午前3時の、宅配便
ご覧いただきありがとうございます。
蒸し暑い夏の夜にぴったりな、短いサスペンスです。
最後までお楽しみいただければ幸いです。
蒸し暑い熱帯夜の午前3時、古びたマンションのドアが激しくノックされた。
「宅配便です」
不気味なダミ声にインターホン越しでのぞくと、汗だくの配達員が真っ赤な保冷箱を抱えている。差出人は自分自身。恐怖で身をすくませながらドアを開けると、彼は箱を押し付け、不敵に笑って暗闇へ消えた。
冷気と生臭さが漂う箱を恐る恐る開ける。中には敷き詰められたドライアイスと、真っ赤に熟したスイカがひとつ。そこにはメモが添えられていた。
「去年の夏、お前が川に沈めたアレ。冷えてるぞ」
心臓が跳ね上がる。確かに1年前、自分は友人と揉め合い、事故で溺死させた彼を川へ沈めたのだ。動悸を抑えきれずナイフを手に取り、確かめるようにスイカへ刃を突き立てた。
バキッ
甲高い音とともに割れたスイカの空洞には、冷え切った人間の首——ではなく、液晶画面が発光する古いスマートフォンが入っていた。画面にはタイマー。カウントダウンが「00:00」を指した瞬間、着信音が鳴り響く。
震える手で通話ボタンを押すと、受話器から聞こえたのは去年の夏に死んだはずの友人の声だった。
「ひどい顔だな。ずっと監視カメラで見せてもらってたよ」
背後の押し入れからガタリと音がした。驚いて振り向くと、そこには冷房の風になびく風鈴と、見知らぬ男が立っていた。配達員だ。彼は制服を脱ぎ捨て、不気味に微笑む。
「依頼完了だ。——警察を呼ぶ手間が省けたよ」
友人は死んでいなかった。あの日、川から生還した彼は姿を消し、1年かけて自分を自白へ追い込む計画を企てていたのだ。部屋に仕掛けられたカメラが、今しがたの取り乱す姿と「隠蔽の証拠」を完璧に記録していた。
熱帯夜の部屋に、遠くから近づくサイレンの音が響き渡った。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました。
少しでも背筋が凍るような冷涼感をお届けできていたら嬉しく思います。
蒸し暑い夜はまだ続きますが、どうぞお体に気をつけて、涼しい夜をお過ごしください




