1 「境練次の愉快」
グロイかもです。注意
床にへたり込んだ男が怯えている。男は屈強な体格をした、街にあっては肩をいからせて幅をとって歩くことを許可された人間に見える。その男に田村幸一が近づいていく。すると男は女みたいな声を上げて腰を浮かせ、僕の方へ擦り寄ってくる。
「た、たた、たす、助けてくれぇ。頼む。いや、頼みます。お願いします。」
そう叫び、僕に向かって土下座をする。礼、などという生易しいものではない、人生すべてを悔み贖罪する羊が神の御前でするほどに、畏れ、怯え、情けなくガキのように泣き伏せ、ひたすら床に額をこすりつけ、この僕に、この境練次に頭を垂れている。
男の後を追って、田村さんが背後に立つ。まあ、とはいえ、こいつの背中は天井を向いているから、正確には尻の後ろか。くっふふふ。田村さんが、何か問うように僕を見てくる。どう殺るのか、を聞いてるのだろう。僕は平伏する男の頭をそっとなでて、出来るだけ優しい声で言う。
「右足・右手・左足・左手・最後に首をゆっくりちぎってあげて下さい。途中で死なないように優しく、ね。」
「ぐ、ぐぎゃああぁぁぁっぁぁぁ、あぁああぁ、足がぁぁ足、あしがっぁぁ」
おっきなペンチで握り潰されたように、男の右足の付け根が潰れて本体と別れ別れになっている。蛙みたいに跳ね起きて、千切れた足を見て泣き喚く。
暗い愉悦が僕の心に溢れる。こんなに残酷な気持ちになるのは久しぶりだ、昔つがいのトンボを捕まえて、二匹一緒に踏み潰したことを思い出す。虫をライターで燃やしたことを思い出す。ウシガエルを焼却炉に放り込んだときのことを思い出す。残酷な心が止まらない。どうやら血に酔ったみたいだ。そういえば、辺りは呆れるほど血まみれだ。何人くらい殺ったんだろう。初めから数えてなかったからわからないや。今から数えるにも、みんなバラバラだからなぁ。テーブルに置かれた灰皿が血で一杯になっている。こりゃあ酷いや、ふふふ。
ブチブチブチブチブチッ
すごい音がして振り返ると、僕の愛して止まぬ殺戮者が、さっきの人間に最後の変形を施しているところだった。うふふ。すごい音するんだ。宙に浮いたダルマさんが、上と下からすごい力で引っ張られたように首が伸ばされてリコーダーくらいの太さになっている。
グバシャッッ
となって、鮮血が噴出す。へぇぇ人間の血ってたくさんあるもんなんだ。
ゆらりと立ち上がって、愛しの田村氏は僕を見る。
「うん、オッケーです。何度見てもすごいですねぇ。僕にも使えればいいのに、それ。まあ、いいか。貴方がいるし。さぁて、後は貰うもん貰って退散しましょう。」
田村さんは僕の求愛スルー。まぁいいけど、応えられても気持ち悪いしね。
どうでしょうか。書いてるうちにドンドン過激になっていった気がします。