第二話 入隊
ガーディアン育成学校 ナチュリコム校
「えっと、講堂で就任式があるって聞いたけど、講堂ってどこだ?」
ギンリュウは学校に着いたまでは良かったが就任式の式場である講堂がどこだがわからなくなってしまった。
「ここの学校は相変わらず広いから迷子になりやすいんだよな・・・・・・」
辺りを見回しているとここの生徒らしき少年がいた。
「しょうがないか、あの子に聞いてみよう」
ギンリュウは少年の方に向かう、すると少年の方もこちらに気づいたのかギンリュウの方に向かってくる。
少年はまだ幼い顔をしていたが、身長は平均的だった。多分17かそこらであろうとギンリュウは納得していた。ギンリュウの場合、年齢の割には身長も高いし大人びた顔つきをしている。たまに二十三歳と間違われた事もあった。
「「あの・・・・・・」」
お互いに声をかけようとするが被ってしまった。
「え?」
「あ?」
「あのー、もしかして、そちらも迷子ですか?」
「と言う事は君もか・・・・・・」
二人は同時にため息をついた。
「しょうがない、情けないがミリアに連絡するとするか」
ギンリュウは小型の携帯機器“ゼローム”を取り出した。
「すいません、役に立てなくて・・・・・・」
「いいよ、俺も迷子なんだから、えっと、お、通じた」
『はい、スペイエルですけどってギンくん、どうしたの?』
「わりぃ、ミリア、俺さ、どうやら迷子になったみたいでさ」
『わかった、向かいに行けばいいのね、今どこ?』
「ここは・・・・・・」
「南校舎の裏側です」
場所を教えてくれたのはさっきの少年だった。
「だとよ」
『わかった、すぐに行くね』
「悪いな、よろしく頼むわ」
ギンリュウは“ゼローム”をしまって、少年としばらく雑談する事になった。
「僕はディネカル・アークソンと申します、みなさんからディルと呼ばれています」
「俺はギンリュウ、ギンリュウ・スペイエルっていうんだ」
「スペイエル・・・・・・、さっき、ミリアさんという方と話していましたが、もしかしてミリア・スペイエルのご家族かなにかですか?」
「あぁ、俺はあいつの双子の兄だ」
「そうなんですか」
そんな話をしているとミリアが迎えにやって来た。
ガーディアン育成学校 ナチュリコム校 講堂
「おめでとう、訓練生諸君、そして受験合格者諸君も、君たちはこれからこの“ヒュースター”の秩序を守るために精一杯頑張ってほしい」
今回の合格者や卒業者は約160人、その大半が訓練生だった。
「えー、まず、今回の学生首席と受験首席を紹介したいと思う、名前を呼ばれた者は前に出てきてください」
学生首席と受験首席は名誉のあるものらしいがギンリュウにとってはどうでも良い事だったが・・・・・・。
「まず、学生首席はミリア・スペイエル」
「はい」
(あいつが学生首席か、ディルの言うとおりだな)
「そして、受験首席はギンリュウ・スペイエル!」
「え、あ、はい」
講堂全体が騒ぎ出した、ギンリュウは慌てて立ち上がり、壇上にあがった。
「スペイエル?」
「もしかして、ミリアさんのご兄妹?」
「兄妹そろって首席を取るなんてすごいな」
そんな事をささやきが聞こえていたがギンリュウはものすごく緊張していたために頭の中を素通りしていった。
「ギンくん、いつも通りにしていいよ」
「俺が首席に選ばれるなんて、考えてもなかった」
「私は予想していたけど?」
二人はナチュリコム校の学長から祝辞と配属される部隊が書かれた紙を渡され、二人はそれぞれ席に戻った。
就任式は終わり、二人はホバーバイクがある場所に向かった。
「ねぇ、ギンくんはどこに部隊に配属されたの?」
「さっき、見たけど第十二部隊だってさ」
「きゃぁー、本当?私も十二部隊なのよ」
ミリアは大げさに喜ぶ、ギンリュウと一緒だったのがよほど嬉しかったのだろう。
「まったく、喜ぶのは良いんだけどさ、大げさしすぎるぞ」
「だって、ギンくんと一緒に戦えるなんて、うれしいに決まってんじゃん」
「あのな・・・・・・」
