表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/13

2 婚約の申し込み

よろしくお願いします

 挨拶した記憶も無かった第二王子から婚約の申し込みが来たのだ。シュトレイン侯爵家の魔力狙いの縁談だった。カリナにはまだ魔力は出ていない。

父侯爵は王宮魔術師のトップの役職に就いていた。侯爵家はカリナが一人娘であることと魔力が分かっていないことを理由に断りを入れた。


王家はしつこかった。カリナに魔力が出なくとも構わないと食い下がってきたのだ。悔しがる両親にカリナは

「おことわりできなさそうですね。おうじさまがよいかたであればこんやくしゃになってもかまいません。ですがせいかくがわるかったらそれなりにたいしょをすればよいのではありませんか?おとうさまはいだいなまじゅつしさまですし、わたしが大きくなるまでになにかほうほうがあるはずですわ」


「相変わらず五歳とは思えないほどしっかりしすぎていて怖いくらいだ。あまり賢いところを見せてはいけないよ。相手は王族といえ普通の子供だ。

取り敢えず顔合わせをお願いしよう。様子を見てカリナに相応しくないと思ったら対策を考えるとしようか。隣国へ移住するという手もある」


すっかり表情の明るくなったカリナと両親は登城に向けて話を詰めていった。


第二王子は絵本から飛び出してきた金髪碧眼のザ・王子様だった。

物腰は丁寧、小さな子供らしく表情も豊かだった。弟と妹がいるので年下の子供の扱いも慣れているのだろう。

「私はアレクサンドル・フォン・シュトラウスだ。この国の第二王子だ。今日は来てくれてありがとう」

「カリナ・シュトレインともうします。どうぞよろしくおねがいします」

スカートを摘んで挨拶した。

「お茶を飲むと良い。お菓子も用意させた。カリナ嬢はいつも何をして過ごしているのだ?」

「しゅくじょになるためのおべんきょうをしております。このおかしはおうきゅうのおちゃかいででていたものでございますか?」

「そうだ。王宮のシェフは腕が良いから最高のものだと思う。遠慮しないで食べると良いよ」

「ではえんりょなくいただきます。こうしゃくけのおかしもとてもおいしいですがこれはかくべつですわね」



アレクサンドル王子は目の前でお菓子を頬張る小さな女の子が可愛く思えてきた。貴族の娘はおしなべて綺麗だ。子供でも親から言いつけられているのか媚を売ってくる者までいる。そのためかなり警戒をして顔合わせに臨んでいた。


政略のために婚姻をするのは理解していたが、出来れば性格の良い女の子と人生を共にしたいと考えていた。陛下はこの子の家の魔力が欲しいようだ。父親が王宮魔術師で侯爵家。婚約者として丁度いいと考えたのは分かる。

王子として魔力はある方だと思う。訓練中なのでもっと伸びる可能性がある。成人するまでにどれだけ魔力が伸ばせるか自分でも楽しみにしている。

しかし他にも面白そうなものが沢山あった。

剣術や鉱石の研究に外国語の勉強、国内外の地理の勉強。色々やりたい事があって婚約者などいらないというのが本音だった。

七歳と五歳なんて早すぎないかと思っていた。しかも相手はお菓子の好きなちびっ子だぞ。


お菓子を食べている様子が可愛いなんて予想外だった。油断していたら

「でんかのごしゅみはなんですか?」

と聞かれた。

「僕が好きなのは剣術や鉱石の研究だよ」

と思わず本音で答えていた。

「けんをつかわれるのはかっこいいですね。いしをけんきゅうされるのですか?どこがたのしいですか?いろですか?かたちですか?」

「成分かな」

「むつかしそうですね。ほかにはありますか?」

「地図も好きかな。色々な事が分かるだろ」

「でんかはけんもおべんきょうもおすきなんですね」

「兄上の役に立ちたいんだ。今度はカリナ嬢の屋敷に行っていいかな」

「もちろんでございます。きょうはごちそうさまでした」



屋敷に帰ったカリナは玄関で迎えてくれた母の胸に飛び込んだ。

「おかあさまただいまかえりました。とてもつかれました。はじめてのかたとおはなしするのはきんちょうしますね」

「お帰りなさい、お疲れ様。さあお部屋に行きましょう。少しお昼寝なさい。夕食になったら起こしてあげるからゆっくり寝てて良いわ」


「五歳の幼児に親の付き添いなしで来いなんて王家も無茶なことを言われるわ。旦那様に姿が隠れる術で側にいていただいたから安心できたけど」

と呟きながら付き添っていった侍女と護衛達に

「お疲れ様、あの子が無事に帰ってきて嬉しいわ」

と言った。

「勿論でございます。命に替えましてもお守りいたします」

「全く頭が痛いわ、さっさと国を出ようかしら。お茶を私の部屋に持ってきてちょうだい」

「畏まりました」




夕食を三人で食べた後サロンでお茶を飲みながら今日の報告会が行われた。

カリナの王子の印象はそれほど悪いものでは無かった。

「おとうさまがそばにいてくださったからあんしんだったわ、ありがとうございます。だいすき」

「当然じゃないか、幼児を一人で顔合わせに寄越せとか常識はずれだ」

「おとうさま、だっこ」

「おいで、カリナの為なら何でもしてあげるよ。お父様の魔力を感じられるとはカリナは相当魔力が強い。王家には隠し通さなければ。でどう思った?」

「やさしいおうじさまかな。べんきょうもおすきなようだし」

「平凡だがな」

「おとうさまみたいなかっこいい人はいないとおもうわ」

「良かったですわね、世の中の父親の言ってもらいたいナンバーワンの言葉が聞けて」

「私は幸せ者だ。愛する二人がいてくれれば何も言うことはない。カリナを泣かす奴は何をしても潰す」

「本当に出来るから怖いですわ、貴方。でもそのお考え好きですわ」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