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平坦な道を駆けていた。
誰に追われているわけでもない。
今はただひたすら走りたかった。息が切れ苦しいが、構わない。
いっそうこのまま心臓が止まってくれたら・・・
そう願わずには、いられない。
後追い自殺そんな馬鹿げた言葉が脳裏を過ぎる。
額から汗が噴き出し、顔を濡らす。
本当に濡らしているのは汗ではなく、涙だった。
走り慣れていない足は、躓き、思いっきり転倒し、膝が擦りむけ血が流れる。
そのまま地面の上で大の字になり、空を見上げた。
降りだしそうな満天の星空が僕を見下ろしていた。
天使に僕は会いたかった。
出会った女性の中にまだ一人もいない。
一人だけ私は神の使いなんて妙なことを口走った女はいたけど彼女も違っていた。
所詮、見た目に惑わされただけの事。
それを周りの奴らは、もっとものように語りたがる。
奴はミーハーだから、
奴は馬鹿だから
奴はいかれているから、
それならそうで良かった。噂は所詮噂、気にしても仕方がない。
それより、もっと楽しい事を見つけたい。
僕の心は、既に違うものを目指している。
愛なんて所詮、紛い物。
その場限りで充分、真実が一つあれば、それでよかった。




