第十四話 三人目の戦乙女
早くも三人目、登場です。
今回は少し長いです。
マリンはゆっくりとギンリュウ達に近づく、不気味な笑みを浮かべながら。
「待ってたわ、三日ぐらいかしら、もう暇で暇でしょうがなかったわよ」
「マリンっと言ったな、何が目的だ、それに待ってたって……」
「モチロン、封印を解くためよ、愛するお姉さまのためにもね……」
マリンは恋する乙女のような、うっとりとした顔をした。
「あなた、古の魔法がどんなに危険か、わかっているの?」
リエはマリンに問いかけた、リエはギンリュウが心配だった。嫌いではあった、彼はむかつく存在と今でも思っている。
しかし彼女はギンリュウが暴走する所を見た、下手をしたらギンリュウの命が失われた可能性だってある、使用者の命まで蝕むかもしれない、だからだった。
「わかっているわよ、でもね、お姉さまのためならば、私はどんな危険だってするわ」
「つまりだ、力ずくで止めるしか方法しかないって事か」
ギンリュウは“アースバーン”を鞘から抜き、構えた。ディーンとメアルとは違う、あの二人には敵意はあまり感じなかったが、マリンは完全な敵意がある。
「悪いけど、もう準備は整ったの、もう邪魔はできないわ」
「何を言って……」
マリンはさらに不気味な笑みを浮かべる。
するとマリンの足下にあった魔法陣が光りだす。
「な、なんなの、これ」
「……!ぐぅ!?」
ギンリュウがいきなり苦しみだす、いや、ギンリュウだけではなかった、ディーンもメアル、事もあろうか魔法陣を発動し始めた張本人であるマリンまでもが苦しみ始めた。
「あぐ……」
「メアル!ギンリュウさん!」
「マリン……、お前、何を……」
「あは、あはは、これはきついわ、でもお姉さまのためなら……、邪神状態、いいえ、真の聖鬼神の力が手に入れるために!」
「「「……!!」」」
「真の力、だと」
「あなた達は……邪神……状態は暴走した時だと……思ってたでしょ?」
マリンは苦しみながらも、しゃべり始めた。
「……?どういう事だ……」「なん……だと……」
「あなた……達……は……アァァァァ!!」
マリンは叫び始めた、黒い気がマリンを覆い始める。
「ギンリュウ!しっかりしなさい!」
「無茶……言うよ……」
リエはギンリュウの側で喝を飛ばし、何とか意識を保とうとした。
「はぁ……はぁ……」
「メアル、しっかり、僕が側にいてあげるから!」
「ディネ……カル」
ディルはメアルが力に飲み込まれないように言葉をかける、しかし、メアルは黒い気に覆われ始めた。
「ダメ!メアル、意識をしっかり持って!」
「ウゥゥ……」
「このままでは、三人とも、危ないぞ!」
「トニカク、魔法陣ヲ破壊シマショウ!」
アスカとバスカルは魔法陣を破壊するために武器を魔法陣の線に突き立てようとした。
魔法陣は強力な魔法を出すために必要な物だ、しかし、線一本でも途切れると破壊され消えてしまう。
「サセナイ!!グラビティ・フィールド!!」
「ヌオ!?」
「くっ!」
マリンは巨大な結界を張り、結界に立ち入れなくさせた。
「アハハハハ、誰モソンナ事ハサセナイ、オ姉サマノタメニモ!!!!」
完全にマリンは邪神状態になり、黒い翼、赤い目、黒い髪、その姿はあの時のギンリュウと一緒の姿がそこにあった。
「サァ、アナタ達モ、力ヲ解放シナサイ!!!」
「「そんなの……」」
そう言ったのはギンリュウとディーンだった。
「「お断りだ(よ)!!!」」
ギンリュウとディーンは苦しみながらも、詠唱を始めた。古の魔法、上級クラスを放つためだ。
「やめなさい、ギンリュウ!」
「ディーン……」
ギンリュウとディーンは抵抗しているのかかなり邪神状態になるが遅かった、だからこそできるのであろう。
「我の名において命ずる、重力よ」
「その爆発は全てを破壊のため」
「我の手に集まり、そして解き放ちたまえ!!」
「我の敵を消滅させろ!!」
