4 「境練次の憤怒と強欲」
畜生・・・・こんなことって。何者だ、こいつ。
「あんた、誰?僕らに歯向かうとろくなことにならないって、部屋の中見たらわかるでよね。さっさと放した方がいい。」
「はぁん?そうはいかないんだなぁ、ぼっちゃん。僕ちゃんなんとな~くネタはわかっちゃってんだよね。見られなきゃいいんでないかい?」
こいつ・・・田村の力に気づいてる。どうする、なんとかこいつを田村の前に引きずり出さねば。
「ふへへっはは。一巻の終わりどころか、こんなおいしいことになるとは、ね!」
僕の懐から今そこから奪ってきた金やら麻薬やらを奪い取って、これ以上ないご満悦の顔をする。僕の持ち物に手を出すか・・・こいつは、殺す。なにがあっても、こいつだけは殺す。
「返せ!」
「返せぇ?盗品じゃねぇか?偉そうに言ってんじゃねぇよ、坊主。それより、おい。なにあの化け物。お前のペット?」
「・・・」
意地でも言うものか。早く何とか手を・・・
ドゴォ
「ぐぅ」
倒れ伏し凄まじい痛みの根源を探って、腹を殴られたと悟る。胃液が逆流してひとしきり吐き続ける。
おごぉうぅうう。ぐぇええぇぇぇえ。
畜生、じくじょう。僕が、神にも等しい僕が、こんな目に・・・こいつ、こいつ・・・
「ぐぇ」
倒れ伏したところ、さらに頭を踏まれる。
「うがぁあぁぁぁ」
衝動的に怒りでわけが判らなくなり、立ち上がろうとしたところに、脳天から踵落しを喰らった。意識が瞬間飛ぶ。気づくと口に異物感があって、吐き出す。どうやら舌の一部を噛み切ってしまったようだ。取り返しのつかない体の損傷を負わされ、殺意が体に満ちる。なにがあってもどんなことがあっても最終的にはこいつを殺す。
「言えよ。この化け物はなんだ。」
「ふひぃ、ふふぅ・・・ほいふは、ひろほろひは。ほふろろぉりんろ、ふぅぅ、ふぅぅ」
うまくしゃべれない。こんな体になってしまったのか。くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそ、くそぅ。
「へっへへっへ。何言ってんだい?おい、化け物。お前さん、自己紹介しろ。」
「・・・私は田村幸一といいます。人を殺す特別な能力がある。」
田村ぁ、こいつを殺せ、殺せぇ。
「なんでこのガキは殺さない。」
「私は境くんの両親を私は殺してしまった。その償いです。」
殺せぇ、殺せぇ。
「償い?へへぇ、化け物の癖に人間みてぇなことをいいやがる。」
「私は真っ当な人間だ。ここで人を殺したのは、それが境くんの望みだからだ。」
殺れぇ、いまだ、さぁ!殺せぇ。
「だったら、今こいつの命を握ってる俺はお前の上の人間の更に上ってわけだ。俺の望みを聞いちゃくれないかなぁ。」
「それで、境くんを離してくれるなら。」
いいから、殺れぇ、なんでもいい、早く殺れぇ。
「俺にその能力くんない?」
「・・・不可能です。この力がどうして私に宿ったのかわからない。当然授受など出来ない。」
「そっか。どうしてもだめ?僕ちゃん欲しいなぁ、その力。」
「無理です。」
パンッ
僕から奪った拳銃で、男は田村を撃った。数分振りに対面した田村さんは胸を打ちぬかれて仰向けに倒れていた。
「|ら、らんれうっら。らんれ!《な、なんでうった。なんで!》」
僕の殺戮者が!僕の玩具が!僕の!僕だけの、僕だけの人殺しが!これから!これからだったのに。これからすべてをてにいれるはずだった。金も、権力も、人脈も、神にもなれるはずだったのに。神、僕が神に、神にぃぃぃ。
「ぐぉおぉぉぉおおおおおお」
僕の、僕の神への道、すべてを手にする道を・・・
「ふふ、ふへへへ。へへへへへ。吉田恵一様のものにならねぇなら死んじゃいなよ。」