ギンリュウはため息をつく、今は一緒でもこの後、転属やら何やらで離ればなれになるかもしれないからだ。
「あのー」
「ん?」
ギンリュウとミリアは声のする方を向いた、そこにいたのはギンリュウと一緒に迷子になったディルだった。
「さっき、お二人の話が聞こえちゃたんですけど、十二部隊なのですか?」
「え、あぁ、そうだよ」
「良かった、僕も十二部隊に配属になったんですよ!」
「本当か!」
「これからよろしくね!」
「はい、一緒に頑張りましょう」
「じゃ、第十二部隊の宿舎に向かうとするか」
「ちょっと待って、ミリア」
ミリアはギンリュウのバイクに乗ろうとするが、ギンリュウに止められる。
「どうしたの、ギンくん?」
「このバイクは二人までしか乗れないんだぞ」
「あ、そっか」
「別に僕は構いませんよ」
「そういうわけもいかないよ」
そんな時、偶然通りすがった男性後ろから声をかけてきた。
「君たち、なにか困った事でもあったのか?」
その男はここより南西にある国の髪型、サムライヘヤーをしており、顔つきもかなり渋く、ものすごく落ち着いた口調だった。
「あ、いえ、これから第十二部隊の宿舎に向かいたいのですが、俺のバイクが二人乗りでして・・・・・・」
「第十二?だったら俺も向かうところだ、良かったら俺の車で行かないか?」
「え、いいんですか?」
「バイクは荷台に乗せればいいだろう」
「あ、ありがとうございます!」
こうして、同じ第十二部隊に配属となった男、バーシュ・ガランファルと行く事になった。
それから約一時間、ついに第十二部隊の宿舎の正門に着いた。
「うへー、結構広いな・・・・・・」
ぱっと見て二十ヘクタール(一辺百メートルの正方形の面積が一ヘクタール)ぐらいはあり、そこに正門に向かってコの字型の二階建ての宿舎があり、これもかなり大きい。
「なんせ、一部隊に二十五人以上がいるって話ですから、当然ちゃ当然ですよ」
「とりあえず、インターホンを鳴らそうよ」
ギンリュウは車から降りて正門の柱にあるインターホンを鳴らす。
ピーポーン
『はい、どなたでしょうか?』
出たのは若干声が低いが耳の良いギンリュウは女性だとわかった。
「あの、今日から配属となりましたギンリュウ・スペイエルですけど・・・・・・」
『あぁ!新人か、わかった、ちょっと待っててくれ』
と言ってインターホンが切れた。
数分後、宿舎の中から一人の女性が出てきた、かなり鍛えられているが筋肉はつけすぎずにちょうど良い感じで所々に傷跡がある。
「おっと、一人じゃないのか」
「車はどうすれば?」
「今、門を全開するから、開けたら入ってくれ」
「了解した」
女性が門を開けるとバーシュは車を敷地内に入れる。
「今回は四人配属される予定だけど・・・・・・、全員いるな、よし、会議室に案内するからついてきてくれないか」
女性の言うままにギンリュウ達は宿舎内に入る。
中に入ると目の前に階段があって左右に廊下がある、ルエは左に曲がった。
「俺はルエ・ディルティーラ、この部隊の副隊長を務めているんだ」
「ルエ・・・・・・?聞いた事がある確か“聖女を守りし者”の一人だ」
「“聖女を守りし者”?」
「あぁ、隊長の直属をそう呼ぶ奴いるな、おっと、着いたぞ」
ルエは左廊下の一番奥にある扉をノックをした。
「隊長、新人を連れてきましたよ」
「入りなさい」
扉を開け、ルエが入る、続いてギンリュウ達が入る。
「え、これは・・・・・・」
ギンリュウ達は目を疑う、隊員の大半が女性で占めており、男性は数える程しかいない。
「隊長、今回、育成学校の卒業生と試験の合格者が二名ずついます」
「そう、わかったわ・・・・・・」
ルエの言った事に答えたのは右側にサイドポニーをした、ギンリュウより若干幼い顔立ちをした女性が答えた。
「ようこそ、第十二部隊、通称“聖女部隊”へ」
「“聖女部隊”・・・・・・?」
女性は大半を占める第十二部隊、そしてこれから起こる波乱の幕開けは誰も知らなかった。