すると二人の手には魔法陣が展開された、そして……。
「グラビティ・ブレイク!!!!」
「ギガント・バースト!!!!」
ギンリュウの魔法で重力の結界にヒビが入る、そこにディーンが放った魔法はヒビの入った結界を破壊する。
「「ぶち壊せーーーー!!」」
「ナンダト……、聖鬼神ナラトモカク、ディーン、何故?」
「私の……親友を……苦しめて……黙って……いられないわよ……」
「“バジリスク”の思い通りにはさせない……ぜ」
結界は破れ、二人の上級魔法は魔法陣と結界を破壊尽くす、マリンをも巻き込んで……。
「「ウオォォォォオオオ!!!!」」
「グワァァァァァアアアア!!!??」
魔法陣は破壊され、ギンリュウ達から黒い気は消える、目も元に戻り、ギンリュウはフッと息を吹いた。「ギンリュウ!大丈夫!?」
「おや、珍しい、隊長が俺の事を心配してたよ」
「べ、別に心配なんか……」
「メアル、大丈夫?」
「はい……」
「良かったー」
ギンリュウは中央に目をやる、そこにあるのは大穴、そしてマリンはとっさの事で避けたのだろう、大穴の横にいた。
「しぶといぜ……」
ギンリュウとディーン、メアルは邪神状態ではなっていないため、枯渇病にはならなかったが、マリンは枯渇病になっていた。
「くそ……、こんな……」
ギンリュウは立ち上がり、リエと共にマリンを拘束しにマリンの元に行った。
「さぁ、勘弁しなさい、もう抵抗はできないでしょ?」
「……」
「お前にはたっぷりと聞きたい事があるんだよ」
「……ふ」
マリンは不敵な笑みを浮かべた。
「おい、何、笑って……?」
その時、目の前に女性が現れた、白衣をまとい、美女って言っても過言ではない顔立ち、黒く長い髪。
「「……!!」」
「お……姉……さま」
「大丈夫かしら、マリン?」
「申し訳ございません、任務は失敗して……」
「何も言わなくっていいのよ、さぁ、帰りましょう」
女性はマリンを抱きかかえ、その場を去ろうとした。
「待て!」
ギンリュウは当然の事ながらも呼び止めた、女性の首筋に剣を突きつけながら。
「お前、何者だ!」
女性は振り返り、こう答えた。
「私は“バジリスク”総機関長、ハーディア・マスルク」
「……!!」
ギンリュウはふっと、昔の事を思い出す。
ガゾーマは古の魔法を知るためならば、犯罪だってやる、しかし、人間らしさは失わなかった。
そのガゾーマからたった一人、絶対に近づくなと言われた研究員がいた、それが今、目の前にいるのだった。
「お前がハーディア、あのガゾーマさえ嫌われている元“レックス”の研究員……」
「何ですって……」
「……」
ハーディアはギンリュウと面を向かい合った。
「思い出したわ、あなた、零弐号じゃない」
「零弐号……?」
リエは頭を傾げた、一体、誰の事を示しているのかわからない、するとギンリュウが口を開いた。
「懐かしい、呼び方をしてくれて、どうも……」
「ギンリュウさん、どういう事?」
ディルはメアルを支えながらギンリュウに聞いた。
「零弐号……、俺が“レックス”にいた時の名前だよ、正確にはもう一つの名だがな」
「化け物である、あなたに二つの名前なんて不必要でしょ?零弐号」
「そんな物でギンリュウを呼ばないで!!」
リエもハーディアに剣を突きつける。
「ギンリュウは人間!化け物なんかじゃない!」
「隊長……」
ギンリュウはリエに心から感謝していた、いくらお互い嫌いでも、リエはギンリュウの事を化け物だと一度も思わなかった。
「まぁいいわ、メアル、ディーン、あなた達も帰りなさい、エーマが連絡もないって心配してたから」
「……」
「……了解」
「それじゃ、ついでにあなた達を入り口の近くまで送りましょう」
ハーディアはテレポの宝石を取り出し、魔法名を唱えた。
「ま、待ちやがれ!」
「テレポ・レインズ!」
ギンリュウ達は光に包まれ、その場から離れた。
次回でドゥアーク神殿編は終了です、長かった……。