第八話 決心
ヘルヘブン砂漠の任務から五日、ギンリュウは枯渇病のため“ガーディアン”直属の病院に入院していたが、三日で退院した。
第十二部隊宿舎 ギンリュウ・ディルの部屋
「……」
ギンリュウは暇だった、リエにしばらく大人しくしろっと言う命令を受けたからだ。
いくら、ギンリュウがリエを嫌っているとはいえ、リエは隊長だ、逆らうわけには行かない。
「はぁ……」
「暇そうね、ギンリュウ」
「!」
ギンリュウがベットに寝転がっていると誰かが声をかけた。ギンリュウは扉の方を向いた、そこにはリエがいた。
「隊長、何のようだよ」
「そんな口をたたけるなら、調子はいいみたいね」
「おかげさまでね」
リエは近くの椅子に座り、ギンリュウの方を向いた。
「んで、もう一回聞くけど、何のよう?」
「“レックス”の事、無理に言ってもらう必要はないわ」
「別に構わないよ、下手をしたらこれから関わるかもしれないからな」
ギンリュウは起きあがり、ベットの縁に腰をかけた。
「“レックス”、古の魔法を知るための研究機関で、そのためなら犯罪までをも犯す集団でもあるんだ」「……」
「とはいえ、“レックス”はあくまでも知るために研究しているからな、無意味な犯罪とかはしないさ」「でも見逃せないわね」
「まぁ、犯罪を犯しているからね」
リエはもう一つ、質問をした。
「ねぇ、戦乙女って知っている?」
「あぁ、ガゾーマから聞かされた程度だけど、たしか、人工的に古の魔力を埋め込まれた女性だって聞いた事あるぜ」
「なんで女性なのよ」
「さぁ?」
ギンリュウは肩をすくめた。
「でも、なんで戦乙女の事を聞くんだよ」
「えっと……」
「まぁ、大体察しは付くけど」
ギンリュウは頭をかきながら立った。
「戦乙女には気を付けろか。まぁ、あいつの言う事は俺ぐらいしかわからないだろうけど……」
「……?」
ギンリュウは意味深い顔をした。リエはなんでギンリュウがそんな顔をしたのかわからなかった。
「ねぇ、ギンリュウ」
リエは少し遠慮しがちにギンリュウに聞いた。
「なんだよ」
「ミリアから、あなたは重力系を使うと聞いたわ」
「じゃ、ミリアは何を使うかって聞きたいのか?」
リエは頷いた。ギンリュウは窓の方を向いた。
「ミリアは聖力系を使う、そしてこの前会った、姉さんが爆裂系、ショウ、俺の弟だが、あいつは闇力系を扱える」
「あなたの妹さんは?」
「ガゾーマは隕石系を秘めているって聞いた」
「聞いた?」
「俺とミリアが“レックス”の研究所を脱出したときには、あいつはあの状態だったからあまり見た事がないんだ」
「四年前の事故ってやつ?」
ギンリュウはリエの方を向いて、黙って頷いた。
「正直な所、俺も関わっていたらしいんだけど覚えていないんだ」
「……?」
「後で聞いた話、俺とハルはお互い、魔法の検証していたときに暴走したらしい」
「それで?」
「俺はミリアのおかげで助かったらしい、けど……」
ギンリュウは悔やんだ顔をした。しかしすぐにその顔やめて、いつもの顔に戻した。
「……ヘルヘブンでの任務、俺、暴走しただろ」
「えっ……!?」
リエは驚いた。
「覚えてなくてもわかる、いつの間にか病院にいたし、誰に聞いても省かされた辺りとかな」
「……」
「悪いけど、俺は勘がいいんだ」
「そう」
リエは顔をうつむく、ギンリュウの顔が見れない。
「別にバケモノって思っても構わない」
リエはますます、ギンリュウから背いた。ガゾーマの言葉がリエの脳裏をかけていくためでもあろう、「彼をバケモノとは呼ばないくれ」、この言葉をリエは忘れる事ができない。
「別に、あなたは私以外は仲がいいし、誰も貴方の事をバケモノとは思わないわ」
「……!」
ギンリュウは驚いた、てっきりリエにはバケモノ扱いされるであろうと思っていたからだ。
「あなたは人間、ただ他の人と違う能力をもっているだけの人間よ」
そう言って、リエは部屋を出る。
「あ、そうそう、明日から掃除とかやってよね」
「……了解、隊長」
ギンリュウは微笑んだ、リエはギンリュウの顔を見て思わず真っ赤になった。
「わ、わかればいいのよ、わかれば」
そう言ってリエは自分の部屋へと戻った。
(ありがとう、隊長、俺はもう暴走しない、自分のせいで人を傷付けたくないから……)
ギンリュウは心の中でそう決心した。
レックス研究所 ガゾーマの研究室
「ナミア、腕の怪我はどうかな?」
「すこぶるいいです、ガゾーマ様」
ガゾーマは回復液に満たされたカプセルに入っているナミアに声をかけた。
「すまない、私があんな事をしなければ、ギンリュウくんは暴走しなかっただろうし、君も怪我はしなかっただろう」
「それは言わない約束です」
「そうだったね……、そろそろいいだろ」
ガゾーマは隣にあった装置を操作し、カプセルにあった回復液はなくなり、カプセルは開きナミアは出てきた。
「……」
ナミアは本調子ではないのか、立とうとするとふらつく。
「大丈夫か、ナミア」
「はい、ガゾーマ様」
「重力系を少しかすめただけでここまで体力を奪うとはな」
ガゾーマは近くにあったタオルをナミアにかける。
「君はすぐに部屋に戻りなさい」
「しかし……」
「いいから、戻りなさい」
「わかりました……」
「それでいい」
ガゾーマは通信機を手にした。
「誰でもいいからすぐに来てほしい、ナミアを部屋まで送ってもらえないか?」
『了解しました』
通信がきれると二人の警備兵がナミアを支え、研究室を出た。
(……戦乙女、古の魔法を兵器として扱う、そんな事はさせん!)
ガゾーマは古の魔法のデータを見始めた。
ギンリュウとガゾーマ、二人の決心はこれから何を生むのか……。
これで第一章は完結です。