第九話 休暇
第二章突入!でもこの話は番外編だと思ってください。
ヘルヘブン砂漠での任務から三週間、今日から一週間、第十二部隊は休暇になる。“ガーディアン”は部隊をいくつかのグループに分け、二ヶ月に一回、一週間の休みをもらえる。
ギンリュウは自分の部屋で寝ていた。
「ん、んん……」
窓から入る日差しはギンリュウの顔にかかる、まぶしくとてもではないが寝てはいらない、というよりは暑くって眠気が妨げる。
「うぁ……?」
ギンリュウは目を覚めた。
「今、何時だ?」
ギンリュウは机の上に置いてある“ゼローム”で時間を確かめる。午前10:00っと画面に映し出された。
「……起きるか」
ベットから降りると、普段の戦闘服とは違い、私服に着替える。灰色のYシャツに紺色のズボンをはく、髪も普段はまとめないが白いリボンで一つにまとめる。
「ディルは……、食堂か?」
ギンリュウは部屋を出る、すると隣の部屋もドアが開き、誰かが出てくる。私服姿のリエだった。
「「あ……」」
思わず声が被ってしまった。ギンリュウは嫌いのはずのリエの格好にみとれていた。リエは黒のワンピースに白の薄い上着を着ている。
「な、何よ……」
「あ、いや、なんでもない……」
どうやらリエも普段見ないギンリュウの私服姿にみとれていたらしい。
「「……」」
そのまま、二人は一緒に一階にある食堂に向かった。
食堂に入るとディルとミリア、そしてアスカの妹であるリリを含む五人しかいなかった。
「あらルエとアスカは?」
「バーシュさんもいない……」
ギンリュウはまだ眠いのかあくびをしながら背伸びした。
「あの三人なら、この前の任務を報告ついでに飲みに行くって言ってましたよ」
「……あの二人はともかくバーシュさんは意外だわ」
「そう言う隊長は飲まないのか?」
ギンリュウは目を半目にして言った。
「……ない」
「はい?」
「どーせ、飲めないわよ、私は!」
「逆ギレしないでくれよ……」
「最近のギンリュウさん、隊長の扱いに慣れてる……」
リリは冷静に物事を見ていた感想を言った。
「しかし、七人だけかぁ……」
「あのさ、俺、自然観察に……」
「よし、デパートに服やら何やらを買いに行くわよ!」
「俺の話を聞けよ」
リエはギンリュウの意見も聞かずにデパートに行く事になった。
ベーゼル中心部 コーレルデパート
コーレルは世界有数のデパートでかなりの品揃えと価格の安さが売りらしい。
「さぁーて!買い物しまくるわよ!」
「おぉー!」
リエとミリアはかなりはしゃいでいる、リリと他の三人もミリア達程ではないがかなり気分が浮いているようだ、でギンリュウとディルは……。
「俺たち、ぜってー荷物持ちだろうな」
「まぁ、いいじゃないですか?」
「だな、とりあえず俺たちは別行動だ、荷物持ちは面倒でやだ」
「同感です」
ギンリュウとディルはさっさとリエ達とは別の方向に行ってしまった。
「さぁ、ギンリュウ!ディネカル!荷物持ち、よろし……」
「あの二人なら、別行動するって言ってました」
「ふつーそうなるわよね」
「……あいつらー!」
リエは憤慨してしまった、ミリアはリエを押さえつけ引きずるように自分たちの目的である物が売っている売り場に向かう。
一時間後……
「とりあえず、お互い買いたいもんも買ったし、隊長達と合流するか」
「ええ、そうですね」
ギンリュウは“ゼローム”を取り出し、ミリアにかけた。
『はいはい、まっててギンくん』
「ん?なにをやっているんだ?」
『いやぁ~、隊長をもう少しかわいくできないかなーって試行錯誤しているところ』
ギンリュウは呆れてしまった、ミリアの趣味は服のコーディネイトだ。昔、一度だけギンリュウも無理矢理させられた事がある、少女趣味満載の服装だったため、ギンリュウに深い心の傷を付けた。
「あまり、無理させるなよ。俺たちはそっち向かうからな」
『うん、了解』
っと言って通信が切れる、ギンリュウ達はミリア達がいるところに向かった。
「あ、来ました」
リリはギンリュウとディルを見つけると手を大きく振った。
「あ、いましたね」
「あいつら、買い物するだけしやがって……」
すると試着室からミリアが出てきた。
「あ、ギンくん、ちょうど良かった」
「あ?」
「今ね、隊長のコーディネイトが終わったところなのよ」
「ぬおっ、何するんだよ!」
ミリアは満足げな笑顔でギンリュウを試着室前に引っ張り出した。
「隊長、ギンくんを連れてきましたから、開けますね」
「ちょ、ちょっと待って、これをギンリュウに見せるわけ!?」
試着室からリエの声が聞こえる。
「見せるためにコーディネイトしたわけですから」
「おい、あくまで店の物だろ?」
「大丈夫、買ったから」
「「「買ったんかーい!!」」」
あらゆる所からツッコミがきた。そしてギンリュウ曰く「ありがとうございます」らしい。
「とりあえず、開けるね隊長~」
「ま、待って……」
「オープン!」
ミリアが試着室のカーテンを開ける、現れたのは白をメインとしゴスロリ風の服装のリエだった、年齢の割には幼い顔をしているのもあって、意外に合っていた。
「あうう……」
「隊長、かわいいですよ」
リリは目を輝かせる。
「本当に似合っていますよ、ね、ギンリュウさん……」
ギンリュウはぼぉーとしている、顔を真っ赤にしながら。
「あのーギンリュウさん?」
「え、あ、なんだ?」
「いや、今ぼぉーとしていたような……」
「ん、んなわけないだろ!なんで俺が隊長にみとれないといけないだ!?」
「いや、そこまで言ってないし……」
「あ……」
ギンリュウはさらに顔を真っ赤にする。するとリエがギンリュウの前に立つ。
「いーい、これはみ、ミリアが無理矢理、着せられた物で、別に、その……」
リエは顔を真っ赤にする、別の意味で……。その時ミリアがリエの後ろに立ち、トンっと背中を押した。
「きゃぁ!?」
「え、ちょっ!?」
リエはギンリュウに抱き付き、一緒に倒れた。
「……」
「……」
今の二人の状況見れば、誰もが勘違いをするであろう。倒れたギンリュウの上にゴスロリ姿のリエが抱き付いている状態は見る者を恥ずかしくさせた。
「いやー、隊長さん、大胆ですね」
「ねぇー」
「最近、お二人がお似合いだと気づきました」
「あ、それ私も思った!」
「私もー」
そんな隊員達の言葉は二人の耳には届いていない。
「あ、あのさ」
「……なに」
「そろそろ、どいてくれないか?」
リエは顔をさらに真っ赤にさせて、上体を起こした。
「う、あ」
「……?」
「いやぁぁぁぁぁぁ!!」
その叫びはそのフロアに響き渡った……。
夜 第十二部隊宿舎
「「ただいまー!」」
「今、帰ったぞー」
しっかりと酔って帰ってきた三人は食堂の異様な空気に気が付いた。
「なんだ?この空気……」
事情の知らない隊員達は疑問に思っていた。
「そっちに行って……」
「無理……」
ギンリュウとリエの席が隣だった、もちろん、これもミリア達の作戦だが……。
「まぁ、少しは仲が良くなったのか?」
「だろうな」
こうして、第十二部隊の休暇一日目の夜がふけていく。
なんだかラブコメみたいな話になってしまいました。次からは本筋に入ります。