぷにぷにしたら猫パンチくらった。



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