第十八話 首都へ!
最近、ディルの事に関して、この章だけでは終わらない事に気が付いた。(汗)
ディル達はギンハクの森で迷子になっていた。理由は単純明解だった。
「あっち!」
“バジリスク”の機関長、ハーディアの妹、エーマ。彼女は単純な道でも迷う方向音痴だった。
「では、こっちにしましょう」
エーマ以外の三人はエーマが指した道とは別の道を選んだ。
「ちょ、ちょっと!?なんで?」
「「「あなた(お前)の方向感覚は信用なりませんから」」」
ばっさりと言う。当然のことであった。
「しかし、よくもまぁ、今まで無事でいられたなぁ」
「はい、正直に言いますと迷子になった時はもう駄目かと思いました」
「本当ですね。この子がいなきゃのたれ死んでた」
ディルはそう言って隣で歩いている魔物、“銀狼”を撫でた。
「バウゥ!」
「ぶ~、私の勘よりその魔物の方が勘がいいわけ?」
「「「当然」」」
「バウ……」
「はう……」
銀狼まで呆れてしまった。絶対にこの人を一人にさせてはならないっと三人は誓った。
「あと少しで森を抜けます」
「じゃあ、この子ともお別れだね。ありがとう、群れに戻って良いよ!」
ディルが銀狼の額に手を当てると銀狼はそのままギンハクの森の奥に行ってしまった。
「じゃあ、行くか!」
「えぇ、首都バゼルンドへ参りましょう」
「ほらほらエーマさん、いつまでふてくされているのですか?」
「……」
ディルはエーマの手を無理矢理引っ張り、四人はギンハクの森を出た。
一方、ギンリュウ達は……。
「駄目ね、ここも目撃情報はないみたい」
ガラアンドで情報収集をしていたギンリュウ達は宿の食堂で集めた情報を言い合っていたが、このガラアンドでディルの目撃情報がなかった。
「やはり、バゼルンドに行かなければならないのか……」
バーシュは複雑な表情になった。
「あぁ、王に会いたくないのですか?」
「いや……」
ギンリュウはバーシュに質問したら、これまた複雑な顔をしていた。
「たしかにこの国の絶対王政が嫌でこの国を出ていってしまったが、王に会いたくないわけではない」
「そうなんですか?」
「あぁ、この国の真実の権力者は王の側にいる大臣達だ。俺は何でも抗議したが駄目だった」
「うわぁ」
ギンリュウとルエは驚愕な顔をした。
「……実はな、隊長達とは別に情報を集めていたのだ」
「別の?」
リエは眉をひそめた。
「今の王の事だ。俺がこの国を出ていったのは五年前でな、もしかしたら王が変わっているかもしれないと思ってな」
「あぁ、そういえば一時別行動してましたね」
ギンリュウは思い出したような顔をした。バーシュは話を続けた。
「案の定、王は変わっていた。おかしな事に先王の娘が王になっていたのだ」
「どういう事ですか?」
「王には息子がいたはずなのだ。なのに娘が王になっているのはおかしい」
バーシュは何かあると思っていた。だが、その話を聞いたギンリュウ達も同じ事を考えていた。
「一応、その娘はいくつなのですか?」
「確か、俺がこの国を出ていった時はたしか十歳いくかいかないの歳だったのと思う」
「息子の方は?」
「十六だったはずだ」
バーシュは思い出したような口調で言った。
「う~ん」
リエは考えていた。そして一つの結論に辿り着いた。
「よし、首都に行くわよ!」
「「「「はぁ?」」」」
リエ以外は驚いた。
「だって、どっちみち首都に行かないと支部に行けないし。それにうまくいけばその王に会えるかもしれないしね」
「まぁ、そうだな。俺は賛成するけど。決めるのはバーシュさんです」
バーシュは悩んだ。五年前、裏切りとしてこの国を出ていった時まで今の王とは親しかった。だから、会いに行かなければならない、先王のために……。
「……いこう、王に会い。先王はどうしているのかも聞きたい」
「ほんじゃあ、明日朝一でこの街を出ようぜ」
「そうですね、行きましょう」
「それじゃ決定ね」
バーシュの決意を聞き、リエ達も賛成した。
「よし!とにかくディルを探しつつ、その王に会いに行こうぜ!」
「「「おー!」」」
そんなギンリュウ達の様子を見て、バーシュは微笑んだ。
(ありがとう、みんな)
こうしてギンリュウ達は首都に行くことを決めた。出発するのは明日だと決め、その夜を過ごした。
首都 バゼルンド バゼルンド城 王の間
「と言うわけで、この法律を成立させたいのですが……」
「駄目じゃ」
現在、王の間では王であるルーチェがいないにも関わらず会議を行っていた。
「どうしてですか!いくら絶対王政とは言え市民の声も聞くべきです。さらにこの法律は王であるルーチェ様自身が考えた法律です!」
「あんな小娘の考えた法律でこの国が良くなるとは思えないな」
「貴様!ルーチェ様を侮辱するつもりか!?」
どうした訳か三人の年老いた大臣と二人の近衛兵が言い争っていた。
「この法律は政治や経済を知る我にもいい法律だと思うがな。汝らの意見も聞きたい」
「ふん、あの駄王の娘なんぞの法律を受け入れたらこの国は一気に駄目なる」
「駄目にしているのは貴様らであろう!」
一人の近衛兵が声を荒立てている。実際、この国の経済は周りの国に比べかなり遅れている。先王はそれでは駄目だと貿易などを行っているのだが……。
「貴様らのその保守的な態度のせいで民が苦しんでいる!何故、それがわからんのか!」
「落ち着け、レイフェイ。これ以上、言っても無駄であろう。それにあの件もある」
「あぁ、あの堕落近衛兵の事か」
「バーシュ殿は堕落などありません!この国を貢献した立派な近衛兵です。いくら裏切りをしたとはいえ堕落っと言うではない!」
さらにレイフェイ・ラーンは声を荒立てた。
「……バーシュ殿の件については我らにお任せを。汝らが手を出す事ではない」
「わかっておる。いいか?必ず抹殺しなさい」
「……承知」
そう言って、二人の近衛兵は王の間から出ていった。
バゼルンド城 渡り廊下
「カエラル殿!本当にバーシュ殿を殺す気ですか!?」
「まさか、報告によればバーシュ殿は“ガーディアン”、五年前に裏切ったとは言え殺すと問題が出てくる」
カエラル・バーオラは冷静な口調で言う。彼は近衛兵だけではなく政治家としてもこの国では有名だった。
「まったく、大臣達は自分達の意見を無理矢理通し。王であるルーチェ様の必死に考えた法律をまったく見向きもせずに無視をする」
レイフェイは怒りを込めて言った。この国は今や年老いた大臣に権力を握られている。
「このままでは大臣達に殺された先王様に申し訳ない……」
「しかし、証拠もなく、問いただす事はできない」
カエラルは冷静な口調で言っているが表情は悔しいそうな顔をしていた。
「では、どうすればいいのだ!」
「まずはバーシュ殿が探しているディネカルという者を探そう。そうすれば、ここに留まってくれなくても姫のために協力してくれるかもしてん」
「そうだな、バーシュ殿には悪いがその仲間はこちらで保護をしよう」
二人は近衛兵の宿舎に向かった。
翌日 ガラアンド
ギンリュウ達は宿を出て、車に乗り込んだ。
「よし、全員乗ったな。出発するぞ」
ギンリュウ達を乗せた車は首都を目指して走り出した。これからこの国を取り巻く出来事が起こることを知らずに……。
とんでもないことになった……。