第四話 出動!ヒトナキの森
ギンリュウ達が入隊して一週間、現在ギンリュウはディルとロウガという赤毛で兄貴的存在の人狼と共に庭掃除をやっている。
「くそ、あの隊長、マジでこんな広い庭の掃除をやらせなくてもいいじゃないか」
「というギンもきちんと毎日、掃除やらなんやらをこなしているじゃないか」
「うっ、それは家では俺が家事をしていましたから、癖って言うか、なんていうか」
とはいえ、ギンリュウはリエと毎日ケンカしていた。
「つーか、ケンカするほど、仲がいいってよく言うけどさぁ、ギンと隊長の場合はケンカするほど仲が悪くなっていないか?」
「あ、それはありますよね」
「うるせぇ!さっさと庭掃除を終わらして、風呂掃除に行くぞ!」
ギンリュウはせっせと箒をはく、ディルとロウガはため息をついた。そんな彼らを部屋の窓から見ていた人がいた、リエであった。
「ふふ、いいざまね。しかし本当にギンリュウって奴はむかつくわね、なんとかしないと・・・・・・」
そんなとき、扉からノックの音をした。
「はーい、開いているわよ」
「失礼します」
入ってきたのはこの部隊のもう一人の副隊長、アスカ・ガーヴァルであった。
「何のよう?」
「実は支部から早急にやってほしい任務があると伝達してきて」
「どんな任務?」
「えっと・・・・・・」
アスカが任務の内容を言うとリエは少々不気味な笑顔をした。
「それはいいわぁ、この任務ではっきりと力の差ってやつを思い知らしてやるわ!」
リエは小さな声で笑う。
「・・・・・・?」
「どうしました?ギンリュウさん」
「いや、今、寒気って言うか、なんかおぞましい気配を感じてしまったのでな」
「気のせいだろ、早く行こうぜ」
ギンリュウ達は庭掃除を終えて、宿舎へ入ろうとした時にルエが宿舎の中から声をかけてきた。
「お前ら、掃除はいい!会議室に来い!」
「会議室に?」
ギンリュウ達はすぐさま掃除道具を片づけて、会議室に向かった。
第十二部隊 宿舎 会議室
「今から任務の内容を説明するわ!」
リエはなんだか弾んだ声で嬉しそうに言った。
「なんか、ご機嫌いいですね、隊長」
ギンリュウは皮肉を込めて言った、なんだか嫌な予感しかしなかったからでもあったが、何よりギンリュウとリエはお互い仲が悪い、喧嘩腰になるほど。
リエはでかいディスプレイに電源を入れ、ナチュリコムの全体図を出した。
「今回はここから北三十㎞離れた、ヒトナキの森に向かうわ」
「ヒトナキの森・・・・・・」
ギンリュウは自然や動物が好きで、よく観察しに行った。ヒトナキの森は一週間に一度行った程、馴染みのある森であった。
「この森でワイバーンが住み着いたらしいの、人を襲っているから今回はその討伐ね」
「ワイバーン?あの森にはワイバーンは住み着かないはずだが・・・・・・?」
ギンリュウが考えていた、ワイバーンはかなりの種類はいるがどれもヒトナキの森を好まず住み着かない、なぜならヒトナキの森はワイバーンの天敵とも言える植物があるからだ。
「もしかして、ヒトナキの森に適応した新種のワイバーン?でもな・・・・・・」
「ギンリュウ、考え事は後にしてよ。会議中よ?」
「へいへい、申し訳ございませんでした」
「まったく、相変わらずむかつく態度をとるわね」
「隊長ほどではあるせんが?」
「なんですって!」
二人はいがみ合った、その場にいた全員はどうしてこうまでこの二人は仲が悪いのだろう、誰もが思っていた。
「二人とも、会議中だ、止めないか!」
バーシュはケンカしている二人を睨んだ、二人を止めるのはいつもバーシュの役目だった。さすがの二人もバーシュには勝てない、二人は大人しく引き下がる事にした。
「で今回、実行部隊の編成は?」
「私とアスカさん、ルエさんにバーシュさん、ミリアちゃんにディル、それとギンリュウ、あなたも連れて行く事にしたわ、感謝しなさい」
「なんで、いちいち、感謝しなくちゃならんいんだよ!」
「あら、ただ単にあなた達、新人の実力を見たいだけよ」
「あっそ、じゃあ、俺の実力をみて、嘆くなよ」
「誰が嘆きますか」
二人は再び、睨み合ったが、バーシュはまた二人を睨み、結局引き下がる事になった。
第十二部隊 宿舎屋上
「なんか無駄に広いなぁと思ったら、こういう事だったんですね」
「どぉりで、ここに洗濯物を干すなって言われるはずだよ」
ギンリュウ達の目の前にあるのは、ヘリ。これでヒトナキの森に向かうらしい。
「何やってんの、さっさと乗りなさい!もしかして怖くなったとか」
「誰が怖くなったって!」
ギンリュウは怒りながらヘリに乗る、呆れたミリア達も続けてヘリに乗る。
「絶対、隊長に負けない!」
「それはこっちのセリフよ!」
ヘリの中でもケンカしてバーシュに睨まれるギンリュウとリエだったが、この場にいる全員はこれから起こる異変はまだ知らない・・・・・・。