勇者転生を陰から支えます!〜新人転生管理局員は隠れて勇者を守ってる!〜
今日も魂が沢山現れる。
毎日の仕事で疲れるが、これは意義のある仕事だ。
「あなたはこちらにどうぞー。はい、次の方もこちらへ」
事務的に魂を誘導しながら、淡々と業務を進める。
今日は確か、私にとって一番大きい仕事――勇者の転生があるはずだ。
担当表を見たときから、ずっとそわそわしている。
「……緊張するな」
書類の文字がいつもより濃く見える。
ミスしたら絶対に先輩に報告されるやつだ。
そんな中、勇者候補の魂がふわっと現れた。
「ちーっす」
……なんだこいつ。
軽い。軽すぎる。
初対面のはずなのに、妙に馴れ馴れしい。
思わず書類を二度見する。
神様の判子はしっかり押されている。
本当に勇者で間違いないらしい。
「でも神様がいいって言ってたしな……」
「お名前は?」
「あ、オレ? カイっす」
「……そうなんですね」
語尾が少しだけ硬くなる。
扱いづらい予感しかしない。
よりによって、今日の大仕事でこれか。
「あなたは今回、勇者に選ばれました。
選ばれしものの力を使って、民を救ってくださいね」
「じゃ、いってきまーす。来世もできれば勇者でー」
軽い。とにかく軽い。
でも送り出すしかない。
……少し様子をみよう。
後で「ちゃんと見てました?」って聞かれたら困るし。
最初はやはりみんな浮かれるんだな。
平原で魔法をぶっぱなしている。
「ありゃりゃ……強い魔物がわらわらと集まってきたぞ〜」
カイは頑張っている。
魔法も使ってー、体術も使ってー、走って逃げてー……
……って、あれ?
逃げてる?
勇者の力なら、この辺の魔物なんてことないはずなのに。
どんどん囲まれてるけど大丈夫か?
魔物の影が増えていく。輪が狭まるたびに、勇者の足取りが乱れる。
「やばいやばい、もう死んじゃうよ」
本当に死ぬ。
このままじゃ責務どころか、初日で終了だ。
もしこれ死んだら……
絶対に後で呼び出される。
「なんで見てたのに助けなかったの?」って言われる未来が見える。
……仕方ない。私が行くか。
ローブを羽織り、転移陣に足を踏み入れる。
光が跳ねて視界が反転し、次の瞬間には平原の真ん中。
魔物たちが勇者を囲み、牙をむき、地面を爪で削っている。
勇者は必死に魔法を撃っているが、火花が散るだけで威力が足りない。
「――散れ」
空気が一瞬だけ静まり返る。
その静寂を破るように、白い閃光が地面を走り抜け、魔物の群れをまとめて薙ぎ払った。
爆風が砂を巻き上げ、平原に白い煙が広がる。
魔物たちは声も出せずに吹き飛び、地面に転がった。
勇者はぽかんと口を開けたまま固まっている。
目が合った瞬間、完全に「え?」の顔だ。
私はその横に歩み寄り、耳元で小さく囁く。
「あんまりふざけてると死ぬよ」
勇者はビクッと肩を跳ねさせた。
ローブの裾を揺らしながら、そのまま颯爽と去る。
平原の風が後ろから吹き抜けていく。
危なかった。
本当に危なかった。
あれ死んでたら、絶対に後で怒られてた。
この勇者、大丈夫かな。
転生管理局は今日も忙しい




