ジャンプ=人生
「お嬢さん、それはなんだい?」
優しい目をしたその紳士は、私にそう問いを投げ掛けた。
その目は年より遥かに若く見え、知らないものを大人に聞く少年の様にキラキラとしていた。
唐突なその問いに私は、えっ、と言葉を漏らして漫画です。と出来る限るの笑顔で返す。
「知っているよ」
初老の社長は面白そうに笑いながらそう答えた。
「何が載っているんだい?なんで、買うんだい?」
次々と投げ掛けてくる質問に私は迷惑だと微塵も感じず、その揶揄しているのでは決して無い、純粋な疑問に答えようと色々考える。
「少年向けの雑誌ですから、スポーツとか、冒険の話とかが多いですね」
「なんで買うんだい?」
彼は、頷きもせず足りなかった質問の答えを求める。
『何故買うのか』
考えてもなかった。
続きが気になるから?
弟に頼まれたから?
違うような気がする。
「週刊ですから、続きが気になるんでしょう。」
私が困ってるんじゃないかとハラハラしている店主のおじさんが助け船。
それでも、彼は納得していない様子だ。
「弟に頼まれたんです。私は読みません」
「弟思いの良いお姉ちゃんなんですよ」
「そんなこと、ないですけど」
そう笑いながら言って恥ずかしくなる。
私は読む。
この漫画雑誌を。
毎週欠かさずに、最低二度は。
「それじゃあ」
私は一礼して店を出た。
背中から「ありがとうございました」とおじさんの声。
部屋に戻って私は読んだ。
毎週見てる漫画を、全部二度読んだ。
「お嬢さん、君は誰だい?」
優しい目をしたその紳士は、私にそう問いを投げ掛けた。
その目は年より遥かに若く見え、知らないものを大人に聞く少年の様にキラキラとしていた。
唐突なその問いに私は、えっ、と言葉を漏らして人間です。と出来る限るの笑顔で返す。
「知っているよ」
初老の社長は面白そうに笑いながらそう答えた。
「何が載っているんだい?なんで、生きるんだい?」