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4  後悔

よろしくお願いします

毎日王子妃教育に通うのが嫌になったカリナは両親に相談して暫く眠りに就く事にした。病気になったと思ってもらえば婚約が流れると思ったのだ。

いつも待ちぼうけのお茶会、それなのに婚約を解消してくれない王家、鉱石にのめり込んでいる婚約者、唯の石に負けた気がした。石のくせに婚約者を奪うなんて許せない。王子のことを好きだったわけではないが、何度もすっぽかされたお茶会で一人でいる状態に心は折れた。精一杯綺麗にしていってるのに与えられるのは哀れむような棘のある視線ばかり。それが何回も何十回も繰り返された。屈辱だった。


おまけに浮気の噂だ。両親に調べて貰ったら金鉱山を発見した子爵家の令嬢が勝手に噂を流しているらしい。潰れてしまえば良い。

私の八年を返してよ。プライドが、がたおちになった。プレッシャーに弱い婚約者なんていらない。

こっちから頼んだ婚約じゃ無いのに息子の躾もせず、何故か婚約に固執する王家。もう嫌!!



眠りに落ちた先で出会った香里奈という異世界の女の子。黒い髪に黒い瞳で、神秘的なのにお姫様だわと感激してくださったの。

その上私の為に怒ってくださった。

それだけでもういいかなと思ったけどこっちの世界で何やらやってくれるみたい。


家族愛に飢えてるって言ってたからうちの両親の愛情を少し分けて差し上げるわ。ちょっとだけですわよ。私も向こうの世界に行って香里奈ちゃんの為に頑張らなくては。では皆様暫くの間ですがご機嫌よう。





☆☆☆☆☆



アレクサンドルは執務室の王太子に会いに行った。

「兄上、人払いを」

「なんだ?お前達外してくれ」執務室の事務官が素早く退出した。

「防音の魔術を更に掛けました。俺は王族を離れようと思います。いつも兄上と比べて自分は劣ると卑下しておりました。スペアと自覚していたのにです。その為に何か一つでもお役に立つ事が無いかと鉱石の研究に熱中してしまい、婚約者とのお茶会も忘れる程の失態を数え切れないくらい犯しました。彼女を酷く傷つけていた事に漸く思い至りました。花を持ってお侘びに伺ったのですが当然の事、会ってもらえませんでした。これから陛下の所へ行き婚約をこちらの有責で破棄してもらうつもりでいます」


「漸く気が付いたのか。まさか俺に劣等感を抱いていたとはな。あちらから何度も婚約解消の願いが届いていた。もうお前の婚約は破棄されている。令嬢は寝付かれてしまったらしい。

莫大な慰謝料も払ってある、金額ではないが。そんなに鉱石が好きだったのか、可愛い子だったじゃないか」


「俺は弱く身勝手な男です。王家から無理やり頼んだくせに蔑ろにしたのですから。お菓子を食べると幸せそうな顔をしていたのが可愛いと思っていたのに忘れるなんて、人として最悪です。生きている価値もないと思いました。だから籍を抜けて旅に出ようと思います」


「お前はまだスペアのままだ。王族を抜けることは次期国王として許さない。自分だけ楽になろうと思うな。民のために働け。建物も道路も国民の役に立っている」

「兄上、罪深い俺は生きていてもいいのでしょうか?」

「いつか遠くからあの子が幸せに笑っているのを見るのがお前の役目だと思う。それにどうして俺と比べて僻むかな、人は皆違って当然だろう。まあスペアと領主補助の勉強は大変だったかも知れないな。学院に入ったら領主補助の勉強は止まっただろう。あの時にはもう婚約は破棄されていた。気がつけよ。それにあの子は領主の勉強と王子妃教育も平気な顔でやっていた」

「そうだったのですか。俺は自分の事しか見えていませんでした。情けないです。余裕が無くなって周りが見えていませんでした。苦しかったのは自分ではなく彼女だったのですね。罪を自覚して生きて行きます」

「お前頭が固いからな、思い詰める前に俺のところへ来い、良いな」

「そうします、ありがとうございました」

「執務も手伝ってくれ、忙しくて仕方がないんだ」

「はい、わかりました。彼女には手紙を書きます。何年か先にでも読んでもらえたら良いのですが。燃やされても文句は言えません。これから陛下の所へ行って罪を告白して謝って来ます」



☆☆☆☆☆



「陛下今いいでしょうか?」

「なんだ、早く言え」

「この度の婚約破棄の件、申し訳ありませんでした。私の不徳の致すところでございます。シュトレイン侯爵令嬢にはとんでもない傷を負わせてしまいました。罪を背負い一生兄上を支えて生きて行く覚悟にございます」

「婚約はお前には荷が重かったのか、情けない。令嬢の状態は聞いたな、せめて鉱石で王家の役に立て。だが対外的にお前には罰を与えなければならない、分かるな」

「分かっております。なんなりとお受けします」

「離宮で謹慎を命じる。そこで執務を手伝うように。王太子には話したのか?」

「はい、王族を抜ける覚悟でしたが、これからは執務も手伝うようにと言われました」

「そうか、もう行って良い」


頭の固い所は自分に似たのかと苦い思いの国王だった。国の為に魔術師の家系から遺伝子を繫いでおきたかった。次男にも魔術師の才能はあると引退した王宮魔術師から聞いていた為に、より強い魔術師に拘ってしまった。

期待に負けてしまったのだろう。シュトレイン侯爵令嬢にも酷い事をしてしまったが、とても許されるとは思っていなかった。

第二王子への処分が甘いと批判されるのは覚悟の上だ。直接は言わないだろうが、圧力は掛かるだろう。

他の貴族が次の妃の座を狙ってくるだろうが謹慎ということにしなければ示しがつかない。一生独身を通させるか、いつの日にか外国への駒として使うか王は考えることにした。




シュトレイン王宮魔術師は退団したと聞いた。令嬢への仕打ちに何度も抗議をして来た。そのたびに誤魔化すように継続を望んだのだから、恨まれて当然の事をしたと思っている。自分だって怒るだろう。令嬢は十三歳か、どうか幸せになってくれと祈るばかりだ。何かあれば助けよう、総力をあげて。


この時国王はシュトレイン侯爵が国から出ていった事を知らなかった。


二年後シュトレイン家が画期的な発明で莫大な利益を得て隣国を更に豊かにする事を国王は知る事になる。



☆☆☆☆☆


幸いな事に令嬢に神が加護を与えたと誰も永遠に気づく事はなかった。










すみません、エラーが出て次作の保存が出来なくなりました。もう一話投稿します。

よろしくお願いします。

誤字報告ありがとうございました。訂正しました。

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